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「鮓(すし) 」 

2016年05月24日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第144回 2016年3月31日週の兼題は、「鮓(すし) 」である。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「鮓」対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 じょんがらを叩いた手なり飯鮨食う  津軽わさお  人選
  
 鯛鮓や子規の威勢は百人前  津軽まつ  人選

 煮ても焼いても食えぬ小肌が鮨になる  津軽ちゃう 並選  

 馴鮓や馴れて迎える一周年  篠田ピンク  並選
  
 閉校や式典閉じて鮨の膳  野々原ラピ  並選   
 
 

 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「鮓」対する投稿の入選結果は、言わば、人選の2句は、上位210句内の句、並選の3句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。

 
 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。

 龍の息めく鮒鮓の臭気(かざ)なせり  佐藤直哉  天選

 今週の兼題について「鮓」は熟れずし、「鮨」は押し鮨や握り鮨、「寿司」は目出度い当て字という違いが分かってくると、漢字って面白いなあ!と改めて思います。

 夏の季語「鮓」の「天」に推すのは、やはり熟れ鮓を詠んだ句をと考えていたのですが、こんな「鮒鮓」の句を発見! 「臭気(かざ)」という読みがあるのを知りませんで、日本国語大辞典を引いてみました。名詞「香(かざ)」とあり、「お酒の臭気(かざ)がして」という用例も載っていました。「しゅうき」でも「におい」でも、ましてや「かおり」でもない「鮒鮓」の匂いを表現するのに、こんな言葉があったのかと合点致しました。

 「鮒鮓」は琵琶湖を擁する滋賀県の名産。江戸時代以来、主に琵琶湖の固有種ニゴロブナが使われてきましたが、ゲンゴロウブナも使用されているのだそうです。「鮒鮓」の臭いを詠んだ句は沢山ありましたが、「龍の息めく」という比喩が卓抜。その比喩を「臭気(かざ)なせり」という古風な言い回しが受け止め、一種の格調も醸し出します。

 空想上の生き物「龍」ではありますが、その生々しい「息」を想像できるのが俳人たる嗅覚。琵琶湖に潜んでいる「龍」だから、沢山の鮒を食べているに違いない。一気に吸い込まれた鮒たちは、腹の中で長い時間をかけて発酵しているかもしれない。となれば、その「龍の息」もきっと腥いに違いない。琵琶湖へのご挨拶も含めて、二重三重の仕掛けをもって「鮒鮓」という季語を見事に表現した作品です。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

 まず、兼題の説明に曰く。

鮓(夏の季語)「すし」。かつては魚などを発酵させる馴鮓(なれずし)を言ったが、時代と共に現代のような、酢飯に魚介類などを添えるものへと変遷していった。酢が防腐の役目を果たし、また食欲を増進させることから夏の季語になったとされる。

 この説明に照らし、なれずし、つまり馴れ鮓あるいは熟れ鮓として、鮒鮓→鮒鮓の臭気、鮒鮓→琵琶湖の連想は、思いつく。

 しかし、琵琶湖→琵琶湖に潜む龍、龍→龍がたらふく食う鮒→腹の中での発酵→龍の息の生臭さ、龍の息の生臭さと鮒鮓の臭気、といった連想は、なかなか思いつけない。

 そして、極めつけは、「臭気(かざ)」という表現である。龍の息の生臭さと鮒鮓の臭気、の表現としては、「しゅうき」でも「におい」でも、ましてや「かおり」でもない。まさに、臭気(かざ)であり、龍の息めく鮒鮓の、臭気(かざ)である。

 「俳句ポスト365」の選者にして、今をときめく俳人、夏井いつき先生のお使いになる表現をお借りすれば、天の俳句は、どんぴしゃりで、「発想のオリジナリティと描写のリアリティ」に優れ、「上質な詩になっている」、ということであろう。



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