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<心に成功の炎を>2 

2018年04月09日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>


          *             

 あなた方は 今までに<理想的な人生のあり方>というようなことをお考えになったことがあるかしらん。いかがです?
 もちろん 理想的な人生というようなことをうたいだせば 非常に漠然として 抽象的で つかみどころがありません。
 人々によって 人生に対する考え方がみんな違っておられるから 端的にいえば 現在 病をわずらってる人は 何をおいても まず第一番に丈夫になりたいということが その理想でしょう。健康な人は もっと金が欲しいとか 何とか地位が欲しいとか あるいは かねや地位は第二としても もっと長生きしたいとか いろいろの考え方が人々によって違います。
 ですから ただ漠然と理想的な人生なんていったところで これを文字の上から考えただけでは 正しいヒントが得られません。
 しかし 人として生まれたお互いが まず第一番に考えなければならないことを 世界共通の人生理念で決定してありますから それを申し上げましょう。
 何はさておき いっぺん縁あってこの世の中に人として生まれてきた以上 どんなに学問しようが どんなに努力しようが またどんなに金ができようが 一生はだんぜん一生で 二生はないんであります。いっぺん死んじまえば 二度味わえはしないこの人生 こりゃ尊いものです。
 ところが この尊い人生に現在生きていながら しかもそうとうの理知 教養を受けているはずの文化人が 本当に徹底的に命の尊さを考えているかというと あにはからんや さにあらざる場合が多いんじゃないでしょうか。
 ただいたずらに食うことや寝ることや着ることや儲けること 人生のただ一部分的な事柄だけを 本能や感情の欲するがままにこれを欲して それを得られて満足し 得られないで悩みを感じているような きわめて浅い考え方で人生に生きている人が むしろ数においてすこぶる多いんであります。
 つつましやかに人生を本当に尊く考えて 人間として恥ずかしくない生き方を心がけ このふたたび取り返すことのできない日々を過ごしている人などというものは めったに見られない。人という数は多いけれど ひざまづいて手を合わせたいような尊さを感じるような人は それこそ暁の数より少ないのであります。
 言われてみれば すぐお分かりになります。いったん生まれて死んじゃったら 二度味わえない命。おまけに この命が意識的に感覚している今日という日がどんどんどんどん過去にいってしまって どんなに努力したって 現在ありうるがごとき現実はふたたび味わえないんです。明日になって またあなた方がここにおいでになったって またよしんば明日 私がこの演壇にふたたび立ったところで 今日たったいま味わっている味わいというものは 二度と味わうことはできません。
 さするところ 瞬間 瞬間が まことになおざりならざる考え方でいかなきゃならないんだが いかがでしょう あなた方。
 ところが 今の人々 1年が365日とはいえ 本当に喜ぶなんて日はめったにありゃしない。喜んでも 瞬間の喜びですもん。そのかわり 煩悶だ 迷いだ 苦労だというやつは 念には念を入れて毎日やってますからね。
 そして そういう状態の人生に生きている人には <光陰矢のごとし>とか<月日に関守なし>という言葉は 本当からいうと当てはまらないんです。
 ご経験がありますでしょう。好きな人と物語っていれば <おや もうこんなに時間がたっちゃたの> というぐあいに 時のたつのを忘れてしまう。往来歩くのも 1里や2里は平気で そうとう遠回りしたってくたびれやしない。反対に 嫌いなやつと歩くと 道の半町も歩かないうちにくたびれてしまう。
 心朗らかに なんにも心にわだかまりなく 楽しい うれしいという時を味わってるあいだは 時間も空間も超越してしまうんですよ。
 だから <もう1年たったのかい> という言葉は 本当に快く人生に生きている人の言うことで 悶えがあったり 迷いがあったり くるしみがらあったら もうその言葉は当てはまらないんです。
 百人一首でこういう歌があります。

 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る

 女の方なんかは 痛切に <これは そうだわ> と思し召すでしょう。 夜寝られないときの いかに夜明けの待ち遠しさよ。痛みがあり 苦しみがあれば よりいっそう その一瞬 一瞬が長く感じられるんですから それはとても 一夜が長いですよ。
 ですから 月日が早くたつのを感じるのは おおらかに人生を生きている人だけなんです。そのおおらかに人生を生きている人というのは 世界人類の通念になっている。これが理想だという人生に生きている人なんであります。
 それは何だというと 四つのことが必要なんです。
 第一に <強く> 日々の人生がどんな場合であっても強いこと。
 第二に <長く> できるだけ長生きしてること。
 第三に <広く> できるだけ人生を十分に広く生きること。
 第四に <深く> 人生の深さを深くすること。
 この <強く 長く 広く 深く> の四つのこと。

ー続くー



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