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人生日々挑戦
巨人・山口鉄也投手は大恩を忘れない
2013年11月28日
テーマ:人生
人のために何かをするという観点で見た場合、最近のニュースの中心にあるのは、人を騙すということだ。
去る10月22日の阪急阪神ホテルズの食品偽装発覚以降、日本全国各地のホテル、デパート、レストランなどで、続々と明らかにされている食品偽装。
11月7日に発覚したネットの楽天市場における日本一セールに絡む価格偽装。
11月12日に発覚のR北海道における安全安心対策に係る偽装。JR北海道の一連の不祥事をめぐって行われた国土交通省による9月下旬の特別保安監査の直前に、函館管理室管内などでレール幅などの検査データが意図的に改ざんされていた。
偽装とは、事実とは異なるのに、あたかもそれが本当であるかのように偽ることをいう。例えば、安いブラックタイガーの天ぷらを高い車海老の天ぷらと表示し、高い金を取る。偽装には、人を騙すという本質がある。
食品偽装、価格偽装、検査データ改ざんなど、これらは、人に対するマイナスの行為だ。こうしたマイナスの行為が報道され、見聞きするたびに、不愉快になり、精神衛生上良くない。
人に対するマイナスの行為ばかりが連日ニュースとして流れている中で、人に対するプラスの行為がニュースになると、ホッとする。
11月12日、スポーツ報知の配信ニュースが飛び込んできた。「【巨人】山口が育成・柴田を全面支援!内海組グアム自主トレ参加費用を負担」とのタイトルがついている。育成・柴田を全面支援って、どういうこと?
以下、この配信ニュースを読み解いていく。
内海組グアム自主トレって、何? ネットで調べた。
そうしたら、今年の1月20日付けのニッカンスポーツの配信ニュースがヒットし、次のように語っている。
巨人のエース内海哲也投手(30)らが20日、グアム自主トレを打ち上げた。山口、小野、沢村、小山、宮国、オリックス山田と6日から約2週間、南国で肉体強化を図ってきた。最終日はあいにくの雨模様だったが、最後のメニューのキャッチボールを終えると「終わった〜!」と歓喜の声が挙がった。内海は「最高の練習ができて、最高の体作りができた」と満足していた。
巨人のエース内海哲也投手は、正月が明けると、若手の有望株数人とで、南国グアムで自主トレを行い、肉体強化を図っていることが分かる。
メンバーの中には、最優秀中継ぎ投手である巨人の山口鉄也投手がいることも分かる。
今回のスポーツ報知の配信ニュースは、来年の正月明けから始まる内海組グアム自主トレに、育成・柴田選手も参加し、その参加費用を山口鉄也投手が負担してあげて全面支援するということのようだ。
育成・柴田選手の経歴を調べたら、次のとおりである。
柴田章吾(しばた・しょうご) 三重県生まれ。24歳。愛知県の愛工大名電高校では3年時に夏の甲子園に出場。明大では1年春のリーグ戦からベンチ入り。2011年の育成ドラフト3位で巨人入団。今季は、8月27日のイースタン・ヤクルト戦で初勝利。イースタンで中継ぎで27試合登板して1勝0敗。175センチ、73キロ。左投左打。
育成選手とは、2005年に初めて導入された育成選手ドラフトにより、プロ野球12球団が支配下選手枠70人以外に獲得できる選手である。育成選手のままでは、1軍戦に出場できないが、2軍戦やオープン戦には出られる。最低年俸は、240万円。
シーズン中でも、7月末までは、支配下選手登録も可能。支配下選手登録がなされれば、1軍戦に出場できる。
これまで、育成選手出身でも大成した選手はいる。その代表が巨人の山口鉄也投手である。山口投手は、育成選手ドラフトが初めて導入された2005年にその指名を得て巨人に育成選手として入団した。
山口投手の背番号は、102からスタートし、99を経て、今は47である。そして、肝心の年俸は、240万円からスタートし、昨シーズン終了後の契約更改では、100倍の2億4千万円となった。
今年の契約更改では、山口投手は、巨人のセリーグ2連覇達成と自身3度目の最優秀中継ぎ投手のタイトル獲得があるから、更にアップするものとみられる。
スポーツ報知の配信ニュースが伝えているのは、育成選手出身で、今や、日本を代表する中継ぎ投手の山口投手が育成選手の後輩である柴田投手の内海組グアム自主トレへの参加費用を負担してあげるということだ。
年俸がたかだか240万円の柴田投手にとっては、プロ野球選手として食べていくだけで精一杯であり、内海組グアム自主トレへの参加費用など捻出できないだろう。
内海組グアム自主トレへ柴田投手を誘ったのは、自主トレのリーダーである内海投手だった。内海投手は、「同じ左腕だし、頑張っている子だと聞いていたので一緒にやろうと思った」と手を差し伸べたという。そうした内海投手は、偉い。さすが巨人のエースだけあり、懐が深い。
そして、柴田投手の参加費用を負担してあげる山口投手も偉い。さすが、育成選手出身から這い上がり、最優秀中継ぎ投手に上り詰めた苦労人だけあり、心根が優しい。
内海投手も山口投手も、後輩の若き柴田投手のためにチャンスを作ってやるという人に対するプラスの行為を行っている。こういうニュースを見聞きすると、いいなあと思う。
山口投手は、柴田投手への支援について語る。
「同じ育成スタートで左投手。気持ちや境遇がよく分かるんです。彼が入団した時に目標の投手が僕だと言ってくれていた。できるなら力になりたいと思いました」
山口投手は、更に続ける。
「僕も工藤さんに声をかけてもらって、ここまでやってこれましたから」
山口投手が大恩ある人と語る工藤さんとは、工藤公康さんである。
工藤公康投手は、西武→ダイエー→巨人→横浜→西武と渡り歩き、通算29年のプロ野球人生で、224勝142敗3セーブ10ホールドの成績を挙げ、一時代を築いた大投手である。
最優秀防御率4回、最高勝率3回、最多奪三振2回のタイトルを獲得している。
工藤投手が巨人に在籍したのは、2000年から2006年までの7シーズンだ。山口投手が巨人に入団したのは、2005年のオフで、山口投手と工藤投手が巨人に共に在籍したシーズンは、2006年のたった1年である。
その2006年のオフに、まだ育成選手1年目の山口投手は、大投手の工藤投手からアメリカのアリゾナでの自主トレに誘われた。しかし、山口投手には、お金がない。工藤投手は、山口投手の自主トレ参加費用の全額を負担して、アリゾナに連れて行った。そして、山口投手に何から何まで指導し、鍛えた。
アメリカアリゾナでの自主トレが終わり、いよいよ2007年シーズンがスタートする時、山口投手は当然にして巨人に所属していたが、工藤投手は横浜に移籍していた。
その2007年は、山口投手にとって、プロ野球人生のターニングポイントとなった年となる。
山口投手は、2軍で5試合に登板して無失点と好投を続け、4月23日に支配下選手の登録をされた。
4月29日に1軍での初登板をし、1回無失点に抑える。巨人における育成選手枠での入団選手として初の1軍公式戦出場選手となった。
5月9日の阪神戦では4番手として登板し、初勝利を挙げ、育成枠出身選手で初の勝利投手になった。
山口投手が今日あるのは、すべからく工藤投手のおかげである。
山口鉄也投手の偉いところは、工藤公康投手から受けた大恩を決して忘れることなく、それに対するお返しをする点である。山口鉄也投手は、今度、一緒に内海組グアム自主トレに参加する育成選手の柴田投手の参加費用を全額負担してあげ、自分と同じ夢を叶えてほしいと願っているのだ。
そして、人生っておもしろいと思うことがある。それは、山口鉄也投手の大恩人の工藤公康投手は、名古屋電気高校(現愛工大名電高校)の卒業であり、山口鉄也投手が目をかける柴田章吾投手もまた愛工大名電高校の卒業生であることだ。
山口鉄也投手の美談を一番喜んでいるのは、きっと工藤公康さんだろう。
結びにもう一つ書いておくことがある。それは、柴田章吾投手は、中学校3年生の頃に全身性炎症性疾患の難病「ベーチェット病」を発症し、闘病を続けながらのプロ野球生活であることだ。幸い、現在は練習に支障は出ていないという。
柴田章吾投手よ、困難を克服し、先輩方の支援に感謝しながら、夢を叶えよ。頑張れ、柴田投手!
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