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葵から菊へ
創建150周年に揺れる靖国神社。宮司が「創始の理念」を見直し“東軍”(賊軍)も英霊に
2016年10月12日
テーマ:テーマ無し
三年後に創建150周年を迎える靖国神社は様々な記念事業をすすめています。
第11代宮司徳川康久氏は、官軍の戦死者しか祀っていないことに異議を唱え、賊軍と雖もお国の為に闘ったのだから、英霊として合祀すべきである。官軍は西軍、賊軍は東軍と位置づけるべきであると、雑誌や新聞に投稿されています。
・・・・・・・・引用・・・・・・・・・・・・・・・
石原慎太郎元東京都知事と超党派の有志衆院議員が12日、東京・九段北の靖国神社で徳川康久宮司と会い、幕末・明治時代に新政府との争いに敗れて「賊軍」とされた人々を同神社に合祀(ごうし)するよう申し入れた。これに対し、徳川氏は「直ちにそうするとは言えない」と慎重な姿勢を示した。
要請に訪れた議員は自民党の平沢勝栄、民進党の原口一博、無所属の亀井静香の各氏。「賊軍と称された方々も、近代日本のために志を持って行動した」として、旧幕府軍の将兵や西南戦争で敗死した西郷隆盛らの合祀を求める要望書を手渡した。要望書には首相経験者の中曽根康弘、村山富市、福田康夫各氏らも名を連ねている。
亀井氏は同神社で記者団に「世界が相争っている中で、日本が平和を発信していく基本になる」と語った。
・・・・・・・・引用終わり
管理人が共著者となっている『「学び・調べ・考えよう フィールドワーク 靖国神社・遊就館」東京の戦争遺跡を歩く会編』の「第2章 遊就館の展示が語っていること」から抜粋します。
遊就館の展示室?に【靖国神社の創祀】の説明パネルがあります。パネルにはさまざまな説朋力がありますが創建とその性格のの特徴を示す説明はつぎの3点です。
第1の特徴――「戊辰戦争一諸道の招魂祭」
「官軍が江戸に入城して、東征軍大総督は陣没者の招魂祭執行を布告した。参戦各藩には戦没者の名簿を作成して、すみやかに提出するよう示達された。戦没者名簿を作成するということは、のちに靖国神社の祭祀の根本をなすこととなる」
戦没者の祭祀をし、称える儀式を行うには戦没者の名簿の作成が不可欠であるとしています。敵対する軍隊の戦没者は対象になっていません。
第2の特徴――「十一 明治天皇の御親拝」
「明治七年一月二十七日。・・・・戊辰戦争の開戦日を記念とする例大祭に天皇は初めて招魂社に行幸。戊辰戦争戦没者三五八八柱の英霊に親しく御拝あそばされた。・・・・我が国の戦没者慰霊がこの招魂社で、天皇陛下のもとに行われる大原則が示されたのである」
天皇自身が戦没者を「英霊」とする儀式を主宰するということです。
第3の特徴――「十三 東京招魂社から靖国神社へ」
「・・・・軍務官に所属して創立された『招魂社』は『神社』となり、国家の宗祀として、また日本人の祖先崇拝の信仰に基づく、慰霊顕彰の祭祀制度が確立する」
天皇制国家の戦没者にたいする祭祀制度として靖国神社ができたとする脱明です。
日本帝国憲法第3条は、「天皇の神聖不可侵」を規定しています。よって「天皇制国家の戦没者にたいする祭祀制度」である靖国神社を宮司ひとりが「見直す」ことは不可能だと考えられます。展示室?「招魂齋庭」の説明パネルに「・・・戦没者合祀は今に到るまで必ず天皇陛下の叡慮を受けているのである」とあるように、現憲法の下でも「神社の創始」は生き続けています。
『「学び・調べ・考えよう フィールドワーク 靖国神社・遊就館」東京の戦争遺跡を歩く会編』の共著者である東海林次男さんが、宮司徳川康久氏の10月2日東京新聞「ろんだん」欄に対して、9日「ゆうはつ」欄で論考を投稿しています。「靖国神社の真の姿が分かるのは遊就館の展示だ」として展示室?「大東亜戦争1」の展示パネルを引用しています。
「フィールドワーク 靖国神社・遊就館」から展示室12・13・14【大東亜戦争2・3・4】から抜粋
遊就館がとくに力を入れている展示が「大東亜戦争」です。展示室を5つも設けています。「大東亜戦争」は「自存自衛」と「アジアの人びとを欧米列強の支配から解放する」戦いであると政府・軍部は宣伝しましたが、実際はアジアへの侵略戦争でした。
最初の「展示室11」に「日本をめぐる経済情勢」という説明パネルがあります。
このパネルは「……経済活動に不可欠なエネルギー資源、特に石油は、9割を外国に依存し、その7割を米国から輸入していた。そのため、米国からの輸入が途絶えた場合の新たな資源獲得は国家の生存に関わる重大な問題であった」とし、「日本が各国に依存する重要物資」であった鉄類、石油、機械類の1940年当時の輸入国、輸入額比率の円グラフを示して、「ABCD(America、Bitain、China、Dutch)包囲網」が日本の生存を脅かしたと主張しています。この「ABCD包囲網」論は対米英蘭戦に向けて国民を煽るものにもなりました。
つづく「日本がアジアに依存する資淋」のパネルでは、「東南アジアの資源は豊富で、石油や鉄鉱石をはじめ鹿要資源のほとんどを補うことができた。問題は、これらの地域が、英国・オランダの植民地で、米国の勢力圏にあることであった。日本がアジア、特に東南アジアに期待できる資源には、農産物、水産物のほか、以下の鉱産物がある」として、「石油、金属(錫、鉛、亜鉛)、ボーキサイト、石炭、鉄鉱石、マンガン、ゴム、タングステン」などを挙げています。
さらに、北は「満州国」・中華民国から、南はジャワ、チモール、ニューギニアまでを描いたアジアの地図に、それらの地域で産出される各種資源の埋蔵量などを示しています。
たとえば、石油については、「蘭印は東南アジア屈指の石油産地でスマトラのバレンバンだけで年産300万トン、北アチェが100万トン、ボルネオでも170万トン、ジャワでも100万トンを産出し、日本の年間所要量540トンをンを十分に賄うことができたが、石油事業は米英系資本に支配されていた。ビルマも石油輸出国であった」と書いています。
また、アジア太平洋戦争直前の1941年11月201?に決定された「南方占領地行政実施要領」は、日本は東南アジアの占領地に「差し当たり軍政を実施し……重要国防資源の急速獲得及作戦軍の急速獲得及作戦軍の自活確保に資す」とし、さらに資源取得と軍の自活のため民生に重圧がかかっても耐えさせること、「現地土民」に「皇軍に対する信倚(しんい)観念を助長」させ、その独立運動を「過早に誘発」しないことなどを決めていました(藤原形他編『最新資料をもとに徹底検証する昭和20年1945年小学館)。
この展示室に掲げられたパネル説明とアジアの地図は、「大東亜を英米の支配から解放する」といった建前とは異なり、日中戦争にいきづまった日本が資源を求めてアジアに資源を拡大していった背景を告白するものになっています。また、アジアへ資源を求めていく侵略の拡大は必然的に占領地の住民を労働力として動員することになりました。さらに、日本軍の「現地自活」のために膨大な食料を奪うことにもなりました。しかし、そうしたことにはまったくふれていません。インドネシアで約400万人、フィリピンで釣11万人の死者、ベトナムで餓死者約200万人など、日本がアジアで行った戦争で被害をあたえた事実を謙虚に受け止めたいものです。
しかし、遊就館のホールで毎日上映しているドキュメンタリー映画「私たちは忘れない」の女性ナレーターはつぎのように語っています。「ハル・ノートに日本政府は絶望しました!中国大陸こは多くの権益があり、わが同胞も多数生活している!それを残して軍隊・警察を撤退させることはできない!ことに満州には、日清・日露の戦いで多くの将兵の犠牲のもとに収得した合法的な権益がある!それを捨てることはとうていできない!」と。
こうして日本は、中国全土に侵略を拡大するとともに、1941年12月8日、マレー半島コタバルへの奇襲上陸、ハワイ真珠湾攻撃でアジア太平洋戦争へ突き進んだのです。
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