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作品名 アカンタレの話(43) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(43)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/02/07 09:28:13

+++得た結論は幸せとは「人生に目標など決して持
たない事」と言えそうだ。これが、「社長になる」の
目標を達成した為に、私が得た一つの反動であった。

43/50.同一人物

 反動で目標を失った途端に、それまでの束縛と脅迫
観念から開放されて、私はやっと「本来の(自由な)
自分の姿」へ立ち戻った気がした。里帰りしたような
ものである。そんな目で眺めると、周りの景色が色あ
せて見え始めた。

 確かに私は起業した会社の売上げを伸ばしたし、一
時は税務署から名経営者というお世辞も貰ったし、大
枚をはたいて世間並み以上の家も建てる事が出来た。
けれども、それらはどれも自分が本来目指していたも
のではない気がする。建てた家などは、配偶者へくれ
てやった気持ちの方が大きい。それらはオマケである。

 私は本当は、「社長になる事」以外には、何も余分
に欲しくはなかったからだと思う。ただ、小ニの女の
子の前に立って、「ねえ、ちゃんと僕を見てよ! ア
カンタレではないぞ、判った?」と、証明したかった
だけなのである。

 歩んで来た長かった人生が他人事のように思える。
例えば:一頃は業界で、トップセールスマンとして腕
を鳴らし、人をたぶらかし込んで物を売りつけてい
た。よくまあ、自分に不似合いなそんな事が出来たも
のだーーーと今になって思う。セールスマン当時の自
分と、今の自分が同一人間とは到底思えない。思えな
いのは、自分を偽って生きていたからかも知れない。

 むしろ本来の自分は、休日に会社の倉庫へ降りて、
一人むしむし床のペンキ塗りをするのが好きだし、誰
も居ないしんとした部屋でネジ締めの技術実験を、独
りやるのが趣味でもあるからーーー、そんなネクラな
自分に笑ってしまう。

 基本的に、本来の自分は人に会うのが嫌いで、苦手
である。だのに、トップセールスだったなんて本当に
ホンマかいな、と自分で疑う。再来月には東京でのテ
クノセンターの講習会に出席して、「鋼材の熱処理
技術」の勉強をするのを愉しみにしている。これも独
りである。どう見ても、人を相手のセールスマンとは
言えない。
 
 私の人生は、生来の自分に最も不似合な道を強制的
に歩まされた、という気がしてならない。
(つづく) 

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