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葵から菊へ
自民党憲法改正法案でも「学問の自由は、保障する。」となっている
2020年10月08日
テーマ:テーマ無し
1945年10月10日に日本共産党員たちは刑務所から解放され、12月8日に神田共立講堂で「戦争犯罪人追及大会」を開きました。戦争犯罪人名簿には、関東軍第731部隊で人体実験をした医学者たちは調査対象にはなっていませんでしたが、「言論」、「文学」「学界」、「婦人」などには、西条八十や正力松太郎らの名前がありす。正力松太郎は、読売新聞社主、日本テレビ代表取締役社長、読売テレビ会長、読売ジャイアンツ初代オーナーでした。
戦前の明治憲法のもとでは言論、著作、集会、結社の自由も「法律の範囲内に於テ」認められ治安維持法、不穏文書臨時取締法、治安警察法、行政執行法、出版法、新聞紙法、言論出版集会結社等臨時取締法、国家総動員法という法律では「安寧秩序ヲ妨害シ又ハ風俗ヲ攪乱スルモノト認ムルトキ」は、言論其の他の自由をいつでも制限したり剥奪したりすることができるという恐怖政治がすすめられてきました。
「学問の自由は、保障する。」と現憲法に定められいますので、憲法遵守義務がある内閣総理大臣は日本学術会議の任命拒否権はあり得ません。最高裁判所長官をはじめ多くの形式上の任命権はありますが、安倍総理と菅官房長官は内閣人事局を設置して官僚人事を支配しようとしましたが、官僚人事とは全く違う次元の問題です。自民党改正憲法法案に於いても「学問の自由 第二十三条学問の自由は、保障する。」と現憲法と何ら変わっていないほど重要なカテゴリーなのです。
書棚にあった岩波新書「憲法問題研究会編・憲法読本」の末川博氏の論考「自由」の「学問の自由」を抜粋いたします。
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?(学問の自由)(五)学問の自由(第二十三条) すでに思想および良心の自由と言諭の自由が保学問の自由障されているうえに、さらに学問の自由が保障されているのは、学問は入類の幸福と進歩に役立つことが大きいにもかかわらず、東西の歴史が示すように、学問と学問を研究する学者に対してはいつの時代にも抑圧と迫害が加えられることが多いためである。? ところで、学問とは何かといえば、いちおうスジミチをたてた体系的な知識をつくりあげることだといえるのだが、本質的におしつめていえば、真理を探求すること、つまり真実を究め真実を知り真実を伝えようとするのが学問だといってよい。したがって、学問では、いつもウソのことすなわち虚偽をしりぞけるとともに、本当のこととウソのことを見分けるために現在あるものごとに対して疑ったり批判を加えたりするのである。ところが、世の中には真実を探られたり知られたり伝えられたりしてはこまる人たちがいる。わけても、政治的、経済的その他社会的な支配力をもっている人たちとそれにつながる階層は、自分たちの支配的な地位や利益を維持したり自分たちの考えている方針や政策を行なおうとしたりするために、自分たちの支配力をつくり出している機構やそれをささえている環境や実施しようとする政策などに対する疑惑や批判をおそれ、真実を知られて伝えられることをいやがるのである。だから、古くは、秦の始皇帝が書物を集めて焼きすて学者を坑に埋めて殺したとか(焚書坑儒)、ヨーロッパでも近代的な科学を生んだ学者を牢獄につないだり焼き殺したりしたとか(ブルーノやガリレオなどの例)いうような例がたくさんあり、近くは、ドイツのナチスによって多数の学者が迫害され、また日本でも戦前と戦時中に学者や研究者で学校を追われたり投獄されたりした例は少なくない。つまり、権力を有している者は、学問が自分たちの利益になって都合のよいときにはこれを利用するけれども、学問が自分たちのカラクリを暴露したり政策を批判したりして邪魔になるときにはこれを弾圧することになるのである。そしてその弾圧の手段は、人間の理性を無視した不合理なものであり、専断的なものであるのを常とする。というのは、弾圧される学問のがわには真理に基づく理論があるのに、弾圧する梅力のがわには正しい理論がないのだから、理論に対するに理論をもってすることができないために、いきおい暴力的な手段で学問を弾圧することになるのである。 とにかく、古今東西の史実が示すように、真理を探求する学問は、権力や暴力によって弾圧され妨害される危険にさらされていることが多いのだから、憲法でもとくにその自由を保障しているのである。そして学問の自由には、(イ)研究者が真理を探求するためにはどのようにも思考することができる自由、そしてまた研究の結果としてどのような学問的な考え(いわゆる学説)をもつこともできる研究の自由と(ロ)研究の結果として得たところを対外的に表現することのできる研究発表の自由とを含んでいる。なお、研究発表の自由は、それが学校教育に結ぴつくと、教授の自由となるのである。 このような学問の自由は、国民一般の自由として保障されているのであるけれども、歴史的な発展や実際上の要請から大学における研究および教育の自由というふうに考えられているのが普通である。英語でapopdemic freedomといっているのも、そのことを表わしている。ヨーロッパにおいて大学が学問研究の場として自治団体のような性格を与えられていた歴史があり、またわが国でも大学の使命は学問の研究と教育にあるとせられているところから、そのように考えられているのである。そして学問の自由をまもるために、大学の自治ということが認められている。大学の自治にはいろいろの内容が考えられるのだが、その核心となっているのは、研究者たる教授の任免については大学とくに教授会が決定権をもっているという点にある。つまり、そのときどきの政府の意向や社会惜勢や世上の風評などで研究者の地位が左右されることになっては、学問の自由と進歩は保たれないから、外部からクチバシをいれる余地かないようにしておこうという趣旨で、大学自治が認められているのである。 ところで、学問の自由は、このようにいちおう大学を中心として考えられることが多いけれども、それは、大学関係者のためにだけ認められている自由ではない。国民すべてが、真実を知り真実を伝える自由をもっているのである。ことに、国民は、思想良心の自由や言論の自由とともに、真実を知る自由ーー裏からいえばだまされないための自由を保障されているのであるから、戦前と戦時中のように、虚偽を伝えられてだまされ真実を知ることができぬ状態におかれることは、国民のもつ学問の自由が侵害されるものといってよい。すなわち学問の自由は、国民大衆のために保障されている自由として尊重されなければならぬのであって、国民すべてが真実を知り真実を語る自由を確保しているなかでのみ、学者の学問の自由とか大学の自治とかいうことも存在し得るのである。もし社会情勢とくに大衆を支配する政治的ムードまたはふん囲気が、戦前のように狂ってきて、国民が真実を知りえないことになれれば、いかに大学人らが勇敢に抗争して理論では勝っても、学問の自由はふみにじられて実践では負けてしまうであろう。私は、そのような敗北の例をいくたびも見てきている。だから、くりかえしていうが、学問の自由の保障は国民大衆がだまされないで真実を知ることの自由の保障である。そして学問の自由をまもりぬくためには、真実をおおいかくして虚偽を充満させるような社会情勢や政治的なムードの出現を防止しなければならない。しかも、それは、あらゆる自由をまもるために、何よりも肝要なことである。
(了)
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