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シニアの放課後
<心に成功の炎を>13
2018年04月21日
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>
*
この心の態度を積極化するという問題は 今さら気がついた問題じゃないんです。もうずっとその昔も昔 心というものを考えた人々はみんな この問題が彼らの人生のいちばんの焦点になっていたんです。それだからこそ 哲学が生まれ 宗教が生まれたんです。お経の本を読んでも バイブルを読んでも 必ずこの心の積極的態度ということがかいてありますよ。
しかし どうすれば心を積極的にすることができるかという方法を 今日これだけ文化が発達した現代においても ほとんどの人が知らずに生きているという有り様なんです。
考えてごらん だれでもが 自分の人生をより価値が高いものにしたいがために 自分のもっている力をフルに使って努力しています。社会人は一生懸命金儲けに奔走しているだろうし 学生は一生懸命勉強するだろう。
そうして 果たしてあなた方は 自分の思うような運命を手にしていますか。たいていがもう 鶍(イスカ)の嘴の食い違い(編集注 ものごとが食い違って思うようにならないことのたとえ)でもって こと志と違ってる人が多かないですか。
それは結局 心の態度が一年不動の状態に積極化されていないからなんだよ。時には情熱が それはもう溶けちまわないかと思うほど燃えてるかと思うと 時によると フ−ッとろうそくの火みたいになってしまうというようなことがあるがためなんだ。
何でもないときは矢でも鉄砲でももってこいという気になるけれども 健康上に故障があったり 運命上に少しでもままならないことがあると そういう場合こそ よりいっそう心の態度が積極的であらなきゃならないのに すぐ青菜に塩みたいになってしまう。こういうのを積極的態度というんじゃないんですよ。どんな場合があっても積極的というのは 心の尊さと強さと正しさと清らかさが失われない状態をいうんです。
だいたい多くの人は 積極という言葉の意味を 消極に相対したものと考えているんです。英語で言うと ポジティブとネガティブ プラスとマイナスというふうに 消極に対しての積極というふうに思ってる。
あなた方も日常の会話でも<どうもそんな消極的な考え方じゃだめだ。もっと積極的にやれ>だとか あるいは<おまえの考えは消極的な考え方だよ。もっと強気に考えろよ>なんてことを よく言っているよね。
だから 時によると 積極精神というのは 何か強気な気持ちでという意味にとらえてがむしゃらに強がったり 強情張って頑張るということがそうだと思っている人 多かないですか。
こういうのも もちろん積極精神の一部だとも言えないこともないけれど これはあくまでも消極と相対しているものだな。だから 相対的な積極なんであります。
私が教える積極精神というのは 消極というものに相対した積極でなくして 絶対的な積極のことなんです。
どう違うかというと 相対的積極の意味は たとえば肉体でいうと 外部からいろんな刺激が来る。痛いとか暑いとか寒いとかいったような刺激を受ける。あるいは 怒ったり 悲しんだり 恐れたり あなた方がしょっちゅうやってるね、いわゆるエモーション 消極的な感情です。そういうものが心の中に起こる。それに対して これをこらえようとか これに負けまいとする気持ち これは相対的積極なんです。
これは日常 対人関係でもあるでしょ。<あいつだけには負けたくない>とかよく言ってるね。日常の仕事 勉強をする場合だって あるいは スポーツなんかでも 勝負事なんかでも なんとかして勝ってやろう 負けまいと思ってやる。
これもいわゆる消極的な気持なんだけれども これは相手あってのことでしょ。相手が人間でなくても なにかの対象に対して 心に張り合う気持 対抗する気持があるからだろ。だから これは相対的積極なんだよ。
これに対して 絶対積極とは どういう気持かというと これは張りあおうとか 対抗しようとかする気持がそこに全然ないんです。
プロ野球の選手が会員に何人かおりますが スランプに陥って これはプロ野球選手にとっちゃ 非常な苦しみですよ それで私のところに来て
<先生 なんとかしてヒットを打ちたい でも そう思えば思うほど あせればあせるほど 打てなくなっちゃう。どうやれば このスランプからぬけだせます?>と聞く。そういう時は
<バッターボックスに立って なんとかして打とう ヒットを飛ばそうという気持は 相対的な気持だよ。絶対的な気持になったら打てるんだよ>と言います。
<どう意味です?>
<ピッチャーに対して 勝ってやろうとか 打ち負かそうとかいうような気持をださなきゃいいだけのことだよ。そういう絶対的な気持になれる方法を教えてやってんだろ>
<はあ>
心がその対象相手というものに 決してとらわれていない状態 これが絶対的な気持というんだよ。何ものにもとらわれていない 心に雑念とか妄念とか あるいは感情的ないろいろの恐れとか そういったものが一切ない状態。けっして張りあおうとか 対抗しようとか 打ち負かそうとか 負けまいといったような そういう気持ちでない もう一段高いところにある気持 境地 これが絶対的な積極なんですぜ。
ー続くー
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