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人生日々挑戦
「B級ご当地グルメ・浪江焼きそばの快挙」
2013年11月13日
テーマ:人生
漂泊の詩人、石川啄木がふるさとを詠んだ三行詩がある。
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸われし
十五の心
「不来方」は、「こずかた」と読む。岩手県の県庁所在地・盛岡市。その盛岡という都市名で呼ばれる前の呼称が不来方である。
盛岡中学の生徒である十五歳の啄木は、学校の近くにある盛岡城趾の草原で仰向けに寝ころんだ。桜の樹々越しには、真っ青な天が広がり、白雲がたなびいている。
26年間という短い生涯の啄木がこの歌を詠んだのは、成人後で流浪の苦しい状況の時だろう。「十五の心」の頃は良かったなあ、と懐かしみ、ふるさとを思っている。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの」と歌ったのは、室生犀星である。しかし、ふるさとは、遠きにありても、近きにありても、否、ふるさとそのものにありても思うものである。
ふるさと思い涙ぐむのは、遠きにありてだろうが、涙ぐんでも涙ぐまなくても、人は、常にふるさとと共にある。ふるさととは、そういうものだ。
石川啄木は、盛岡で生活していた時も、青森県や北海道を流浪した時も、東京で食い詰めた時も、「不来方のお城」がある辺り一帯のふるさとをいつも思った。
しかし、理不尽にも、全町民がふるさとを追われた町がいくつもある。
福島県双葉郡浪江町。太平洋に面する福島県の浜通りにある。元々、海と山を有し、「海と緑にふれあう」美しい町である。
それが、2011年3月11日に発生の東日本大震災とそれに伴う福島原子力発電所の原発事故により、今は、人っ子一人もいない。
21,000人の全町民がふるさとを追われ、今も全国に避難している。
東日本大震災から2年8か月が経過した今でも、浪江町には自由に立ち入ることはできない。
地震により倒壊したり、痛んだ建物は、そのままの状態で放置されたままだ。
太平洋沿岸の浪江町の状況は、東日本大震災発生の2011年3月11日から時が止まったままなのだ。
東日本大震災後、浪江町の仮役場が福島県内の二本松市に設置され、多くの住民が移動し、避難した状態が今に続いている。
Google マップの機能を活用した「浪江町ストリートビュー」により、浪江町の現状を360°のパノラマ写真で見ることができる。その「浪江町ストリートビュー」は、次の記述で締めくくられている。
「私たち大人は、先人たちから受け継いできたふるさとを子どもたちへ渡していかなければならない。私たちは、約束する。原子力災害からの復興には、長い年月と多くの人々の協力が必要だが、私たちは、ふるさとを取り戻すことを決して諦めない」
しかし、ふるさとを取り戻すことができるのはいつ頃になるのか、見通しは全く立っていない。
浪江町のように全町民がふるさとを追われた場合、悲しみは果てしなく大きい。ふるさとには、帰って住むことができず、待ってくれる人もいないのだ。そして、ふるさとにいつ帰って住めるようになるのか、全く分から
ない。
去る11月10日、愛知県豊川市で開かれた全国B級ご当地グルメによるまちおこしの祭典、第8回「B-1グランプリ」は、いよいよ優秀作品ベストスリー発表の瞬間を迎えた。
朝日新聞デジタルの配信ニュースによれば、今回は全国から過去最多の64団体が出展し、2日間で過去2番目の58万1千人(主催者発表)が訪れた。順位は、来場者が使った後の割り箸を気に入った団体の投票箱に入れ、箱の重さを比べて決める。
ベストスリーの発表が始まった。
銅メダルのブロンズグランプリは、千葉県勝浦市は熱血!!勝浦タンタンメン船団の勝浦タンタンメン。
銀メダルのシルバーグランプリは、青森県十和田市は十和田バラ焼きゼミナールの十和田バラ焼き。
そして、いよいよ栄えある金メダルの発表だ。会場に詰めかけた25万人を越える来場者が固唾を呑んだ。
「ゴールドグランプリの発表です」 司会者が一瞬の間をおく。「ゴールドグランプリは」 どこなの、早くしゃべろ!
金メダルのゴールドグランプリは、福島県双葉郡浪江町は浪江焼麺太国(なみえやきそばたいこく)の「なみえ焼そば」。
その瞬間、どよめきが起き、万雷の拍手が続く。浪江町の浪江焼麺太国の面々は、万歳をしながら、泣きじゃくっている。
無理もない。東日本大震災に伴う福島原子力発電所の原発事故により、浪江町の全町民がふるさとを追われてからちょうど2年8か月目の日だ。
悲しみと苦しみの日々が続いてきた。しかし、そんな中にあっても、浪江町の人々は、未来に明るい希望があることを信じ、頑張ってきた。全国の人々からの温かい応援を受けながら、ふるさとを取戻すことは決して諦めない。
そんな浪江町の人々の頑張りに、神様は、ご褒美を下された。栄えある金メダルのゴールドグランプリだ。しかも、日本全国での一等賞だ。何のものでも、全国制覇はなかなかできるものではない。
ふるさとを離れた人にとっては、ふるさとは、自分が帰れるところである。自分のスタート地点である「不来方のお城」には、いつでも帰れる。帰れば、誰かしらが迎えてくれる。ふるさととは、そういうものだ。
ふるさとを離れずに生活を続けている人も、遠く離れて暮らす人も、ふるさとを思う気持ちは同じだし、ふるさとの八百万の神様たちは、両者を分け隔てなく、見守っていて下さる。ふるさととは、そういうものだ。
本来、ふるさととは、そういうものであるはずなのに、残念ながら、浪江町の人々は、ふるさとを追われ、帰って住むことができず、待ってくれる人もいない。そして、ふるさとにいつ帰って住めるようになるのか、全く見通しが立っていない。
しかし、ふるさとの八百万の神様たちは、彼らを束ねる神様にお願いし、いつの日にかきっと浪江町の人々のふるさとへの帰還を実現してくれる。
大事なのは、浪江町の人々が心が折れることなく、ふるさとへの帰還を意欲し続けることだ。そうした浪江町の人々の絆をしっかりとさせるもの、それは、浪江焼きそばであるような気がする。
悲しい時、苦しい時、人間は、何かを食せば、持ちこたえられる。浪江町の人々は、浪江焼きそばを食し、浪江焼きそばに励まされることだろう。
たかが焼きそば、されど焼きそばである。全国B級ご当地グルメによるまちおこしの祭典、第8回「B-1グランプリ」で全国制覇を成し遂げた浪江焼きそば。
浪江焼きそばは、東日本大震災からの復興の旗手を務め、「ふるさとを取り戻すことを決して諦めない」浪江町の人々を再びふるさとへ導く。
頑張れ、浪江焼きそば! そして、頑張れ、浪江町!
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