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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(39) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(39)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/02 09:49:24

+++ますます素敵な言い方! 抱かれるのが、本当
に楽しみになるわ。わくわくして来ちゃった」

39.モジモジする

 「愛を作る」為のホテルは、新しい。 地下の駐車場
に車を入れエレベーターに移って、部屋まで歩いた。
通路は大理石に似せた美しい床で、白さが清潔な印象
を与えた。

 人気(ひとけ)の無い通路に、二人の靴音が忍びや
かに響いた。こういう事に慣れていない私は、何か落
ち着かず、部屋まで歩くのが遠い距離に感じる。
 しんとした雰囲気に気押されて、私は無言であっ
た。沈黙が辛くなり掛けて、そっと女の方を伺ったら
目が会って、女がニンマリと笑い返した。
 女の落ち着き振りを見て、自分が年下のような気が
した。

 部屋の前にたどり着いたとき、ほっとした。 部屋に
入って厚い扉を閉め切ると、もう一度ほっとした。二
度もほっとするのは、緊張しているせいに違いない。

 部屋は十帖程もあったから、もし白鳥が踊りたいと
言い出しても充分なスペースがある。真ん中に大きな
ダブルベッドが一つあり、掛け布団に淡いグリーンの
カバーがしてあった。入り口の扉は外界の物音を効率
よく遮断して、気がつくと辺りにひんやりした静寂が
あった。

 部屋の真ん中に突っ立って、二人でモジモジした。
差し当たり外にやることが無さそうな気がしたから
だ。人生は短いーーー、だのに人は直ぐ退屈してモジ
モジする。
 大急ぎで親しくなった関係だし、どんな風に女をリ
ードしたら良いのか戸惑った。 急にくだけた物言いを
するのも下品に思えたし、照れ隠しにわざと淡々とし
た態度を取るのも、折角の楽しい筈の時間がまるで業
務連絡になってしまう。「さあ脱ごうか?」と促す
のも、デリカシーに欠ける。
 男の品格が試されるのは、案外こんな時である。

 直立不動で向かい合いながら、私は照れ隠しに女の
顔を眺めてただ笑い、口が大きいのを再確認した。
 女に歩み寄りゆっくり両手を伸ばすと、女は無抵抗
に私の腕の中に抱き取られた。そのまま両の手を私の
背中にそっとはわせて来た。

 ためらい勝ちな女の優しい手は、暖かい親しみと積
極的な合意を私へ伝えた。緊張していた自分の気持ち
が穏やかに溶けて行く幸福を感じながら、女の体が見
た目より充実しているのを知った。衣服を通して体温
が伝わって来た時、若い女の匂いが鼻をくすぐった。
ちゃんとバイアグラを持参していて、良かったーーー。

(つづく)

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