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八十代万歳!(旧七十代万歳)
ちびちびイヌ
2017年07月04日
テーマ:テーマ無し
ちびちびイヌ
マーガレット・リード・マクドナルド著・佐藤凉子訳
「明かりが消えたそのあとで」編書房 より再話
魔女のナニ婆さんが、お百姓の家に魔法をかけました。
魔女のナニ婆さんは、牧場の木戸に言いました。「ここんちの者はだあれも通しちゃならないよ」
そこで、誰も牧場に行かれず、羊の世話ができなくなりました。
魔女のナニ婆さんは、鶏小屋の戸に言いました。「ここんちの者はだあれも通しちゃならないよ」
そこで誰も鶏小屋に入れず、めんどりの世話ができなくなりました。
魔女のナニ婆さんは、井戸に言いました。「ここんちの者はだあれも水を汲ませちゃならないよ」
そこで、誰も水を汲めず、おかゆを作ることもできなくなりました。
おかみさんは家の中でイライラし、お百姓と息子はどうして良いかわからずに、庭をうろうろし、女の子は、川へ水を汲みに行きました。
川では子供たちがちっちゃな黒い犬を溺れさせようとしていました。
みんなは言いました。
「こいつはネコよりちっちゃくて、番犬にはなりゃしない。家で飼うにもちっちゃすぎ。どこもかしこも汚くて、毛はくしゃくしゃ。溺れさせちまった方がいいに決まってる」
女の子は言いました。
「この子を私にちょうだい! ちっちゃくても、汚くても、くしゃくしゃでもいいの。私はこの子が大好き」
そこで女の子はちびちびイヌを家に連れて帰りました。するとおかみさんがどなり立てました。
「おかゆを作る水がない。井戸に魔法が掛けられた。その子もきっと、あたしらと一緒に喉が渇いて死んじまう」
けれど、ちびちびイヌが吠え立てました。
「ウー!ワン!ワン!
ぼくがここにいる。ぼくがどうにかして見せる」
お百姓が入ってきて言いました。
「羊のところに行かれない。木戸に魔法が掛けられた。キツネが羊を狙ってる。なのに羊のところへ行かれない」
ちびちびイヌが吠え立てました。
「ウー!ワン!ワン!
ぼくがここにいる。ぼくがどうにかして見せる」
息子が入ってきて言いました。
「鶏小屋の戸に魔法が掛けられた。鶏小屋へ入れない。雌鶏が卵を産んでくれない」
ちびちびイヌが吠え立てました。
「ウー!ワン!ワン!
ぼくがここにいる。ぼくがどうにかして見せる」
「お前が?」おかみさんが言いました。ネコよりもちっちゃいくせに?」
「お前が?」お百姓が言いました。「ちっちゃくて、番犬にもなれないくせに?」
「お前が?」息子が言いました。「汚くてくしゃくしゃのくせに?」
けれど、女の子はちびちびイヌをだきしめました。
「お前が! どうにかしてくれるの?」
ちびちびイヌは言いました。
「どうにかして見せる。 して見せるとも」
そうしてちびちびイヌは外へ出て行きました。
「通れやしないよ」牧場の木戸が言いました。
「魔女のナニ婆さんが、おいらに魔法をかけたから、ここんちの者はだあれも通しちゃならないよってね」
「だってぼくは、まだここんちの者じゃないもん!」
そして、木戸を通って行きました。
ちびちびイヌは羊をみんな小屋に入れて、キツネが手を出せないようにしました。
ちびちびイヌは鶏小屋に行きました。
「通れやしないよ」鶏小屋の戸が言いました。
「魔女のナニ婆さんが、あたしに魔法をかけたから。
ここんちの者はだあれも通しちゃならないよってね」
「だってぼくは、まだここんちの者じゃないもん!」と、ちびちびイヌは言いました。
ちびちびイヌは鶏小屋に入りめんどりたちに餌をやり、小屋に落ち着かせました。
「水を汲んできて上げる。だからみんな、ぼくに一つずつ卵を産んでおくれ」
ちびちびイヌは井戸に行きました。
「水は汲めないぞ」と、井戸が言いました。
「魔女のナニ婆さんが、わしに魔法をかけたから。
このうちの者はだあれも水が汲めないように」
「だってぼくは、まだここんちの者じゃないもん」と、ちびちびイヌは言いました。
そして、ちびちびイヌは水を汲みました。
そこでおかみさんは夕食に、おかゆを作ることができました。
「なんてすごいちびちびイヌ!」と、女の子は言いました。
「もううちで飼っても良いでしょう?」
「まだ仕事が済んでない」と、ちびちびイヌは言いました。
ちょうどその時、魔女のナニ婆さんがやってきました。
「行かせて!行かせて!、あいつをやっつけに行かせて!」
そこでみんなはちびちびイヌを外に出してやりました。
魔女のナニ婆さんはやってくると、家の周りを時計の針と反対回りに歩き始めました。
「時計の針と反対回りの魔法はよおくきくのさ」魔女のナニ婆さんはヒャッヒャッと笑いながら言いました。
「ウー!ワン!ワン!。お前の魔法はきかないぞ。」と、ちびちびイヌはどなりました。
「お前の後について歩いて、お前の足跡をみんな消してやったんだ」
「なにをやったんだって?」魔女のナニ婆さんは金切り声を上げました。そしてくるっと勢いよく振り向いたので箒を落としてしまいました。
「ウー!ワン!ワン! こりゃあ良いことをしてくれた」と、ちびちびイヌは箒をまたいで立ちました。
箒がないと、魔女のナニ婆さんは、うまく魔法が掛けられません。
「しっ!しっ!」っと言うことしかできませんでした。
「ウー!ワン!ワン!」
ちびちびイヌは吠え立てました。
「ぼくはネコなんかじゃない、しっ!しっ!と言うのはやめとくれ。
吠えるのも噛み付くのも得意なのさ」
そしてちびちびイヌは咬みつき吠えつき、吠えつき咬みつきました。
とうとう魔女のナニ婆さんは転がるように駆け出して、道の向こうへ逃げて行きました。
そしてそれから二度とここへは戻って来ませんでした。
女の子はちびちびイヌを抱きしめて、ずっとここにいなくちゃダメと言いました。
けれどちびちびイヌは言いました。
「だって、ぼくはここの犬じゃないもの」
「いいや」と、みんなは言いました。
「お前はうちの犬だよ」
「だってぼくは汚くてくしゃくしゃだよ」
「うちの飼い猫もそうだよ」と、おかみさんは言いました。
「でもみんなはあの子が大好きさ」
「だってぼくはこんなにちっちゃいよ」
「でもお前は良い歯をしている」と、お百姓が言いました。
「ぼくの尻尾を引っ張らない?
ぼくにものをぶつけない?
ぼくが寝ている時に、踏んづけない?」
「しない!しない!しない!」みんなが大きな声で言いました。
女の子がミルクのお皿を持って来ました。
ちびちびイヌは、ミルクを全部きれいに舐めてしまうと、ぐるっと周りを見渡しました。
「ここがぼくにぴったり」
ちびちびイヌはお百姓のスリッパの片方にもぐりこんでくるっと寝返りを打ちました。
そうしてぐっすり眠りこみました。(8月に児童館で語るお話。小さい子の部)
台風が来ている地方の皆様、どうぞお気をつけて。
気圧が下がったせいか、私の膝は痛むので座り込んで、民話を自分流にして打ち込んでいました。
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