+++自分の好みだけで何でもかでも断る訳には行か
ない。そんな中で、取り敢えず二名を合格させた。
44.ロケット男
内の一人は、七十二の男である。苦労して私が探し
出したようなものだと云いたいが、本当は勝手に応募
して来て、随分遠慮がちにしおらしいメールを寄越し
たのである:お逢いしてくれるだけで好いからーーー。
こんなに謙虚でしおらしいのは貴重品種である。こ
の歳ならばメールの内容や表現力などどうでも良く、
先ず「ヤリ逃げ」の心配は無いだろうから、「年齢」
に敬意を表して百パーセント合格である。
更に、仮にバイアグラを使っても、女の「内部」ま
ではやって来れない安全な男だと、勝手に私は考え
た。頑張っても精々「軒下」程度に違いない。月20
万は了承しますとの事だし、引退した大企業の自称元
役員との事だから、品のある穏やかな老人かと善意に
推測した。
上物と判断した私は、マネージャ役の推薦状を添え
て早速女へ勧めた。女に異存は無く、パトロンクラブ
の上席待遇でメンバーに迎え入れる事にした。
後日ベッドでの男の実射訓練の様子を訊くと、女の
返事は私を充分満足させた:
「白髪のとても上品な人よ。奥さんを三年前に亡くし
たらしい。一緒にお風呂に入って体を洗ってくれた
わ。その後ベッドで何時間もずっと、私の体を上から
下まで撫ぜるばかりよ。アノ方(=アノ男、とは云わ
なかった)は、それだけで楽しそうにしているわ。プ
レゼントも買ってくれたしーーー」
当初の私の読みは的中し、彼は「軒下」だけしか使
わない。このパーフェクトに人畜無害な紳士振りに私
は大いに喜び、上席待遇にプラスして、デートの度に
女からチョコレート進呈というサービスプレミアムを
付けて、優待メンバーとして大切にすることにした。
芸術の発展の為に、私から言えば、女は最も優れた
安定収入源を確保したのである。
合格させたもう一名は、地方の中小企業の経営者ら
しい親爺で、歳は五十三。月に二度ほど定期的に出張
で来阪するMという男である。隠さず、本名らしい。
「貴女の希望する倍額を出そう」とメールして来た。
倍額とは、豪勢な! これは、大いに合格の雰囲気
である。しかしこの男は不埒にもというか、バレエ芸
術に対する冒涜というか、モーツアルトの品質に注文
を付けたのである:
「貴女はバレエをされているようなので、体形に問題
はないと思う。が、バストはせめてXXセンチ以上で
あってくれ、尻の位置も高い方がいい」
更に欲張って、「私は強い方なので、一晩に三回発
射させてくれないか」と、種子島のロケット並の威力
を誇示した。
(比呂よし)
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