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読書日記
『長兵衛天眼帳』 <旧>読書日記1495
2023年10月09日
テーマ:<旧>読書日記
山本一力『長兵衛天眼帳』KADOKAWA(図書館)
著者の本は2007年ぐらいに10冊程度読んだことがある。だが、飽きてしまって読まなくなっていた。それが今回改めて読んで見ようとしたのは、週刊誌の書評に出ていたから・・もっとも出ていたのはこのシリーズの2作目である『湯どうふ牡丹雪 長兵衛天眼帳』の書評であったが、やはり出版順に読むものであろうとこちらを図書館で借りた。
惹句では、弱さも企みも、家宝の天眼鏡で全てお見通し。江戸町人情物語」開幕!とあり、続けて
日本橋の村田屋は創業百二十周年の老舗眼鏡屋。そのあるじの長兵衛は、すぐれた知恵と家宝の天眼鏡で謎を見通すと評判だった。ある日、目明かしの新蔵が長兵衛に助けを求めてくる。住吉町の裏店で起こった人殺しの本当の下手人を挙げるのに長兵衛の力を借りたいという。
ということで
第一話 天眼帳開き
第二話 真贋吟味
の2篇があるのだが、普通、こういう話は「知恵と家宝の天眼鏡で謎を見通す」のであれば主人公がかつて行った簡単な例を冒頭で示すものではないか。ところが本書では初めから主人公の評価は定まっており、それを頼りに目明かしの新蔵が話を持ちかける。で、この第一話が長屋での老女殺しの冤罪をかけられた少女を救うという話だが無駄に長い。250ページ近くあるけれど、登場人物の紹介なのか、話の内容を示していくのか、どちらともつかずに進行ししかもお題の天眼鏡(拡大鏡)の出番は無く、悪役も竜頭蛇尾に終わる。
で、第二話は大店の材木屋福島屋矢三郎の跡継ぎをめぐる遺言状の真贋を見極める話であるが、乗っ取りを謀る死んだ店主の弟である岐阜新新二郎の動機が今一つ判らない。その後見役とされる深沢屋義三の筋の悪さは少し書かれるけれど、乗っ取りを謀る必要も無い。結果、弟が頼む真贋の判定人の飛騨屋東七郎と死んだ矢三郎の仲が悪かったことが判るけれど・・ちょっと動機として弱い。
遺言状の真贋は話の半ばで判ってしまって、後は弟一派の企みを暴くだけの筋書き。どちらも50ページほどの短篇にした方がミステリーらしくなると思うけれど、この著者の語り口を楽しみたい人にはこの長さが良いかもしれない。なお、天眼帳とは江戸の眼鏡屋の主長兵衛が商いの他に頼まれごとを手助けする時に、内容を記しておく覚え書き帳。
2冊目については、おそらく買うことも借りることも無いと思っている。
(2021年4月12日読了)
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