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たゆたえど、沈まず
楽しい仲間 2
2012年07月09日
テーマ:テーマ無し
私の友人のKさんが勤務先の施設を退任するに際し、記念に残るものをと考え、彫刻を寄贈することにした。
その彫刻の作家も我々の友人である。
丁度彼が大きな個展を開いていたので、一同に集められた作品の中から「くつろぎ」と題する女性の胸像を選んだ。
庭の通路の角にその胸像は置かれることになった。
台座も友人のデザイナーが力を貸してくれた。
縦長の四角い大理石の角の上部を斜めにカットして三角の面をつくり、そこに「くつろぎ」と彫られた。
字はKさんが何枚もの紙に書いた「くつろぎ」という文字をデザイナーが一文字づつ分解し、大きさや角度を一文字づつ変えたりしながら組み合わせ、台座と作品の雰囲気にピッタリの、しかもまぎれもなくKさんの書いた文字である。
さすがプロである。
施設を訪れた人はアプローチの角で、この彫刻を見て施設にはいる。
この打ち合わせの時に、Kさんは、施設の運営を「忠怒のこころ」でやってきて、職員にもこの心を説き徹底するよう心がけてきたと言った。
そのことわざの字も意味もさっぱり分からなかったので彼に聞いたところ紙切れに「忠怒のこころ」と書いて説明をしてくれた。
デザイナーはこの紙切れをそっとポケットに忍ばせて、台座の側面にそのまま彫り込んだ。
除幕をするまで、Kさんも彫刻家もこれを知らなかった。
デザイナーの彼は言う
あの言葉の説明をしている時にKさんの施設に対する思いの全てがあった、全てが何気なく書いてくれた紙切れの文字に表現されていた、魂がこもった字だから、あれをあのまま彫り込んであの像は完璧だ。
良い友達、いい仲間を持つと時々お互いが思わぬ役に立つことがある。
社会の荒波の中を生き抜いてきて、その中で培われたもので一肌脱ぐ。
楽しい充実した思いで作りになる。
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