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「流星ひとつ」沢木耕太郎の「藤圭子」インタビュー 

2013年11月26日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


土、日、月
三日間もアメブロがつながらなかった。
アメブロどころか、アメーバーニュースも、とにかく関連サイトがまったくだめ
になった。
『いったい どうなっているのか?』

ものすごくやきもきして、InternetExplorerのバージョンをあげてみたり、
使っているウィルスソフトを疑ってみたりと・・・・・・・
まあ、あれこれいじって、疑って、あわてて、  やれ・・・・・本当に忙しかった。

と、いうわけで本日ようやくつながりを確認できたところで、長年、待ち続けた
沢木耕太郎の本に関して。
   
               

沢木耕太郎の本になっていない原稿があるというのは前々から知っていた。それ
は、藤圭子へのインタビューで構成した長編ノンフィクションで、取材は33年前に
行われた。
実は書いているうちに恋愛関係になってしまい、その原稿を沢木耕太郎は封印した
と今は廃刊してしまった「噂の真相」という雑誌に書かれていた。

その長編ノンフィクション「流星ひとつ」は、10月11日、新潮社から緊急出版された。
34年ぶりに世に出す事に至った。
『流星ひとつ』の本のあとがきに、「後記」というタイトルで書かれている” 出版しな
かった理由”は、”藤圭子との恋愛うんぬん”とは根本的に意味が異なる。
このように書かれている。

藤圭子が『引退」するという理由はわかった。それが並の決意でないことも理解でき
た。とはいえ、これから先、どういう理由で芸能界に「復帰」せざるを得なくなるかわ
からない。私が一年間を海外で過ごし、しかし、やはり日本に戻ってふたたびノンフィ
クションを書きはじめることになったように、藤圭子も芸能界に戻って歌うようになら
ないとも限らない。
そのとき、この『インタビュー』が枷(かせ)にならないだろうか。 

            (中略)

要するに、これから新しい人生を切り拓いていこうとしている藤圭子にとって、この
作品は邪魔にしかならないのではないか、と思ってしまったのだ。」
その封印した原稿をふたたび出版しようとしたきっかけは何だったのか?
藤圭子の突然の「謎の死」が、「精神を病み、永年奇矯な行動を繰り返したあげくの
投身自殺」という説明で簡単に理解されていくのが彼は忍びなかったと書いている。

● 一流のインタヴュアーとは
ところで、その『流星ひとつ』という本の内容。
藤圭子は冒頭で「インタビューなんて馬鹿バカばかしいだけ」と語る。
さらに、「この人には、自分のことが、もしかしたらわかってもらえるかもしれない、な
んて思って真剣にしゃべろうとすると、もう記事のタイトルも決まっていて、ただあた
しと会ってたことだけが必要だったるすすんだよね。あたしがどんなことをしゃべって
も関係ないんだ、その人には」

それに対して、沢木は、「インタビューというのは、そんなつまらないものじゃないと
思う。」と、反論。「すぐれたインタヴュアーは、相手さえ知らなかったことをしゃべって
もらうんですよ」

藤圭子は「知らない事なんかしゃべれないよ」
まあ、もっともな感想だが、その意味について、沢木は丁寧に説明する。

「知らなかったこと、というと少し言いすぎになるかな。意識してなかったこと、と言え
ばいいかもしれない。普通の会話をしていても、弾みで思いもよらなかったことを口に
してることがあるじゃない、よく。でも、しゃべったあとで、そうか、自分はこんなことを
考えていたのか、なんてひとりで納得したりする。

そういうことなんだ、知らなかったことをしゃべらせるっていうのは。相手がしゃべろう
と用意していた答え以外の答えを誘い出す。そういった質問をし、そういった答えを
引き出せなければ、一流のインタヴュアーとは言えないと思うな」

● 歌詞を観たときは・・・・震えた
インタビューの中で藤圭子は歌詞に関して、とても興味深いことを語っている。
     
藤圭子が汚いテーブルの上にポンとのっていたザラ紙に走り書きされていた
石坂まさをの歌詞を見た時にすばらしいと思ったのがこちら。

    女ですもの 恋をする
     女ですもの 夢に酔う
     女ですもの ただ一人
    女ですもの 生きていく

「初めてこの歌詞を観たときは・・・・震えたね。すごいと思った。衝撃的だったよ。」
誰が歌うんだろう、と思ったら自分の歌だったという。
これは「女のブルース」というタイトルの歌詞だが、三番目の歌詞について、沢木が
感想を言い、それに補足する藤圭子の言葉に感性のきらめきを感じる。
「三番の歌詞がいいんだよね。
    
    ここは東京 ネオン町
    ここは東京 なみだ町
    ここは東京 なにもかも
     ここは東京 嘘の町

実に単純な言葉を繰り返し使っているだけなのに、少しずつ情感が盛り上がって
いく。演歌の歌詞って、不思議な力があるね」
「ここは東京、なんて当たり前の歌詞が、みんな味が違うんだよね、歌にすると。
四つが四つ違うんだ。あたし、これを歌うとき、聞いている人に、四つの東京を見せる
ことができる、と思ったもん。思わない?なんで、ここは東京、という言葉が四回出て
くるだけで、こんなドラマになるんだろう、って。沢木さん、思わない?」

● スペインの居酒屋でのじいさん
僕が今まで読んだ芸能人に対するインタビューで、こんなに心に残った内容はない。
実に充実した一冊だ。藤圭子のイメージがこの本で変わってくる。
さらには、沢木耕太郎の語りの魅力もある。彼のスペインで見たワインのグラス売り
をしてくれる居酒屋の話し。

カウンターの横に潮にやけたいい肌の色をしたじいさんがいて、大きなザルを前に
して立っている。大きなハマグリがいっぱいはいっていて、じいさんに五ペセタ渡す
と、ハマグリの貝を小刀でこじあけ、中身を三つに切って、サッとレモンをかけて渡し
てくれる。生で食べるという。

藤圭子が「日本の刺身みたいに?」と問いかける。
「そう。それだけなんだけど、おいしいんだ、新鮮で。じいさんは、その間、ひとことも
しゃべらないんだけど、その手際のいいこと、レモンを絞る感じが、なんともいえず粋
なんだ。ガキッとこじあけ、ブツンブツンと切り、シュッと絞って、スッと差し出す・・・・・・・」
藤圭子は、「いいなあ!」「とっても行ってみたいよ。行って、自分の眼でたしかめて
みたい」 と語る。

そして、本の終わりのほうでこのエピソードに対する沢木耕太郎と藤圭子の心のふれ
あいを示す語りがあり、それがとても心に残った。

「さっき、スペインのマラガの話をしたでしょ。そのとき、あなたは、すごく素直に反応
してくれたよね。それでぼくは思うことができた。この人には言葉が通じる、ぼくの言葉
が通じるって。あなたの反応に、少し感動したんだよね」

「そうか、あのときだね。いままで、あんな話をしてくれる人はいなかったんだ。外国
の話といえば、どこでヴィトンを買ったとか、そんなのばっかし。 マラガの居酒屋の
話、あたしにはすごく面白かったんだ」

最後に、藤圭子がこのインタビューの成功を祝して乾杯しようとすると、沢木が
「いや・・・・・・・このインタビューは失敗しているような気がする」と語る。
これには、どれだけ自分の仕事に対して厳しい人なのだという感嘆すら覚えてし
まった。もしくは、こう語った時に、既にこの作品を封印しなければならないと、どこ
かでは感じていたのだろうか。

何はともあれ、30年以上眠っていた、幻の作品を読めた事と、さらにはそれがとても
すばらしい本であった事に、沢木耕太郎に感謝したい。

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