お気に入りのストーリーが映画に!?時間や場所を選ばず“無料”で遊びませんか?
掲載日:2021年10月11日

お気に入りのストーリーが映画に!?時間や場所を選ばず“無料”で遊びませんか?

ちょっとした気分転換のための遊びです。

いま読んでいる本や気に入っている物語に、勝手にキャスティングして、舞台美術を想像して、演出してみるという遊び。頭の中で完結する遊びなので“製作費”は0円。電車での移動中、料理中、お風呂の中、どこででもできる遊びです!

最近、私の“勝手に映画化”の対象になっているのは、和田誠さんの「銀座界隈ドキドキの日々」(文春文庫)です。週刊文春の表紙を約40年描き続けたイラストレーターで、『麻雀放浪記』(1984)、『快盗ルビイ』(1988)など映画監督でもある和田さん。奥様は、料理愛好家・シャンソン歌手の平野レミさんです。

多摩美術大学在学中に、『夜のマルグリット』のポスターで日本宣伝美術会賞を受賞し、1959年に広告制作プロダクション「ライトパブリシティ」にデザイナーとして入社。

和田さんが入社した当時のライトパブリシティでは、若き日のコピーライターの土屋耕一やアートディレクターの秋山晶、細谷巌、田中一光、浅葉克己、和田誠、カメラマンの篠山紀信や坂田栄一郎ら、今を時めくアーティストの皆さまが活躍する、クリエイター志望の若者の憧れの会社でした。「銀座界隈ドキドキの日々」には、そんな若きアーティストたちが、銀座を舞台にそれぞれを磨き合う様子が描かれています。

私が気に入っているエピソードは、著名な写真家アーヴィング・ペンがライトパブリシティに訪ねてきたときの話。『ヴォーグ』などで活躍したアーヴィング・ペンの作品では花を映した写真が有名です。

ちゃっかりアーヴィングの写真集を持ってきていた篠山紀信さんはサインをねだりました。アーヴィングから名前を聞かれた篠山さんは、それまで一度もそんなふうに名乗ったことがないのに、「キシン・シノヤマです」と答えたのだそう。いまでは誰もが“シノヤマ・キシン”と呼びますが、たぶんこれが紀信(みちのぶ)からKISHINになった瞬間。和田さんは「シノ(篠山さん)はきっと有名になる」と思ったそうです。

ちなみにアーヴィング・ペンの弟は、『俺たちに明日はない』(1967)などで知られる映画監督のアーサー・ペン。ほかの方は気づかなかったのに、映画好きな和田さんはすぐにピンときたそうです。

私の妄想はこんな感じ。ライトパブリシティ時代と、フリーになって平野レミさんと恋に落ちる物語を交互に描く。

配役は、篠山紀信役に濱田岳、細谷巌役に鈴木亮平、横尾忠則役に山田孝之、立木義浩役に向井康二、八木正生役に佐藤健、寺山修司役に染谷将太、永六輔役に若林時英、久米宏役に松坂桃李、平野レミ役に上野樹里、そして和田誠役に大野智を考えている。

考えている……と言い切りましたが、あくまで妄想の話です。昔、こういう遊びを『キネマ旬報』で赤瀬川原平さんや橋本治さんが連載していたのが楽しかったので、やってみました。

皆さんともぜひこういう遊びをしてみたいのですが、今度ご一緒にいかがですか?

*10月9日から東京オペラシティ アートギャラリーにて「和田誠」展が開催されています。幼少期から晩年までの作品を様々なジャンルでそろえた展覧会ですので、和田さんに興味を持たれた方はぜひ足をお運びください。<詳細
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関口裕子 プロフィール

「キネマ旬報」、エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長を経て、フリーランスに。執筆、編集、コンサルタントとして活動中。趣味は、歴史散歩。

スタッフのつぶやき

いかがでしたか?
私も早速現在ハマっているマンガにキャスティングをしてみました。
でも、いざ、役に当てはめようとするとなかなか難しいもの。
「〇〇の感じがちょっと違うんだよなぁ」と試行錯誤を繰り返し、気がつくとあっという間に時間が過ぎていました。
これまで小説の実写化などがされると「うーん、ちょっとイメージと違うなぁ」と思ってしまうこともあったのですが、同じ登場人物をみても人それぞれイメージは違うもの。
今回、それを実感するとともに、その面白さに気づかされました!

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関口裕子の LIFE is シネマ




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