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心 どまり

刀が泣く 

2013年06月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:回想

『山椒の香り』の続きです。

 食後のコーヒーを淹れているとkが、
「ところで、お父上の『刀』どうした?」

『お父上』は父のニックネーム(あだな)の様なものです。

「目黒の義伯父(骨董商)」に引き取って貰らったみたいよ!
 詳しい事は聞いていないけど、母のお小遣い位には成ったん じゃあないかしら!何振りか持って行きなさいと言われたんだけど、手続きも面倒だし、手入れも出来ないしね!
 模造刀だけど、父の気に入っていた一振りは貰って来たのよ!」

 鞘と柄(つか)が白木の実用刀の様な重みのある『その刀』は、柄(つか)を握ると良く手に馴染み、『大乱れ』の波紋は身震いするほど怪しい美しさを放っています。
手入れをしていないので輝きは鈍っていますが、怪しさは衰えていません。

 「子供の俺達から見ても、お父上の『刀』を手入れしている姿や振っている姿は格好良かったよなあ!」

 確かに娘の私から見ても、床の間の前に正座し、打ち粉で刀身をポンポンと叩いたり、奉書紙で刀身を拭い取るなど『刀』を手入れしている姿は、凛としていて惚れ惚れしました。

 『白木の刀』を出して来てKに手渡すと、Kは
「重いね〜!」

と言いながら、しばらく見入っていましたが、突然ぽつりと

「刀って、泣くんだよ!」
「エッ!どういう事?」

 当地は、築城から明治維新の廃城令により壊されるまで、約四百年程続いた城下町です。
因みに、私の実家の住所は○〇市本城(もとしろ)町でした。
現在は、市町村統合で変わりましたが・・・
Kの家は当時から旅館を営み、現在もビジネスホテルを経営しております。

 当時 宿代が足りないお侍さんは、代わりに『本差(大刀)』や『脇差(小刀)』を置いて行ったそうです。
Kの家には、そうして置いておかれた『刀』が、桐の箪笥に終い置かれ、三棹も有ったそうです。

 理由は解りませんが、その『刀』が深夜『カタカタ・カタカタ』と・・・。

Kのお婆様は、
「刀が泣いとる!」

と言いながら、手を合わせていたそうです。
Kの奥さんも、初めて聞いた話らしく、

「その『刀』どうしたの?」
「お婆様が亡くなる前に、家族の負担に成るからと、供養して貰い、処分したらしいよ!」

 帰り際、Kの奥さんが
「また 寄せて貰っても宜しいかしら?」
「いつでもどうぞ!」

 豪華に装飾された『飾り刀』や『舞刀』もいいですが、名刀『鬼の包丁』(フォト掲載)や『鶴姫一文字』の様に、シンプルな『刀』が好きです。

『白木の刀』をしみじみ眺めながら、『手入れ道具』を買って来ようかなと思いました。



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魅入られる

さん

おはようございます。

以前、明治神宮の宝物館で日本刀の刀身を見ました。
光る刃を見ていたら何だか吸い込まれるような気がして身震いした事を覚えています。

あの刀は人の血を吸ったのでしょうか?

居合などは見ていると凄味と美しさを感じます。
時代劇などで刀の手入れは縁側で無造作にやられている事もありますが、本当は床の間の前でもっと厳かな緊張感に溢れた時間だったのかもしれませんね?

2013/06/18 10:08:39

お早うございます。

さん

お父さんも日本刀が好きだったらしいですね。
私も大好きです、居合の稽古では模造刀を使い、藁束を斬るときは本身を使っておりました。
刀が夜泣きすることは私も聞いており、一般的に人を斬った刀が血が恋しくて、鍔がカタカタと動き音がするそうです。
幸い私の刀は音ひとつださず眠っています(笑)
それからお飾りの模造刀の手入れですが、お近くのホームセンターで「刃物御手入油」をお求めになりティシュに少量塗布し刀身を拭くと本身のような輝きが戻ります。若しくはお手元のミシン油でも結構ですよ。お試しください。

2013/06/18 09:11:49

ふ〜っとためいきを・・・

さん

良香さん、おはようございます。

読み終えて、ふ〜っとためいきをついてしまいました。
すごい話ですね。ちょっとシビれました。

良く映画なんかで、床の間の前に正座し、口に懐紙をくわえながら、打ち粉で刀身をポンポンと叩いたあと、口にくわえていた紙で刀身を拭い取るシーンがありますが、実際に目の前で見るとかっこいいでしょうね。
子どもの頃、映画を見ながら「何で紙を口にくわえているの・・・」と聞いたことがありますが、あれは息を吹きかけ無いためらしいですね。

お父様の凛とした姿が目に映るようです。

2013/06/18 07:10:24

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