+++テーブルの辺りに、怪しげな雰囲気が漂よって
いるだろ? たぶらかしの黒魔術なんだ」
「アハハーー、魔法使いってわけね。女は元々、たぶ
らかされてみたいと思っているものよ」
27.拍手は続く
女を好きになる積もりは無かったが、好きになって
もダメとぴしゃりと言われてみると、少し興の削がれ
る思いがした。仕返しに冷やかしてやった:
「パトロン募集は、大胆なメールだったね」
「あら、そうかしら。 芸術の仲間なら平均点よ」
「演劇で一緒に踊っている仲間は、みんなパトロンが
居るのかい?」
「自分の事は隠して本当の事は言わないけれど、皆同
じの筈よ。仕事のキャリアーウーマンで、同時にバレ
エやお芝居を両立させるのは不可能よ。公演旅行もあ
るんだしーーー。 ごく一部の大手劇団を除いて、中小
劇団の殆ど90%は無給なの」
「ヘエ、芸術は大変なんだねえ、話を聞くとーー。貴
女が属する劇団のトップスターなんかもそうなの
かな?」
「演出家の贔屓は大切よ。私の場合、そこまで行かな
いけれどーーー」
「贔屓は、ベッドも含めてーーー?」
「芸術を志す者の必要経費だわーーー」
「お金にならないのに、どうしてそんなにバレエを踊
りたいのかな?」
「大勢の人から見られて拍手と賞賛を貰うーーー、こ
の感激は他に代え難いわ。中毒になりそうーーー」
「セックス以上ーーー?」
「そうーー、気分が高揚して死にそうよ。セックスは
一時(いっとき)でしょ、でも拍手は劇が終わって
も、心の中で長く続くからーーー」
「なるほどーーー現実的な答えだね」
(つづく)
|