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作品名 エライコッチャの話(3) 評価 評価(1)
タイトル エライコッチャの話(3)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/14 14:35:16

++++そんな様子に安堵して、女は余計に勢いを
増しておしゃべりになる。これが一般的な女の特徴
であり、男の特徴でもある。

3.にわとり

 以前は一緒に居る時、配偶者のおしゃべりを携帯
ラジオで軽音楽を聴くみたいに、大抵上の空で聞い
ていた。 新聞を読みながら、鼻くそをほじりながら、
TVを見ながら聴いていた。

 しかし敵もさる者で、時々私に質問を発する。ち
ゃんと聴いているかどうか試験するのだ。こんな時
に曖昧な返事をするのは禁物で、何やら訳が判らな
くても取り敢えず、「僕も、そう思うよ」と言って
賛意を表するに限る。
 これで七割方はすんなり行くが、三割ははっとし
て頭を振り、「もう一度言ってくれないか?」と言
うハメになるが、そうなると必ずひと悶着が起き
る。

 男のこんな性癖は、私だけではないようである。
お昼のランチで、レストランや喫茶店へよく入る。
それとなく食事をしている、特に年配の夫婦連れら
しいのを見ていると、互いに敵同士のように黙りこ
くって、食事をしているケースが一番多い。

 そうでなければ、言い換えれば味方同士ならば、
おしゃべりを仕掛けているのは大抵奥さんの側で
ある。それに同調して夫はウンとかスンとか、ス
ポーツ紙のエロページか、三流週刊誌で強姦事件の
後始末を読み「ながら」、生返事をしている。

 こんな観察からも、私に限らず男は何時も「なが
ら族」のようである。けれどもある時ふとした切っ
掛けで、想う処があった。

 気が付いたのは、「女はなぜ男よりも長生きか」と
いう点と、「軍団を形成して、周りと上手くやって
いる」のは女の方が多い、という現実である。先ほ
どのランチタイムでも、若いのからお婆ちゃんに至
るまで、年齢に関係無く女がニ〜三人群れて賑やか
に食べている風景は、珍しくない。が、男同士は少
ない。

 そんな情景を眺めると、生きる上で女達はおしゃ
べりという道具を使いこなして、仲間を上手に募っ
ている。和気あいあい人生を享楽している風に見え
るから、「生きる達人」と見えなくもない。

 それに対して男は女ほど長生きは出来ず、メンツ
第一というか見栄坊というか、生きるのに不器用。
しかも、何処か孤独な寂しが付きまとっている。

 例えば古の歌人西行法師にしても、「ーー夢は枯
野を駆け巡る」の松尾さんにしても、近代の高等ル
ンペン山頭火にしても、要するに世捨人ごっこをや
るのは、どうして何時も男なんだろうか? 不思議
に思う。

 男は余り群れず本人にすれば、孤高を愛するのを
誇らしく思っている風さえ見えるが、はたから眺め
ると悲壮感が無くも無い。先日の喫茶店のランチタ
イムだって、隣のテーブルでカレーライスを独りで
食っている六十過ぎのおっちゃんがいた。西行法師
や山頭火と共通した雰囲気が漂っている。

 カレー汁に浸した飯粒を、スプーンでひと掬いし
てから、細い首を伸ばして呑み込む。痩せカンピン
だから、その度に喉仏があからさまに上下する。そ
の風情を眺めると、カレーの食べ方は巧者だが、首
の伸ばし加減から言えば、通振る程ではない。

 
 呑み込み終わる度に、しみだらけの顔を虚空にか
ざして、やおら目を一度パチクリさせるのだ。その
様子は、にわとりが首を傾げて左右の目で、食い物
を交互に一々確認しているみたいである。本人は新
種の哲学を考えている積りらしいが、にわとりとの
類似性を考えると、滑稽の中に何か哀れさえ感じる。

(つづく)

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