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「ありがとう、原くん、そして、がんばれ、原くん」　

2013年11月08日 ナビトモブログ記事
テーマ：人生

　プロ野球を観ていると、弱いチームよりは強いチームの方に関心がいく。しかし、強いチームがあまりにも強すぎると、プロ野球はおもしろくない。

　V9、つまり読売ジャイアンツが1965年（昭和40年）から1973年（ 昭和48年）まで、9年連続して日本一になった頃は、巨人が強すぎて、おもしろくなかった。その当時は、巨人というチームよりは、長嶋選手や王選手といった個性が強い名選手を応援したものだ。

　森監督時代の西武ライオンズも強かった。森監督在任中の1986年（ 昭和61年）から1994年（平成6年）までの9年で8度のリーグ優勝、6度の日本一を達成している。
　日本シリーズで9年間のうち6度もパリーグが優勝というのは、いかに人気のセ、実力のパでもおもしろくないものだ。

　だから、プロ野球の発展、隆盛の観点からは、特定のチームがあまりにも強すぎるということがない方がいい。

　近年のプロ野球はどうか。日本シリーズでは、1990年（ 平成2年）から1992年（平成4年）までの西武の3連覇後、同一球団の連覇はない。そして、1993年（平成5年）以降昨シーズンまでの20年間で、セリーグのチームが11回、パリーグのチームが9回それぞれ優勝と、拮抗している。

　この方が観る側からすればおもしろいし、ひいきのチームの連覇を願い、応援に力が入るというものだ。


　今年の日本シリーズは、11月2日に巨人が楽天に対して3勝3敗と逆王手をかけたのを受け、翌11月3日、最終決戦が楽天の本拠地・Ｋスタ宮城で行われた。

　巨人が勝てば、巨人としては、あの巨人全盛期のV9以来40年ぶりの日本シリーズ連覇の達成であり、同時に、1992年（平成4年）までの西武の3連覇後、21年ぶりの連覇となる。

　昨年までで、巨人の原監督は、5回のセリーグ優勝を果し、うち3回は日本一に輝いているが、なんとしても、栄光の連覇を成し遂げたい。

　片や、楽天が勝てば、創設9年目にして日本シリーズ初出場で初優勝である。まあ、通常は、日本シリーズ初出場が叶い、相手が王者巨人とくれば、何が何でも日本一とは思わないのではなかろうか。

　かくして、普通は、巨人としては40年ぶりの、12球団全体としては21年ぶりの連覇達成と相成るはずだった。

　しかし、楽天の星野監督は、中日で2回、阪神で1回のセリーグ優勝を果しているものの、日本シリーズでは敗れ、日本一にはなっていない。だから、なんとしても、星野監督は、初の日本一になりたいだろうし、星野監督を日本一にならせてあげたい。これが人情というものだ。

　これで、日本一にかける思いからすれば、巨人の原監督と楽天の星野監督は、互角だ。

　しかし、このほかに、最重要ポイントがある。

　東日本大震災の発生から2年半以上が経過した今、被災地をはじめとする東北各県民は、こぞって東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一を渇望している。東日本大震災からの復興に弾みをつけるためにも、楽天の日本一がほしい。
　そして、それゆえに、楽天としても、何が何でも日本一を達成したい。

　この最重要ポイントによって、勝負の決着がついた。

　結果は、東北楽天ゴールデンイーグルスが3-0で巨人を下し、初の日本一に輝いた。星野監督にとっては、選手時代、監督時代を通じて初めての日本一の達成だ。


　私の書斎コーナーには、一つのパネルがある。
　表は、「ぼくは、スバルです」と書かれ、巨人の4番打者の原辰徳三塁手がバットを持ち、ユニフォーム姿でにっこりほほ笑んでいる。
　裏には、「がんばれ、原くん　来シーズンの活躍を祈って　原辰徳選手に 折り鶴を贈ろう! SUBARU」とある。
　もう何十年も前のスバル自動車のパネルである。

　勝負事に、たらればはない。しかし、あえて、たらればで考えてしまう。

　もし、巨人が勝っていれば、巨人としては40年ぶりの、12球団全体としては21年ぶりの連覇達成ということで、原監督は、球史に燦然と輝く栄誉に浴することができた。

　そして、王者巨人はやはり強かったと、誰しもが納得したであろう。人生とはこういうものだと思いもしたであろう。

　しかし、同時に、妙に悲しくもなったであろう。とりわけ、被災地の方々は。

　だから、私は、「ぼくは、スバルです」と書かれた原辰徳三塁手のパネルに語りかける。
　
　今回ばかりは、連覇達成をしてくれなくて、ありがとう。この次は、連覇達成を応援するよ。君なら、きっと連覇達成ができる。

　「ありがとう、原くん、そして、がんばれ、原くん」


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