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作品名 アカンタレの話(39) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(39)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/02/03 09:54:59

+++こっちには味方が居なかった。四面どころか五
面楚歌で、私が悔しかったのは、週イチのカルシウム
注射に頼る力量では、五面の敵に対抗出来なかった事
である。

39.明治ではない

 誰にも内幕を漏らさず、対抗策をこっそり考えた。
悪口の好きな女先生も呑気に構えていた。小ニは独創
的で案外賢い。真面目に考えてみたら、仕返しの方法
はちゃんとあった!のである:

 大きくなったら、絶対に「社長になろう!」と決
めた。社長は大勢の家来や召使いを持ち、威張れる
し、仕返しも出来て、高倉町の女だって「あの(私の
醜態を)見なかった事にする」と謝って、逆に尊敬す
るに違いない。品質に疑り深い私の親も、生んだのは
やっぱりタカだったかと、安心する筈だ。

 奇跡が突然天から降ってきたような素晴らしいアイ
デアだ、と自分で思い込んだ。
 従って、成るのは社長でなければならず、当時クラ
スで流行していた野球選手や汽車の運転手では到底不
充分である。兎に角、「威張れる」社長であるべき
で、これ以外に考えられない!

 秘密にして親にも誰にも言わなかったが、決心は変
わらなかった。小ニから学年が上がっても、中学生に
なり高校生になっても変わらなかった。その後の受験
戦争は、「社長になる」意志を反って促進した位で
ある。

 しかしそんな過程で、当初の目的が五面楚歌に対す
る「仕返し」と、自分が「アカンタレでない!のを証
明して見せる」のと二つであったのに、何時の間にか
前者の意識は抜け落ちて、後者の「アカンタレ!」だ
けが残って行った。それは高倉町の女に対する、一種
アレルギーに似た強い抗議に他ならなかった。

 大学になっても決心は変わらなかった。それが証
拠に、卒業時に就職先として主任教授から超大手企
業を斡旋されたが、それを断った。人が羨む会社で
ある。「会社が大き過ぎて、社長になれないから」
と、臆面も無く応えたのを覚えている。

 教授は絶句し、「今は明治ではないぞ!君のような
学生は初めてだーーー」と呆れられた。当時は主任教
授の斡旋に逆らう学生は居なかったし、大企業の口を
辞退するのは稀だったから、周囲から私は変わり者と
見られた。  
(つづく)

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