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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(17) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(17)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/03/10 10:44:56

+++カムチャッカからはるばる飛来した労苦に対
して、心から礼を述べ、白鳥の羽をベンチに休めさ
せた。

17/60.男冥利

 ベンチで少し話してから車に招じ入れ、おしゃべり
が出来るように意識してゆっくり車を走らせた。国産
だが高級車である。

 こんな時、車の性能を誇示するような運転をするの
はバカのやる事で、無論私はバカではないし若くもな
いから、軽はずみはやらない。相手は白鳥だし、振動
で首が折れては大変である。

 脳震盪を起してブレーキとアクセルをニ三度までは
踏み間違えても、めったに追突しないだけの車間距離
を開け、私は安全運転に徹した。車内のオーデイオだ
って、自分好みのひえつき節や何処ぞの山奥の木遣り
音頭ではなく、もっぱら品良くモーツアルトとチャイ
コフスキーへ、事前に入れ替えておいたのは当然の事。

 車の中で会話は滑らかに滑り出した。私は相手をリ
ラックスさせる黒魔術も使ったから、十年来の知己み
たいにたちまち女を打ち解けさせた。かってのトップ
セールスの話術を巧みに使って、女を笑わせた。

 こんな場合、女を喜ばせる話題の二つや三つを事前
に用意して作り暗記しておくのは、けものの求愛行動
と同じで男側のたしなみである。因みに、熱帯の鳥類
のオスをよく観察するならば、求愛活動の参考になる。

 くれぐれも注意しておきたいが、男が六十を過ぎ
て「(何の努力も払わずに)自分がもてる」などと、
間違っても勘違いしない事だ。「もてる」為には若い
時分の数倍の知恵の限りを尽くし、努力も欠かせな
い。だから若い内に何でも修練を積んでおくべきで、
六十過ぎの老後になってからこそ、男は真価が問わ
れるものだ。

 レストランは、車で二十分の所にあるゴルフ練習場
に併設された店であった。以前一度寄った事があり、
小奇麗で雰囲気が良かったのを覚えていた。

 着いた時駐車場は満杯に見えたが、車を奥の方へ進
めるとすいていた。降り立った時、青い秋の空の下で
駐車場は広々と明るかった。他に横切って歩く人影が
無かったから二人で真ん中を歩いた。人目を忍んで端
っこをこそこそ歩く楽しみが無く、その点では期待外
れで、「スパイの隠れ家」風らしくない。

 連れ立って歩きながら斜め後ろから眺めた時、女の
風情たるや半端なものではなかった。「こりゃあ、生
涯のめっけもの!」と嬉しかった。

 今までに知り合った優れものの女と言えば、小学四
年当時の利発なK子ちゃん、五年の時のM先生、母親か
ら配偶者、会社の女事務員からバツイチの中年の女友
達に至るまで、斜めや横や、最悪の場合でも後方から
眺めて美人で無かった女は一人もいない。

 美女に恵まれ続けた私の人生は、つくづく男冥利に
尽きる。そう感謝しながら、駐車場を歩いた。

(つづく)

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