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作品名 ウルメの話(2) 評価 評価(1)
タイトル ウルメの話(2)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/11/29 10:49:59

++++それが一つ売れ残っていたのだ。やれ嬉し
や! 横から人に取られまいと思って、素早くその
一袋に飛び付いた。

(2)

 一週間後矢張り会社の帰りに、又用事があってデ
パ地下に寄った。見ると、やっぱり3本入り一袋が
又あるではないか!
 
 先週のものは最後の売れ残りを私が買った筈だっ
たから、明らかに新たに仕入れたもので、それが再
び売れ残ったに違いない。 高知産は値も高い上、特
殊な食材だし、それだけで晩御飯のオカズにはなり
難い。それに、値段が1/10程度の他の産地の安い
のも傍に沢山並べてあるのだから、その中から敢え
て高知産を選ぶのは「通」しか居ない筈である。 そ
んな不審を抱きつつも、再度残り物の一袋を買った。

 後から思えば、滅多に無い事が続いて二度起きた
なら、張られた伏線に私は気付くべきだったのだ。
世の中は危険が一杯で、年寄り向けに何処へワナが
仕掛けられているや、判ったものではないからだ。
 
 なぜなら、その次の週にデパ地下に再び寄った時、
私はついに異変を発見した。 何であれ残り物となれ
ば、相場は大抵一つと決っているのに、今回は二袋
(=6本)もあったからである。

 何かのワナではないか? 用心しいしいさり気な
く辺りを伺ったが、誰も私の方を注目している様子
はない。しかし安心は出来ない、昨今は隠しカメラ
という手もあるからである。何気ない風を装い、素
早く買い物籠に二袋を放り込んで、買い占めた。

 更にその又次の週に売り場に寄った私は、逆上し
掛けた。今度は三袋(=9本)の売れ残りを発見し
たからである。9本でも2千数百円だから、月間の
小遣い5万円の懐具合からすれば、どうって事はな
い。けれども、一日一本食べても9本なら一週間分
以上ある。

 何せ田舎のデパートで、周辺はローンを抱えた新
興の中級住宅地である。 晩ご飯のおかずにならな
いのに、一袋3本1000円に近い干物を買う人が
ザラにいるとは思えない。 かと言って、その方面の
文明が未発達なこの地域に、込み合う程「通」が棲
息している筈はない、これはもう絶対に断定出来る。

 きっと裏に何かあるに違いない、と私は9本のウ
ルメを凝視して流石に怪しんだ。

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