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代演 

2017年12月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

噺家の鈴々舎馬桜は、自らにホームページの掲示板へ、毎日のように投稿していた。
地方の落語会で東京を離れ、投稿できないときは、その旨を掲示板に書いた。
ところが、十四日の投稿を最後に、鳴りを潜めた。
その日の投稿に、「風邪気味」と書いてあった。
風邪なら、数日で復帰すると思ったのに、一週間が過ぎても音沙汰がなかった。
二週間近く過ぎた一昨日、管理人が【代演のお知らせ】と題した一文を掲示板に載せた。
体調不良で、休演しているという。
今夜、池袋演芸場で、馬桜師は『年忘れ独演会』を予定していたが、出演できなくなり、その代演の知らせだった。
通常の公演だったら、代演者を一人用意すれば良いが、独演会だから話は厄介だ。

代演者は、番外/浅野与志江(舞踊)、開口一番/春風亭一朝(尻餅)、中入り/林家たけ平(明烏)、人情噺/鈴々舎馬るこ(文七元結)と、私の好きな噺家が並んでいた。
代演の場合、当初の出演者と同格、もしくは格上の出演者を選ぶのが普通である。
急なことなので、独演会をやれる噺家を探すことなど無理だ。
その意味では、妥当な人選だと云える。
席を選ばなければ、チケットは残っていると思うが、見たいと思っても、昨日の今日では、私にも都合がある。
第一、独演会の本人が出演できないのに、代演で飛んで行っては、馬桜師に失礼だ。
ところで、その出演順には驚いた。
開口一番は、前座が務めるものなのに、馬桜師の先輩である一朝師とは異例のことだ。
この顔ぶれだと、開口一番/馬るこ、中入り/たけ平、ヒザ/色物、トリ/一朝が一般的だ。

先日の風流寄席で、鳳楽師と交わした会話を思い出した。
国立演芸場で行われた、五代目円楽一門会のことである。
三日間の公演を、順番はともかく、鳳楽、好楽、六代目円楽の三人が、一日ずつトリを務めるのが良いと思った。
ところが、一門会の会長である好楽師は、他の仕事があって出演できないという。
その上、悪いことに、鳳楽師と円楽師の二人が、同じ日に出演することになった。
思った通り、二人が出演する中日のチケットは、直ぐに完売になったが、初日と楽日が売れ残った。
このことを鳳楽師に訊くと、二人の日程は中日しか空いていなかったという。
更に、鳳楽師が中入りで、円楽師がトリなのは、変だと思ったので、そのことも訊いてみた。
円楽師は、中入りの時間に別の仕事が入っていたのが、その真相だった。

年末年始の忙しい時期に、急遽、『年忘れ独演会』の代演者探しである。
関係者は、大変な思いをしたはずである。
多分、苦労して見付けたであろう一朝師は、別の寄席でトリを務める予定があったのかも知れない。
だから、やむを得ず、開口一番で高座に上がることになった。
出番は前座の定位置だが、実質はトリですよ、ということだろうか。
東京の噺家は、自営業者だから定年がなく、元気な限り高座に上がることができる。
正に、身体が資本の商売と云ってよい。
馬桜師は、サラリーマンだとしたら定年の歳は過ぎているが、まだまだバリバリの現役だ。
一日も早く、元気な姿で、高座に復帰できることを祈っている。

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写真
12月27日(水)の昼餉と夕餉



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