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シニアの放課後

<心に成功の炎を>38 

2018年05月21日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 今日も 会の幹部が
 <先生 昼間あれだけの講演をした後に ここへ来られて さぞおくたびれでしょうが この後の講演できますか>なんて聞くから
 <冗談いえ これがおれの仕事だ できましかとは何事だい。それをするために私は関西に来てんじゃねえか。疲れたから休むために関西へ来てんじゃない>と言ったんです。
 結局 人生は心一つの置きどころなんであります。
 ところが その置き所を間違えてしまうと 尊い自分の命を思わず粗末にしちまうような了見違いをしちまうんだ。くだらねえことで怒ってみたり 泣いてみたり 恐れてみたり 憎んでみたり そねんでみたり ねたんでみたり 迷ってみたり 悩んでみたり 悶えてみたり 苦しんだりするということは これは実際 遠慮なく言っちまうと 人間に生んでくだされた神や仏に対して反逆を企てるような罰当たりだ。だって それでよい結果は少しもきやしねえんだもん。
 心の状態を極めて消極的にして その結果は 黙ってても忠実に我々の生命を保護してくれるために働いている植物心を ちょうど一生懸命勤勉に働いている使用人のわきへ もうろくばあさんが行って さみだれ小言でもって 箸のおろしに干渉すると同じことになってしまうんだ。
 それが今までのあなた方だったんだもんね。怒ることがありゃ腹を立て 悲しいことがありゃ泣けてくる。おっかないことがありゃ驚くわ。憎いことや そねむことや いろいろそういうふうに心の中にグルグルッとこんがらがるようなことができりゃ 心が平らになってませんよ。
 <何でそれが悪いんだ。わからないことにでっくわしゃあ迷うわ。わかってもどうにも解決がつかないことがありゃ悶えるわ。それがどうしていけないんだ>と聞いて わけがわからなくたって いけない結果がすぐ生命に出てくるわ。直ちにこの植物心が調子を崩しちまうんだ。
 ところが 心が一切のことから離れて 尊く清いものになると なんと植物心はありのままに働くんです。ありのままに ありのままに働きゃ これはもう極めて公平な 忠実な 偏頗のない心ですから ドンドンドンドン 病のある人間には病を治してくれるように一生懸命努力し 病がなけりゃ病がないほど よりいっそうその人が健やかにあるように努力してくれる。この一事をたまたま聞いただけでも たとヘどんなことがあっても 心というものは消極的にしちゃいけないということがわかったでしょ。
 それでも <いや そらまあね 理屈はそうかもしれないけれども どうもそうなりませんわ>という人は 勝手にせい。そこまで世話やききれないよ。百万人からのお弟子だから。それに 焼き場も株式会社になってるんだし あちらのほうでもやっぱり配当もしなきゃならんから まああっちに行くか。

 それから第三の肉体に付随している本能心。この本能心というのは 肉体生命を生かすために 常に意識領域にでて活動してる心なんです。これは人間ばかりでなく およそこの世に生きとし生きる動物はみんなこの心を持っているんです。生きるのに必要な働きをおこなっている心だから 動物心とも言います。
 この本能心というものは 盛んに意識領域の中にあらわれて 我々の命を生かすために必要な要求というものを 遠慮会釈なくその心にあらわして活動している心です。
 なにしろ 肉体を守るために造物主が与えてくれた心で これがなかったら 腹のへったのだってわかりゃしない。本能心があなた方の肉体生命の中に栄養となるべき物質の欠乏を感じたとき<お 腹へってるぜ。何か食わねえか>ということを あなた方の大脳へ合図する。本能心がなかったら日干しになって死んじまう。
 眠くなって寝ようとするのも本能心。生きてる動物は 顕微鏡で眺めるような小さな動物でも 生きてる間は活動しています。生命が活動する時 そこに消耗というものが生じる。消耗を再生するために 睡眠というものがすべての動物には必ず存在している。
 それは人間のように昼間起きて夜寝るという睡眠と 蛇や亀みたいに 一年の間 二つの区別をつけて 寒い間だけ寝てて 暑い間は起きているという長期の睡眠をとるものもあります。
 性欲 これもまた 系統を相伝する必要上 すべての生物に存在している本能心であります。この食欲 睡眠欲 性欲の三つのどれか知らんが少しでも衰えてきている人 失礼ながら焼き場のほうへ向いている人ですよ。
 ほとんどの人が 年を取ると どうも若い者ほど食えなくなっちまうし 睡眠欲だってもうしょっちゅう目ざとくなって 朝なんかとびきり早く目が覚めちまうし 朝早く目が覚めなければ 夜しょっちゅう チョコチョコ目が覚めるし 夜ちょこちょこ目が覚めなきゃ もう宵っ張りでもって いつまでも眠くならない。
 まして性欲のごときは げんぢじんは哀れなやつが多い。もう60歳ぐらいになると 男も女も浜辺の軽石みたいになっちゃてる。笑いごとじゃないんだよ。これまじめに考えなきゃだめなんだぜ。

 それから 階級の低い感情というのも 本能心のほうからでてくるんです。
 つまり 憎いとか ねたましいとか ねえ やきもちをやくとか かたき討ちせずにおくか というような心持だ。これを <不要残留本能心>と言ってます。
 人間の本能心の中には 祖先時代の人間が生きるためには必要だったけれど 今の現代のお互いが生きるには必要ない。極めて階級の低い本能心が 整理されないままで残っているんです。これが おそろしく長い名前をつけている<不要残留本能心>であります。
 この不要残留本能心も本能心から出ているんですけれども いきなりは意識領域には出てこない。本能心から感情情念のほうへ毒汁のようなものを流し込んで 感情情念の領域から発作的に出てくる。
 そういうふうに言うと たいへん学術的でもって あなた方は自分には覚えがないように感じるかもしれないけれど あなた方の感情の大部分は不要残留本能心なんですよ。この本能心のほうから流された毒汁のようなものが あなた方の感情情念の領域に入って パッパッパッパッと火花のように朝から晩まで 働かせているわけじゃなかろうけれども 意識領域で持って活動してるんですよ。
 みだりに人を羨んだり 怨んだり あるいは嫉妬 猜疑 復讐というような低劣な感情情念や 度外れの淫欲とか分をすぎた所有欲 たとえば身の程を考えないで やれ あれが欲しいの これを我が物にしたいというような 自己本位の欲情をやたらと発動させているのが 現在のあなた方だ。
 だから本能心というのは我々の生命に欠かせない。非常に大切な心ではあるんだけれど その中にこの不要残留本能心があるがために あなた方に反省より以上の内省を促したい心なんです。

―続くー



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