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人生日々挑戦
女性アナウンサー・「美しい日本語」
2014年08月20日
テーマ:暮らし
人間、誰しも年が行く。企業社会で活躍していると、いつかは定年を迎える。それは、その人にとって、節目ではあるが、やはり寂しさは禁じ得ない。
定年で寂しさを感じるのは、本人ではあるが、本人以外でも寂しさを感じることがあるものだ。
去る5月31日、スポニチアネックスの配信ニュースがネットで流れた。「TBS吉川美代子アナ 31日で定年退職…若手アナへ“苦言”も」とのタイトル付きだ。配信ニュースは、次のような中身である。
? TBSの吉川美代子アナウンサー(60)が31日、同局を定年退職。
? 1977年、早稲田大学から入社。84年「JNNニュースコープ」平日版のメーンキャスターに就任。女性ニュースキャスターの草分け的存在となった。
? 新人時代は女性が報道を志望すると「女のくせに生意気だ」と怒られたという吉川アナ。「この会社でやっていけるのだろうか」とショックを受けたというが、それでも帰宅時に家までの道のりを実況するなど努力を重ね、28歳で念願の報道の仕事に就いた。
? 「アナウンサーが教える 愛される話し方」の著書もある吉川アナは、美しい日本語を伝えていくため、「最後の砦として局アナがちゃんとしなければいけない」との責任感を告白。
? 最近の若手アナウンサーはインターネット上の評価を気にし過ぎていると指摘し、「2ちゃんねるで自分の評判をチェックしている暇があったら、アナウンサーとしての努力をしてほしい」と日々の勉強を忘れずに技術を磨いてほしいと“苦言”も呈した。
振り返ってみると、TBSのニュース番組で、吉川美代子アナウンサーは、美人で、きりっとしていて、歯切れがいい。教養やスキルの揺るぎなさは、一目瞭然である。彼女の番組は、観ているだけで安心感と心地良さがある。
その吉川美代子アナウンサーが定年を迎えて辞めていく。なんか、いい人たちが、いい人に限って、私たちの目の前から消えていく。寂しい限りである。
スポニチアネックスの配信ニュースの?にあるように、吉川美代子さんは、若手女性アナウンサーに対し、インターネット上の評価を気にする暇があったら、日々の勉強を忘れずに技術を磨いてほしい、と“苦言”を呈している。
彼女は、若手アナウンサー時代、原稿を読み間違うことがないよう細心の注意を払い、重圧で円形脱毛症、胃けいれんに悩まされる日々を送ったという。であるから、若手女性アナウンサーに対する“苦言”には、重みがある。
吉川さんは、ご自分の著書「アナウンサーが教える 愛される話し方」の中で、「女性アナウンサー」と「女子アナ」を峻別し、次のように触れている。
〈わたしはこれまでずっと「女子アナ」ではなく、「女性アナウンサー」としてプライドと自覚を持って仕事をしてきました〉
「女子アナ」については、
〈心ある視聴者にとっては、タレントのようなかっこうをしたり、漢字を読み間違えたり、放送界の環境汚染源といえるかもしれません〉
そして、「女子アナ」をメッタ斬りにする。
〈パパラッチに追い回され、ボーイフレンドとのデートや買い物姿を写真に撮られる。(中略)でも「女子アナ」はめげません。細い脚を誇示するような短いスカートでしゃがむ。公道でキスをする。「女子アナ」はサービス精神旺盛なのでしょうか。これでは、写真週刊誌にねらわれても自業自得と言わざるを得ません〉
吉川美代子さんが、若手女性アナウンサーに対して日々の勉強を怠るなと苦言を呈し、また、「女子アナ」をアナウンサーとは認めない考え方の根底には、彼女の信念がある。
それは、美しい日本語を伝えていくため、最後の砦として局アナウンサーがきちんとしなければならない、という責任感である。
例えば、五七五七七の定型詩である短歌は、日本語のひらがな文化を具現化するものであり、1200年もの歴史を持つ。1200年もの歴史を持つに至ったのは、日本語の美しさと音のリズムの良さに根ざしているからであり、そこに普遍的な価値がある。
吉川さんの信念は、局アナウンサーがそうした美しい日本語を伝えていく最後の砦たらんとする決意だ。その決意がさすがである。
美しい日本語の語り手である女性アナウンサー。彼女らに真っ先に求められるのは、「落ち着き」である。ニュースを伝える場合、朗読する場合、司会をする場合、インタビューする場合、番組紹介をする場合、などなど。いかにも落ち着きがある感じがいい。それによって観る者、聴く者に安心感が湧くからである。
吉川美代子さんのアナウンサーぶりの印象は、まさに「落ち着き」そのものだ。
女性アナウンサーの「落ち着き」を裏付ける要素は、様々あるが、大事なのは、賢さと聡明さである。
吉川美代子さんは、賢さと聡明さを絵にしたような方である。
そして、例えば、朗読の場合は、凛として、朗々とした朗読ぶりがいい。そこには空気が張り詰めるかのような緊張感が漂う。その緊張感が心地良い。
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