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北軽井沢 虹の街 爽やかな風
感動する心は清く美しい
2017年01月10日
テーマ:テーマ無し
祖母は一つの特技(?)を持っていた。現在ではスピーカーで「焼きいも〜」という声を流しながらやってくる焼きいも屋さんだが、以前はリヤカーをひきながら「ピーッ」という音だけで売り歩いており、私たちは「ぴーも屋さん」と呼んでいた。一日に幾度となく聞こえてくるその音の中から、祖母は見事にSさんの音を聞き当ててしまうのである。
時間が決まっているわけでも、特別な音でもないのに・・である。Sさんの「ピーッ」が聞こえてくると、すかさず祖母は私の掌に百円玉を五枚のせた。走って通りに出ると、ニコニコしたいつもの顔があり、「お嬢ちゃんありがとうね、おばあちゃんは元気かい」と話しかけながら、必ず一本おまけ付きで手渡してくれた。それにしてもどうやって聞き分けられるのか、ある日私は叔母に、真顔で「おばあちゃんは魔法使いなの?」と問いかけた。すると叔母は、祖母が教師をしていた頃の話をしてくれたのである。
当時、教え子たちはとても貧しい暮らしぶりであった。中でも受け持ちのクラスの中に、とりわけ貧しい少年がいた。父親が病に倒れ母親が女手一つで家計を支えていたという家庭に生まれしその少年の鉛筆は、いつもやっと握れるほどに小さかった。そしていよいよ明日はもう使えまいと思った日の翌日の朝、彼の机の中にはいつも、きれいに削られた新しい鉛筆が三本揃えてあった。それは少年が卒業する時まで続けられた。
卒業式の日、その少年は祖母の前に立ち、目にはたくさんの涙をためて、深々と頭を下げた。「先生、先生のご恩は死ぬまで忘れません。先生のおかげで学校に通うことができました。本当にありがとうございました」
人知れず、そっと机の中に置かれた鉛筆が、誰の手によってなされていたのか、少年はちゃんとわかっており、二人の心はしっかりと結ばれていたのだ。祖母はその少年の瞳を見たとき「ああ、教師になってよかった」と心の底から思ったという。その少年は、朝起きたとき、床につく前に、必ず祖母の住む方角を向き、手を合わせることを忘れなかったという。たった三本の鉛筆がそれほどまでに少年の心を救っていたのだ。
その話を聞いた、当時小学校二年生の私が、声をあげて泣くものだから叔母がとても驚いたという。元より悲しい時よりも、感動すると泣く子どもだったらしい。
その鉛筆の少年こそがぴーも屋さんのSさんだったのである。祖母は、愛する教え子のピーッの音を、心耳で聞き当てていたに違いない。
鈴木由紀著、「小さな祈り」の中にある「祖母からの贈りもの」よりその一部を抜粋した。
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