読書日記

『最終人類』上下 <旧>読書日記1492 

2023年10月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


ザック・ジョーダン『最終人類』上下 早川文庫

書店で見かけて買った上下2冊の本。著者の初めての創作らしいが話を広げすぎて収拾がつかなくなった感がある。

内容紹介に寄れば
上巻:ありとあらゆる種族がひしめく広大なネットワーク宇宙。その片隅の軌道ステーションで、ウィドウ類の元殺し屋の母親と暮らすサーヤには秘密があった。宇宙種族にもっとも憎まれ、絶滅させられた「人類」の生き残りだったのだ。この秘密のため、彼女はネットワークに必須のインプラント手術を受けられず、まともに仕事も探せない。だが、そのサーヤの正体を知る集合精神オブザーバー類が突然、現れた!

下巻:秘密を暴かれた「人類」の生き残りのサーヤは、ステーションを命からがら逃げ出した。乗り込んだ船の仲間に助けられ、自分の出自の謎を探ることに。人類は滅亡したというが、サーヤ以外の生き残りがどこかにいるはず。しかし、このサーヤの行動も、オブザーバー類らネットワークを操る高階層知性体の深遠な策略の一部だった。

この物語世界の解説役は宇宙中を結ぶネットワークによる「ネットワークへようこそ!」というガイドブックによる説明であり、それが道案内役となる。で、読み始めて80ページほどのところにあるその「ネットワークへようこそ!」によるとこの世界の住人(種族)は大きく6階層に別れる。下から順に第1階層、第2階層、第3階層、・・第6階層と名付けられそれぞれの階層は下の段階の12倍の知性を持つとされている。

第1階層は最低ラインとされ、前文化的知性対であって野生動物より上位の保護対象であるが、ネットワーク市民権を得る資格は無い。1.8階層(法定内)この段階からネットワーク市民権を得られる。ヘルパーと呼ばれる人工知性は1.79階層とされる。

第2階層があなたの種族の位置で、人工的に加速されない限り、大半の種族は宇宙旅行の開始から数千年で第2階層を通過し、第3階層に上がる。

第3階層は、第2階層が何時間も集中しての思索で漸く理解することを第3階層は直感的に理解できる。

第4階層は、この段階に到達出来るのは通常大型集合精神だけで、第3から見ると超人、第2から見ると神の様である。低階層者がこの階層の相手と話すことは滅多に無く、進化を極めた種族はたいてい集合精神になる。第5階層は、惑星知性体の多くで、普通は数十億のメンバーで構成され常時精神コミニュケーションをしている。さらに、第6階層以上はあるのでしょうか?とされていて、答えは誰にもわかりません。とガイドされる。

ところが、上下巻合わせて680ページの中で著者自身がこの自分の解説と言うか自分が作った世界観を忘れてしまったかの様な記述になる。主人公のサーヤ(宇宙全体の中に唯一残る地球人)は第2階層であり、第3階層はサンドニバス(サンディ)という子供だけが登場。オブザーバー族という集合知性体(一応悪役に当たる)は第4か第5階層に当たるのであろうが、突如サーヤはネットワークと一体化し、それ以上の能力を持ったりする。

しかも、途中から数の単位がエスカレートし始めるし・・数百万が容易に数千億とか数百兆となっていく。
例えば「あれは......八百星系で起きていることの一端だ。俺のパートナーにして人格未満のサーヤ、あれはな、六兆隻の宇宙船が殲滅戦をしている輝きだ」(下巻P271)という描写。結局のところ、著者には具体的なイメージを持てず数を大きくすることでしか描写出来なかったのであろう。

読み始めはその世界観に魅力を感じさせ、なぜ人類は忌み嫌われ絶滅させられたのかなど読み続けようとする意欲を持たせることに成功するのであるが、話は一種の竜頭蛇尾に終わる。下手な世界を構築せず、サーヤの冒険とその育ての母であるウィドウ族のシュンヤの話だけにまとめれば良かったのにと思わせる。

なお、著者の後書きによると最終的に本書を書くために4年半かかり、250万語を綴ったと書いている。英単語200語が日本語にすると原稿用紙1枚程度になるというのが相場らしく、原稿用紙250枚が文庫本で大体200ページに当たると言うから本書のサイズではおよそ750枚。つまり本になった原稿の約17倍の分量を書いたということになるが・・話を広げすぎなければ良かったのにと思う由縁でもある。
(上巻 2021年4月6日読了、下巻 2021年4月7日読了)



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