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「鉄人28号」 

2016年08月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第150回 2016年6月23日週の兼題は、「五月雨」である。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「五月雨」に対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 五月雨や馬場に黒毛の尻の湯気   人選  津軽わさお  

 五月雨るる職場帰りの立ち飲み屋   人選  津軽ちゃう    

 五月雨に饅頭けむる中華街  人選  津軽まつ   

 傘叩く五月雨の音ランドセル   並選  篠田ピンク  
 

 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「五月雨」に対する投稿の入選結果は、言わば、人選の3句は、上位210句内の句、並選の1句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。


 
 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。

 五月雨の砂場にヒーロー刺さつたまま   天選  初蒸気    

 
  「五月雨」と「梅雨」、これも似て非なる季語です。どちらも仲夏の天文の季語ですが、【梅雨がその時候を含むのに対して、(五月雨は)雨そのものをさす】と『新日本大歳時記』(講談社)には解説してあります。

 ならば、雨そのものが映像として見えてくるものを、今週の「天」に推そうと考えていたのですが、この句が次第に味わい深く思えてきました。正直なところ、雨の砂場に残された遊具やおもちゃを描いた句はよく見るのですが、述べ方の工夫によってオリジナリティを確保できるのだなあと、その点にも感心しました。

 上五は「五月雨の」と下の語へ続いていきます。「五月雨の砂場に」何がいるのだろうと思ったとたん出てくる「ヒーロー」の一語。子ども同士で「ヒーロー」と呼ばれている子なのか、子ども番組の戦隊モノの「ヒーロー」なのか(ロケでもしているのか)、比喩的意味の「ヒーロー」なのか。

 読み手をささやかに翻弄しつつ、下五「刺さつたまま」という措辞によって、読み手の心は一瞬ドキッとします。「刺」の一字のイメージが不穏な気分を起こすのだろうと思います。が、ちゃんと読めば、玩具の「ヒーロー」であることが分かります。ガンダムのロボット、アンパンマン、仮面ライダー、鉄人28号(古いか〜笑)が、突き刺さったまま「五月雨」に濡れているのです。

  「五月雨」の情緒や雰囲気を裏切る「ヒーロー」という言葉。「刺さつたまま」という即物的表現が「ヒーロー」という存在の孤独を想起させるのでしょう。光景を描写しつつ、寓意を表現しているようにも思えてくるところが、この句の味わい。切れのない型や下五字余りもまた、降り続く雨の気分に似合います。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

  俳句ポストの各回における天の句及び選者の夏井いつき先生の講評については、これまで常に感心し、なるほど、なるほどと、なるほど感一杯で対応してきた。

 しかし、今回の天の句及び選者の夏井いつき先生の講評については、そうかな?と思う。付言しておくのは、いずれにしても、津軽わさおは、自分の俳句作りの勉強の一環として、所見を述べるにすぎないし、他意はない。

 上五は「五月雨の」と下の語へ続いていく。「五月雨の砂場に」何がいるのだろうと思ったとたん出てくる「ヒーロー」の一語。

 
 ここで、読者たる津軽わさおは、ささやかにも翻弄されない。「ヒーロー」は、なんらかのヒーローなんだろう。

 そして、次だ。下五「刺さつたまま」という措辞によって、読者たる津軽わさおは、一瞬ドキッ、としない。「刺」の一字があっても、不穏な気分を起こすことはない。

 で、読者たる津軽わさおには、ちゃんと読まなくとも、玩具の「ヒーロー」であることは分かる。鉄人28号を想起するのは、なんも古くない。

 しかし、鉄人28号が突き刺さったまま「五月雨」に濡れていたとしても、津軽わさおは、へえーっそうなんだ、くらいにしか思わない。

 夏井いつき先生のおっしゃる、「五月雨」の情緒や雰囲気を裏切る「ヒーロー」という言葉、はそのとおりだろう。しかし、「刺さつたまま」という即物的表現が「ヒーロー」という存在の孤独を想起させる、とは思わない。

 「刺さつたまま」という即物的表現が何らかのイメージを想起させるとしても、そこから「ヒーロー」という存在の孤独が思い起こされるというのは、無理だ。それは、思い過ぎだ。

 したがって、以下、「光景を描写しつつ、寓意を表現しているようにも思えてくるところが、この句の味わい。切れのない型や下五字余りもまた、降り続く雨の気分に似合います。」は、そうかな?と思ってしまう。

 考えてみれば、例えば、鉄人28号をめぐる、戦後直後世代の、それも男と女の感性の違いがあるのだろう。

 今回は、これまでとは違った意味で、勉強させていただいた。



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