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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(59) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(59)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/22 09:34:57

+++思いやりと優しさがあって、教えてくれる社長
さんも楽しそうに見えたわ」
 後日女は私へそう報告して、「お父さん」を大いに
妬かせた。

59/70.図星

 そんな作戦と並行して、女は社内にこんな噂を撒
いた:「遅くなってアパートに帰っても、缶詰で一人
侘しく食事を作るんだけどーーー、ちっとも美味しく
ないわ。義務みたいにエサを詰め込むだけよーーー」
 
 仲良くなっていた中年の女事務員が気の毒がって、
一度夕食をおごってくれた。これは予定外の便利な副
作用であったが、いずれにしても小さな会社だから、
先の噂は直ぐに社長の耳へも届いた。

 居残り残業で遅くなった日は、決して高い店では無
かったが、駅前のこ綺麗な処で、社長が時々晩御飯を
ご馳走してくれるようになった。私は女へ知恵を付
けた:
「三回に一度は、夕食をご馳走して貰った店から出る
と直ぐに、買い物があると言って、近くのケーキ屋に
寄るんだよ。社長も同道させて、ショートケーキを三
つ買うんだ」
「ーーーー?」

「必ず自分の金で、買わなくちゃいけないよ」
 相手がお金に不自由しない上司であっても、ご馳走
のなり放しは良くないのだと教えた。既に中年の女事
務員から得ていた情報で、社長が母親と同居している
のを知っていたから、ケーキの数を三つにして、手土
産として持たせる事にしたのである:

「そうされて、感動しない男は居ないよ、絶対に。君
の値打ちが三倍に上がるんだ。ケーキ三つで千円なら
安いものさ」
「きょうび、千円じゃ三つも買えないわ」
「馬鹿な! 例え二千円でも自分で払うんだよ、ケチ
ちゃいけない! 投資なんだ、必ず後で元が取れるん
だから」
「素敵なアイデアね。きっとこれは、「お父さん」が
若い時に、彼女から同じ事をされて感激したのよ
ね? エへへのへーーー」 女は図星を指した。

 事はせっかちに早く進み過ぎても失敗する。社内の
他の社員達からの目線を、何時も計算して作戦の展開
を慎重にしていた。周りに妬みが起きたり不自然な印
象を与えないように、気を配ったのである。

 とは言え、恋愛は時間を掛けてだらだら起伏が無い
のはもっと良い事ではない。他人(ひと)にかっさら
われる事にもなる。恋愛には旬があり、待っているだ
けでは実るものも立ち消えになってしまう。女側から
のモーションも必要:

 夕飯を馳走になる礼だと言って、三ケ月目に女は自
分が出演するダンスの公演会のキップを社長へプレゼ
ントした。無論私の場合とは違って、定額の倍で買わ
せたのではなく、特別手配の無料優待券。社長は花束
を抱えて観に来た。

(比呂よし)

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