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「晴天続く二十日間」 

2016年09月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第153回 2016年8月4日週の兼題は、「胡麻」である。兼題の説明に曰く。

胡麻(秋の季語)「ごま」。ゴマ科の一年生作物。晩夏に花を咲かせた後、9月頃に実が熟し、やがてはじけて中の種子を飛ばす。食用には実がはじける前に刈り採り、束ねて干してから、樽の内側などで叩いてはじけ出た種子を採る。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「胡麻」に対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 人生の過ぎ去る記憶胡麻の粒   並選  津軽わさお  

 歯に胡麻を付けて真顔の社長かな   並選  津軽ちゃう 

 経典に付き随いて胡麻来る  並選  津軽まつ   

 赤飯の胡麻に塩なき津軽かな   並選  篠田ピンク  

 大仏の見遣る願掛け胡麻の数    並選  野々原ラピ

 
 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「胡麻」に対する投稿の入選結果は、言わば、上位210句内の句である、人選の句はなし、並選の5句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。


 
 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。

 胡麻爆ぜて晴天続く二十日間   天選   木好    
      
 実に悩ましい兼題だった「胡麻」です。植物のジャンルに入る季語なんだけど、「胡麻刈る」「胡麻干す」「胡麻叩く」など人事生活のジャンルに入る季語たちと切っても切り離せない。

 実際に様々な歳時記を調べてみると、植物「胡麻」の例句として「胡麻刈る」「胡麻干す」「胡麻叩く」などの句を収録しているものもあります。

 さらに「胡麻」という食品になってからの「胡麻」は季語としてどこまで機能するのか。「新胡麻」ならば季語の力はありそうな気がするが、「胡麻豆腐」「胡麻油」のように完全に別の食物となっているものはどうなるのか。

 皆さんが疑問に思い、困惑したのと全く同じようにワタクシも大いに困惑しました。

 困ってるだけじゃ話にならないので、私なりのラインを引いてみました。@並選、「人」選までは人事生活としての「胡麻」の句も許容する。A傍題に「新胡麻」があるように、食物としての「胡麻」は季語として尊重する。B「胡麻豆腐」「胡麻油」系の句は、その作品の出来によって選する場合もあるが、基本的には季語としての力は弱いと判断。

 さあ、この基準に従いつつ、悩みに悩んで「天」にいただいたのがこの句です。

 「胡麻爆ぜて」は、炒って爆ぜるではなく、植物として実が熟して爆ぜる状態ですね。胡麻は、茎の下から上へ向かって開花する、その順に実が熟していく。ま、これは当たり前のことですが、下部の実が2〜3個弾けだすと、すぐに刈り取りを始めるのだそうです。

 いよいよ「胡麻」が爆ぜ始めたよ、ここのところ続いている「晴天」が今年の「胡麻」の生育をぐんとよくしてくれたに違いない。「二十日間」の晴天は恵みの天候。さあ、刈り取りを始めるか、という声が聞こえてくるような作品です。

 「胡麻」という植物は、【旱魃に強く、生育後期の乾燥にはたいへん強い】のだそうです。刈り取りが近づいた頃に、雨が多いと生育は悪くなります。

 「晴天二十日間」は「胡麻」にとっては最高のお天気。「胡麻」の花の美しさ、「胡麻」の実の存在感、それらを日々眺めている人だからこその「晴天続く二十日間」という措辞ではないかと思うわけです。

 この「晴天」に感謝をしつつ、今年の収穫を喜びましょう。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

 今回の夏井いつき先生の講評を読み、二つの点で、ショックが大きい。

 まず、第一点は、兼題の「胡麻」について、私たちは、「胡麻」には、「胡麻刈る」「胡麻干す」「胡麻叩く」が当然入るものとして捉えていた。

 そして、季語としての「胡麻」には、「胡麻豆腐」「胡麻油」のように完全に別の食物となっているものも、当然入る。というか、食物として、「胡麻」と「胡麻豆腐」「胡麻油」を区別する発想がなかった。

 今、改めて「角川俳句大歳時記」を見ると、季語の「胡麻」には、「胡麻」のほか、「新胡麻」、「黒胡麻」、「金胡麻」が列記されているのみであることに、驚く始末である。

 次に、第二点は、当り前と言えぱ当り前なのだが、「胡麻」という植物が「旱魃に強く、生育後期の乾燥にはたいへん強い」ことの裏返しとして、「刈り取りが近づいた頃に、雨が多いと生育は悪くな」ることは、まったく知らない。

 したがって、「晴天二十日間」は「胡麻」にとっては最高のお天気、であることも知る由もない。

 そもそも、「胡麻」の花の美しさ、「胡麻」の実の存在感、などはまったく知らないのだ。

 こんなんじゃ、「俳句ポスト365」における俳句作りにおいて、まともに挑戦しているなんて言えるのかな。

 今回、第一点、第二点に係るショックが大きく、脳内がガーン、ガーン、ガーンと鳴るばかりである。



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