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人生日々挑戦
高橋大輔選手・「プルシェンコ」
2014年06月02日
テーマ:人生
津軽のシニアブロガーは、自分なりに考えたことをブログ記事に書く。そして、ありがたいことに、それに対するコメントを頂戴すれば、それに励まされながら、また考える。
その考えたことをまたブログ記事に書く。そうした循環で、シニア脳は活性化されているようだ。誠にありがたい限りである。
去る5月6日付けで、高橋大輔選手・「世界一美しいフィギュアスケート」とのタイトルでブログ記事を書いて投稿した。
その中に、次のように書いた部分がある。
高橋大輔選手が世界に対して実現して観せたのは、ジャンプで切れ味鋭い4回転等とステップ及びスピンで世界一の芸術性との融合である。これは、世界一美しいフィギュアスケートの実現だ。
こうした世界一美しいフィギュアスケートを創り上げた選手は、高橋大輔選手の前には、男女を通じて誰もいない。
例えば、2006年トリノ五輪女子金メダルの荒川静香選手は、3回転等のジャンプはあるものの、切れ味鋭くはなく、世界トップの芸術性もない。じゃ、なぜ金メダルを獲れたのか。それは、出場選手の顔ぶれなど、運が良かったからである。
運も実力のうちだから、それはそれでいい。
そして、男では、2006年トリノ五輪男子金メダルのロシアのプルシェンコ選手。プルシェンコ選手は、確かに、豪快な4回転等のジャンプは持っている。しかし、ステップ及びスピンでの芸術性は劣る。
だから、2010年バンクーバー五輪銀メダルのプルシェンコ選手は、バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔選手の世界一美しいフィギュアスケートを目の当たりにした時、言いようのない大きな脅威を感じた。
その証拠に、それから後、ソチ五輪後まで、プルシェンコ選手は、羽生結弦選手と浅田真央選手の演技は褒めたが、高橋大輔選手については言及していない(私の記憶では)。
人間、最大の脅威を抱く相手については、言及できないものだ。
なぜか。それは、人間とはそういうものであり、人生とはそういうものだからである。
プルシェンコ選手が高橋大輔選手の世界一美しいフィギュアスケートに最大の脅威を抱いているという部分に関し、ありがたいことに、5月8日、とーますさんから次のようなコメントを頂戴した。とーますさん曰く。
? プルシェンコ選手のこと、同じように感じていました。 バンクーバーまでは「同志」のような扱いで、4回転が論争になったときも高橋選手に対して敬意のある発言をしていました。
? が、その後、コメントしなくなったのを見て「相当こわがっているな」と思いました。高橋選手がすばらしい成績を上げている間もコメントなしの状態が続いたため、これはこわがっている以上に、負けを認めて嫉妬しているのでは、と感じていました。
? 選手というのは、自分にないものをよく知っています。しかし自分に欠けているものを持っている人に、どのように反応するかに、人格が出ると思います。
? ソチで団体戦を観戦した高橋選手は、プルシェンコ選手の演技を見て「素直に感動した」と発言していました。それが、人格においてもプルシェンコの上を行っていると思えて印象深かったです。
とーますさんのコメントを拝見して真っ先に思うのは、とーますさんは長年にわたる大の大ファンであり、高橋選手の紡ぐ人生ドラマを観続けていらっしゃるということだ。
とーますさんのコメントにある「同志」と4回転論争という表現は、高橋大輔選手とプルシェンコ選手に共通するフィギュアスケートの本質を突いている。
そして、これを含め、 とーますさんのコメント全体が大いなる示唆に富んでいることに感謝しなければならない。
彼らは、2010年バンクーバー五輪で、片や銀メダル、こなた銅メダルの好敵手だ。しかも、金メダルを獲得したアメリカのライサチェク選手が4回転を飛ばないというか、飛べないのに対し、高橋選手とプルシェンコ選手は、あくまでも4回転にこだわる。
4回転を飛ばない男子フィギュアなんて、男子フィギュアではない。
これは、高橋選手とプルシェンコ選手に共通する思想であり、彼らにとって、男の美学である。
4回転に挑まないのであれば、男子フィギュアなんてやらなければいい。これが高橋選手の本意だ。
だから、高橋選手は、4回転挑戦から決して逃げない。怪我していても、コンディション不良でも、4回転ジャンプに挑み続ける。失敗しても、手を怪我して流血しても、4回転に挑む。
どんなに辛く苦しくても、決して逃げない。転んでも立ち上がる。手から流血しながらも、4回転ジャンプに跳ぶ。果敢に挑戦するのみだ。
なぜ、そこまでするの? なぜって、それが男子フィギュアだから。
こういうことに関し、高橋大輔選手は口では語らない。しかし、彼のフィギュアスケートが雄弁に語ってくれる。
高橋大輔は、男だ。
そうしたことも含め、プルシェンコ選手は、高橋選手のことを大いに理解し、評価している。
プルシェンコ選手が世界男子フィギュアにおいて果たした最大の功績は、4回転ジャンプだ。彼は、4回転ジャンプを連発で決めることによって、それまでの男子フィギュアを変えた。
それまでの男子フィギュアは、津軽のシニアブロガーに言わせれば、なよなよフィギュアである。男子の体格の良さと女子のしなやかさの違いはあるものの、男子も女子もなよなよフィギュアだ。
しかし、プルシェンコ選手は、それが我慢ならなかった。俺は男だ。彼の4回転ジャンプは、身体が大きいこともあって、力強く、ダイナミックで、豪快だ。4回転ジャンプを飛び、着地する瞬間は、ドスン、ドスンという音が聴こえる。
これに対し、高橋大輔選手の4回転ジャンプを形容すれば、まさに、切れ味鋭い、だ。彼が4回転ジャンプを飛び、着地する瞬間、刀で切る時のシャーッ、という音が聴こえる。
どちらの4回転ジャンプの方がより魅力的かは、議論のあるところだ。人の好みにもよるところである。
だが、いずれにしても、プルシェンコ選手は、4回転ジャンプで世界男子フィギュアを変えた。のみならず、男子フィギュアと女子フィギュアのそれぞれの良さを際立たせることによって、フィギュアそのものを変えたのである。
この系譜をひくのが高橋大輔選手の4回転ジャンプである。
高橋選手のフィギュアスケートが切れ味鋭い4回転ジャンプにとどまるのであれば、彼は、プルシェンコ選手にとって、4回転の「同志」、4回転論争の「同志」だ。というか、4回転の「同志」にすぎないというべきであろう。
しかし、我が高橋大輔選手は、切れ味鋭い4回転でプルシェンコ選手のドスンドスン4回転に対抗し、どっちが勝つか分からないほどの好勝負に持ち込んだだけではない。
高橋選手は、4回転を飛ばない男子フィギュアなんて、男子フィギュアではないと思っている。が、同時に、4回転を飛ぶだけの男子フィギュアではいけないとも思っている。
フィギュアスケートは、観客に観てもらうものだから、男子フィギュアといえども、観て楽しんでもらう価値のあるものでなければならない。
そこで、切れ味鋭い4回転ジャンプと共に、高橋選手が追い求めたものは、ステップ及びスピンによる芸術性だ。芸術性、換言すれば、美である。
なぜ、高橋選手はそう思ったか。それは、彼が日本人だからである。古来、日本人は、潔さとともに美を追求してきた。
切れ味鋭い日本刀のごときシャーッの4回転。あでやかに舞うがごときステップ及びスピン。高橋選手が日本人だからこそ、できる業である。
確かに、プルシェンコ選手のドスンドスン4回転は、力強く、ダイナミックで、豪快で、素晴らしい。しかし、ステップ及びスピンの芸術性では、高橋選手の敵ではない。
高橋選手が世界に対して実現して観せたのは、ジャンプで切れ味鋭い4回転等とステップ及びスピンで世界一の芸術性との融合である。これは、世界一美しいフィギュアスケートだ。
このことによって、高橋選手は、それまでの男女を通じてのフィギュアスケートそのものを変えた。そのようにした革命的存在。それが高橋大輔選手である。
ゆえに、2010年バンクーバー五輪銀メダルのプルシェンコ選手は、バンクーバーで高橋大輔選手の世界一美しいフィギュアスケートを目の当たりにした時、言いようのない大きな脅威を感じた。
勝負にタラレバはない。が、それでも、怪我さえなければ、と思ってしまう。バンクーバー直前の怪我がなかったら、バンクーバーの実際時よりも切れ味鋭い日本刀のごときシャーッの4回転とあでやかに舞うがごときステップ及びスピンで、金メダル獲得。
そして、ソチ五輪代表選考会直前の二度目の怪我さえなければ、切れ味鋭い日本刀のごときシャーッの4回転とあでやかに舞うがごときステップ及びスピンで、金メダル獲得。
見果てぬ夢を、と笑う者は、笑え。
プルシェンコ選手は、高橋選手のことを大いに理解し、評価しながら、彼について言及しないでいる。
人間、最大の脅威を抱く相手については、言及できないものだから。
しかし、いつの日にか、プルシェンコが高橋大輔について言及する日はきっとくる。
かつて4回転ジャンプの連発で世界フィギュア界を変えたプルシェンコは、その世界フィギュア界を更に世界一美しいフィギュアスケートで変えた高橋大輔の偉大さを、一番分かっているのだから。
世界は、回る。時代は、回る。フィギュアスケートのように。
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