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読書日記
『恋糸ほぐし 花簪職人四季覚』 <旧>読書日記1563
2024年03月08日
テーマ:<旧>読書日記
田牧大和『恋糸ほぐし 花簪職人四季覚』実業之日本社(図書館)
著者らしさのあふれた人情職業もの。「藍の鳥」「小菊、揺れる」「藤結び」「野萱草(ノカンゾウ)の女」「ままごと内儀」「大中寺の春」の6編からなる。
花かんざし職人の忠吉は親方の突然の死によって、職も住まいもそして恋人(親方の娘)をも失ってしまう。
それを救ったのが大中寺の元住職で今は寺内の庵で隠居している杉修(サンシュウ)和尚、忠吉の育ての親でもある。忠吉と共に育った現住職の以風(子供の時の名は大吉)を使わして、寺に戻って寺男として働きながら職人としての仕事をしろ、と説き伏せる。
寺に戻った忠吉は杉修和尚とその庇護下にある耳が聞こえない少女のさきと自分自身の3人分(時には以風の分も合わせて4人分)の食事を作ること、庵とその周りの掃除などが寺男としての仕事。のちにはさらに「寺のお勤め」が加わる。
この「寺のお勤め」は以前は杉修和尚が行っていた寺の檀家などの愚痴や悩みを聞くことであるが、今は以風が代わっている。しかし、以風の性格からして相談事には向かずそれには忠吉が良いだろうという杉修和尚の考えである。
寺男としての仕事の合間に再開した花かんざし作りも次第にうまく行く様になり、さきも打ち解けてくるのであるが、さきの耳が聞こえず、口がきけなくなった訳、なにより、なぜ、さきが大中寺に現れたのかなどの謎は解けない。この謎解きが全体を通しての縦糸になっている。
もっとも、その謎解きが出来てめでたしめでたしとなるのは予想通り。ただ、私には少し理由が弱い様に思えた。それにしても「濱次お役者双六」シリーズの新刊はもう読めないのであろうか。
最後に、花かんざしというのは、造花などをつけて美しく飾ったかんざし。(日本国語大辞典)
現在では打ち掛けや振袖など総柄のお着物に見劣りしないヘアアレンジにピッタリの大振り のものが多く、やや派手なので若い女性向けのものである。
参照 https://www.wargo.jp/products/list506.html
(2021年8月30日読了)
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