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<心に成功の炎を>85 

2018年07月14日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 「強靭」の篇

 第9章 心に成功の炎をー天風訓言 <379頁>

 今日は あなた方の人生に 真実 役に立つであろう有用な言葉を呼びかけて あなた方の理解を正当なものへと導く努力をしたいと思っております。
 これから話す<天風訓言>とは あなた方に話そうがためにこしらえた言葉ではなくて 私自身が私自身を修養させるための 心得のともしびとしてつくったものなんです。いわば 天風自身に対する格言なんです。
 そして 私がこれを今まで三昧してきた結果 今日の私がつくられたといっても過言ではないので 私一人だけでこれを三昧するのは忍びないと思って 皆さんのお耳にも入れようというわけなんです。
 もちろん あなた方も 古往今来 洋の東西を問わず 世にあった多くの偉人や学者や覚書 あるいは宗教家の人生に対する格言や処世訓といったものを今までに聞いたことがあるでしょう。そして その中には お互いの人生に本当に役に立つ教えとなるものもあり また参考とすべき価値の多いものも多くあるだろう。
 しかし ここで注意深く考えなきゃならないのは そのすべてのすべてが役立つとはいえないということです。それはなぜだというと 時代の推移とともに 人間の思想というものは変遷していくものでありまた人間の生活の内容事情も違ってくるという事実があるからなんです。
 だから 昔の人の人生生活には価値の高い 参考になったような言葉も 今の人間には全然効果を感じせしめないような言葉がいくらもある。
 とくに 西洋の学者や哲学者や宗教家のいった格言や訓言の中には 何しろまったく人情 風俗の違う西洋人がいった言葉だから 我々と人生の生き方も違っていることは当然 東洋人にはぴったりいかないものがかなり多いんであります。
なかんずく 東洋人の中でも 他の東洋の国とは異なった民族性格を持っているわれわれ日本人には 耳で聞いたことをいくら考えてみても 自分の人生に当てはまらない消息が多くて それがどうしても理解の中にピンとこない。
 だから 西洋の格言や訓言を これより以上のものはないようにいう人もあるけれども そういう人は結局要するに 感激を装った感激でもって あるいは本当に感激したというならば おそらくはその人の血の中には 日本人的なものが少ないんじゃないかと思う。さもなくんば 実際に自分自身が大病なり あるいはどえらい大きな運命に今まで直面したことがなかった人じゃないかと思うんです。
 たいした人生の苦労もしないし 健康も比較的いい 運命もよかったなんていうような人は その言葉を耳で聞いて 快い響きを言葉のうえから感じると 何かそれが大変な真理のように感じるというあわてた考え方をする人もあるかと思う。
 共鳴はできても 実行のできない言葉というものは ただもう壁に書いた食い物と同じで 何の味もなきゃ 何のありがたい気持ちも感じないことになるんです。
 そして この天風訓言は 私を標準として 私自身の人生の羅針盤として こしらえた言葉ですから あるいは私がなんべん申し上げても ぴったりとおわかりにならない点がでてきやしないかと思いますが・・・。
 しかし たとえ今日聞いてわからなくても だんだんと修行が進んで 今まであなた方の人生を苦しませ 悩ませていた 自分じゃ気のつかない心の中の垢 汚れというものがとれてくると 今日申し上げることも <ははあ なるほど>と別に深い理解は与えられなくても おわかりになってくるときがきます。
 それを楽しみにして 今日はわかろうとする努力よりは ただ自分の魂をその言葉の響きのエクスタシーの中にとろけさせてしまうというようなつもりで聞くのが一番いいでしょう。
 それともう一つ この<天風訓言>は あくまでも天風自分自身にいい聞かす言葉なんです。
 
 朝 私がヒョイと目を覚ましたときなんかに また昼間 何かの仕事をしているときなんかに ふいと自分の頭の中に感じたインスピレーションなり自覚なり悟りを 急いで筆をとって そのまま率直に何も脚色を加えずに書いたものなんです。いわゆる天真流露 心の中にさっとひらめいたものをそのまま書いたんです。
 だから 一種の格言体のものもあるし 口語体のもの あるいは文章体のものもあるんです。そして これに後からいっさいの訂正も与えなければ またある意味における校正的な処置もしてないんであります。
 ただ ある一人の人間がその人生に感じたこと それが何万年たってもそのまま文字にあらわれているんだということを残したいと思ってね。後世に残すためには 多少なりともそこに訂正を加え あるいは修飾をつけるのが 今までの学者や識者のとっていた態度かもしれませんが 私はそれを潔しと考えないんです。
 これだけお断りして本論に入ります。

         *

―続くー



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