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<心に成功の炎を>43 

2018年05月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:中村天風<心に成功の炎を>

 その時分 まだ佐藤三吉(もと東京帝国大学名誉教授・貴族院議員)がようやく世の中に出たてのころで 佐藤三吉がそれじゃあ一つ先生のお体にメスを入れるということで 解剖した。これだけの大家にどんな癌ができてるかと思ってね。そうしたらね 胃の中にできてたんじゃないんだよ。肋骨の外のところの内側に向けて 摩擦によって生じた死亡瘤。死亡瘤というのは脂肪の塊だよ。それが内側に向けてできてるだけだ。
それはねえ 癌になりゃせんか しょっちゅうこうやって気にっしてたためなんだな。本人が癌だ 癌だ 癌だ 頑として頑強に癌だという。どこまでも胃癌だと思ってるから そうじゃなくて死んじゃって間に合わねえ。
額田と二人でもってね 死骸を見ながら 神経というのは恐ろしいなあと つくづくその時思った。
 どうだい 胸にピーンと来る人いないかい。<私は心臓が弱いから 心臓麻痺で死ぬんじゃなかろうか>とか<血圧が高いが 脳溢血じゃないか>なんてしょっちゅう気にして 神経過敏になっている人がありゃせんか。
一世の大家たる あれだけの偉い医者でさえそういうことになるのも 結局あの人は 患者を見ることは日本一だったけれども 自己陶冶が自分で完全にできなかった。まだ本能心の中にそういうことを気にするよくないものが残っていたんですね。

        *

 だから とにもかくにも 本能心の中の掃除をしなきゃいけないんですよ。
 さあ いよいよ時間がないから方法を教えるが まず第一番に必要なのは すでに教えられたあの三つの方法。観念要素の更改と積極観念の養成と神経反射の調節ね。これはむろん一生懸命やらなきゃだめですぜ。あれはつまり 潜在意識のお掃除なんだから。それと同時に 日常生活における言葉と態度 これも気をつけなきゃだめなんですよ。
 それからもう一つ必要な方法は 低級な欲望や劣等感情情念がヒョイと心の中に発動してきたなと思ったらね ソリロキズムというのをやってもらいたい。日本語に訳すと<つぶやきの自己暗示法>と言いましょうか ソリロキズム。何も口の中でブツブツ出さなくていいんです。それは 心知ったる人の前なら構いませんけれど 知らない人の前で口でブツブツ言うと おかしいなこの人 気でも違ったかなと思われるからね。
 要するに 観念でひとりごとを言えばいいんですよ。それを否定するつぶやきを心の中でやればいいんです。<こんなことに腹が立つか。こんなこと悲しくない。自分はそれより以上すぐれた心の持ち主だ>というふうに 自分自身が一人でつぶやくのを ソリロキズムというんであります。これがまたばかに効き目があるんです。
 終わりにもう一つ 不要残留本能心の整理に非常にいい効果のある方法があります。これは 方法というより心がけかな。それはね ちょっと気のつかないことかもしれないけれど 平素努めて心の中でおこなう想像を積極的なものにするようにする。
 あなた方は普段 何か自分の人生の将来や現在を考えるときに 暗い方面からのみ考えていやしませんか。
 もう体の弱い人なんか ようやく60歳ぐらいまでになるというと 特に夜の寝際にくるらしいな 変な気持ちが。<とても天風先生ほど生きられやしない。こうやって とにかく生きられるのがどのくらいかしら。もうそう長いことはないんじゃないかしらん。なんとなくこのごろ変に体のぐあいも悪いし。ああ おれが死んじゃったら あとどうなるんだろう。女房もまだ若いから 他の亭主をもちゃせんかな。隠しといた貯金 どうなるだろう>とかね<女房に内緒にもった女の子に子供ができてるが・・・>とかね いろんなこと考えちゃう。
 そうすると ついそれは 何事に直面した場合でも 心の中に描く画像といおうかね 描く一つの絵が 薄暗いものになるんだよ。それをやめる。始終 心の想像の花畑は百花繚乱たるものにしなきゃいけないんだよ。それもやはり習慣ですよ。のべつ心がけていると 何事に直面しても 心はしょっちゅう明るいほうからばかり見るようになりうるんだからね。
 だから この前も言ったとおり 人間はね 暇なときがあるんだから たとえ2分でも3分でも そういう時は静かに 気が散らないように目をつぶりながら 自分の楽しめるような 喜ぶような想像を心の銀幕の中に描くということがごく必要なんだ。
 よろしいか。哲学的に考えなきゃいけないんだよ。これは貴重なことなんですぜ。
 たとえよしんば 現実どんな病にかかっていようと どんな悪い運命にいようと 心がそれから離れてる時は それがあるもなきにひとしいということを あなた方は考えなきゃだめなんだよ。
 その証拠には 今日 明日死ぬという病人でも グッと前後も知らず寝てる時は その人はもう重病人じゃありませんよ。感覚的に何にも感じてないんだ。
 いわんやだ 悲惨な境遇の中にいても 自分の気持ちの中に ある時間内だけ晴れやかな気持をもたせりゃあ その時間内だけは晴れやかであったということになるだろう。すべてキャンセルした後のトータルを見てごらん。
 こういう非常に幽玄微妙な哲学的な消息があるということを まず第一番に悟らなきゃだめなんだよ。それが結局 つねに心を積極的にしっかりと保っていく秘訣なんであります。
 やらなきゃだめだよ 心がけ。むづかしいことでも何でもないんだもん。そりゃもう最初のうちは何べんかやり損なうよ。いきなり成功なんて めったにありゃしない。転んだら起きろ 倒れたら立ち上がれというふうに いいか 屈せず 文字どおりたよまずやるんだよ。
 そうすると いつか必ず<ああ なるほど 変わってきたな>という自己歓喜にひたるときが必ずくるから さらに大きな期待と夢と楽しみを胸に描いて 心を研ぎあげなさいよ。

<研心>の篇  第四章 心の正体 、、、、終、、、、


 <研心>の篇 

 第五章 理性心と霊性心 <209頁>



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