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人生日々挑戦
「バッタソフトの怪」
2013年11月01日
テーマ:暮らし
大阪弁についてネットで検索していたら、ひょんなことから「関西バッタ会」という言葉に行き着いた。
「関西バッタ会」って何だろう、昆虫好きの会、つまり昆虫を育てたり、観賞するのが好きな人々の集りだろうと想像した。これが東北人の常識的な発想である。
あにはからんや、バッタ会とは、バッタを食う会であった。私たちには、昆虫は、その鳴き声を楽しむものであって、虫を食べるという発想は、まったくない。
青森県の津軽半島を走る津軽鉄道は、 ストーブ列車が冬の風物詩として全国的に有名だが、秋には鈴虫列車を走らせる。車内にはスズムシの入った虫かごが設置され、「リィリィリィー リィリィリィー」と涼しげな鳴き声を響かせる。
「関西バッタ会」は、大阪の淀川の河川敷でバッタを取って食べたという。食べ方は、バッタ炒めやバッタの天ぷらを作って食べる。
バッタを炒めると、真っ赤になる。形は別にして、色はエビそっくりだという。食感もエビとしか言いようのない味だとある。
バッタの天ぷらは、バッタの風味や殻の堅さが活かされている味で、これもかなり美味とのこと。
しかし、鈴虫列車というスズムシの鳴き声に風流を感じ取る津軽人には、バッタを取って食うという感覚が理解できない。
先日、ヤフーの「ネタりか」を観ていたら、10月11日のマイナビニュースで 「『ネットのおかげ』で話題のバッタソフト、発売経緯を聞く」という記事に出くわした。
曰く、「長野県の諏訪湖で遊覧船運行などを行っている諏訪湖観光汽船の売店では、イナゴの佃煮をトッピングしたソフトクリーム『バッタソフト』(400円)を販売し、インターネット上などで話題となっている。一体どのような経緯で販売するようになったのか、諏訪湖観光汽船に話を聞いてみた」。
この記事を見て、妙だと直感した。
一つ目は、イナゴの佃煮をトッピングしたソフトクリーム「バッタソフト」という表現についてだ。イナゴの佃煮をトッピングしたのであれば、「バッタソフト」でなく、「イナゴソフト」のはずだ。イナゴとバッタは、名前が違うように、別物だろう。
二つ目は、「バッタソフト」が400円という値段についてだ。
私は、男だから、滅多にソフトクリームを食べることはないが、10年くらい前に、コンビニのミニストップでソフトクリームのバニラを初めて食べた。美味しかった。量もちょうど良かった。値段は、200円くらいだったと思う。
以来、たまに食べるソフトクリームは、300円以下が基準となった。
だから、「バッタソフト」、しかもバッタならぬイナゴのトッピングで、400円という値段は、理解に苦しむ。まるで、買ってもらわないで結構と言わんばかりの400円という値段だ。
バッタソフトの発売経緯については、長野県には、元々昆虫食の文化が根づいており、諏訪湖観光汽船では、他県から来た観光客や修学旅行の学生などに地元の昆虫食文化を知ってもらうため、「バッタソフト」の販売を始めたのだそうだ。
そこで、バッタとイナゴの件だ。子どもの頃の記憶をたどれば、確かに、バッタとイナゴは違うが、どことどこがどう違うのか。
ネットで調べた。調べていくと、やたらに「イナゴの佃煮」という項目が出てくるが、「バッタの佃煮」という項目は出てこない。なぜなのか。
イナゴは、バッタの仲間だそうだ。バッタといっても、しょうりょうばった、とのさまばった、おんぶバッタなどの種類があり、そのうちの一つがイナゴだ。
イナゴは長距離飛行が可能だが、バッタは飛んでも10mくらいだ。長距離飛行ができるイナゴは、体は軽く、比較的柔らかい。体が軽く、比較的柔らかいため、イナゴの佃煮は美味い。
一方、バッタは逆で、バッタの頭や足は硬く、はらわたがまずい。だから、バッタは食べれない。
ちなみに、イナゴは、漢字で書けば、稲子と表現されるように、稲の葉を食べるので、「害虫」である。
イナゴは大量発生もしやすく、ひとたび大量発生すると稲が全滅する危険があるため、昆虫食文化のあるところでは、主食である稲を守るのと同時に動物性たんぱく源としてイナゴを食する。
なお、田んぼにいるイナゴ以外に、川原の草地や草原にいるイナゴは、イネ科植物を食べるという。
諏訪湖観光汽船の売店では、イナゴの佃煮が突き刺さったソフトクリームを、確かに「バッタソフト」と銘打って売っている。
昆虫食が伝統文化だと自慢げにしている長野県民が、イナゴの佃煮は美味いがバッタはまずくて食えたものではないということを知らないはずがない。
いや、待てよ。イナゴの佃煮をトッピングしたソフトクリーム「バッタソフト」と称しているわけだから、イナゴとバッタの違いは区分けしている。
ネットで諏訪湖観光汽船の売店の看板を見ると、「イナゴの佃煮をトッピング、バッタソフト、衝撃の400円」とある。
ということは、「イナゴソフト」と称すべきことは分かったうえで、「バッタソフト」と称していることになる。およらく、「バッタソフト」のネーミングの方がインパクトがあるとみたのだろう。
それから、400円という値段が衝撃的であることについては、諏訪湖観光汽船の売店は自覚している。
要するに、わざと、「バッタソフト」と名づけ、400円という衝撃の値段をつけたということだ。
10月11日のマイナビニュースの記事は、次のようにまとめられている。
? 昆虫食という伝統文化を知ってもらうのが目的だから、諏訪湖観光汽船は、「バッタソフト」を実際に食べてもらわなくても、「バッタソフト」の写真を見て騒いでもらうだけで良かった。
? 「バッタソフト」は、当初、売店のメニューには載せず、写真付きの看板を設置したのみだった。テレビや新聞で取り上げられて注目されたこともあるが、長続きしなかった。
? 今のように「バッタソフト」の知名度が上がったのは、ネットで話題になってからである。
? 購買層は、おもしろがって購入してくれる若者を想定していたが、老若男女の幅広い層が購入している。平均して1日に10個程度が売れており、多い日には20個売れることもある。
こうした経緯を知ると、げにネットの力の恐ろしさよである。
そして、もう一つ。「関西バッタ会」が炒めものや天ぷらを作って食べたのは、バッタなのかイナゴなのか。
彼らは、バッタの炒めものの食感はエビとしか言いようのない味で、天ぷらは、バッタの風味や殻の堅さが活かされている味で、これもかなり美味だと言っている。
しかし、昆虫食が伝統文化だと自慢げにしている人々は、イナゴの佃煮は美味いが、バッタはまずくて食えたものではないと言う。
もし、「関西バッタ会」が食べたのがバッタだとすれば、バッタは、佃煮ではまずくて食えたものではないが、バッタ炒めとバッタの天ぷらでは美味しいという新発見になる。
か、昆虫食が伝統文化だと自慢げにしている人々には、まずくて食えたものではないバッタだが、関西の人には美味だということになる。
さて、どっちだろう。
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