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一等賞
2015年11月29日
テーマ:俳句ポスト投稿
別題 わさおの俳句ポスト投稿・「ねんねこ」
「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトである。その第132回 2015年10月29日週の兼題は、「ねんねこ」だ。
俳句集団「宇宙(そら)」のメンバーによる「ねんねこ」対する投稿の入選結果は、結局、次のとおりである。
津軽まつ 人選
踊り子の楽屋裏なるねんねこよ
津軽わさお 並選
ねんねこで眠る夢見る労働者
津軽ちゃう 並選
ねんねこのお尻もちょがす孫の足
篠田ピンク 並選
ねんねこの綿はぬくいよ花いちもんめ
野々原ラピ 並選
ねんねこは南部裂織紅の色
「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句10句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。
今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「ねんねこ」対する投稿の入選結果は、言わば、人選の1句は、上位211句内の句、並選の4句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の入選句だ。
それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。
ねんねこより初めて見しは荒るる海 雪うさぎ
「ねんねこ」なんて見たこともないという若い人たちもいるはずですが、俳人たちは想像力という武器を使ってこの季語に挑戦してくれました。その一方で、「ねんねこ」を知っている世代(であろうと思われる人たち)の句は、非常に生々しく、やはり体験は強いなあ!と実感した今週でもありました。
さて、「天」に推しましたこの句、たった十七音で人生のドラマが立ち上がってくる作品。さすがだなあ、雪うさぎさん。
「ねんねこ」という季語をつぶやいただけで、背負われている赤ん坊と背負っている人物がそこに存在します。「ねんねこ脱ぐ」「ねんねこ畳む」と動詞を添えない限りは、季語「ねんねこ」は二人の人物が存在することを語っているのです。そんな「ねんねこ」という季語の特性を踏まえて作られたこの作品。
「ねんねこ」という言葉に出会うと、必ず想い出すのがあの日のあの「荒るる海」。母におぶわれた「ねんねこ」の中の記憶は、幼心に刻印されています。初めてやってきた両親の生まれ故郷でしょうか。何かの理由で、両親はこの町を追われたのでしょうか。はたまた、夜逃げ同然にたどりついた未知の町か。「ねんねこ」の中の赤ん坊であるワタクシと、「ねんねこ」の母はこの後、どんな人生を送っていくのか。読み手の想像はどんどん広がっていきます。
「ねんねこ」という季語の成分には、そのあったかさ、幸福感に満ちた匂いなどが内包されているわけですが、この句はそれらの要素を逆手にとりつつ、「ねんねこ」の本意を表現します。「荒るる海」から吹く風の凶暴な冷たさ、不安を募らせる潮の匂い、「ねんねこ」から出ている顔の凍るような冷たさ、「ねんねこ」に包まれた体の暖かさ、母の酸っぱく甘い匂い。たった十七音から、読み手に果てしない物語を感知させる言葉の力を堪能させてもらった作品です。
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