衛星劇場 presents 歌舞伎役者 松本幸四郎さん インタビュー

衛星劇場 presents 歌舞伎役者 松本幸四郎さん インタビュー

こんにちは!ナビトモ事務局です!
今回の「こちらナビトモ情報局」は、CS衛星劇場で7月31日(土)に放送される『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』に出演された松本幸四郎さんのインタビューをお届け!

三谷幸喜が作・演出を手掛け2019年に上演された『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』。
ロシアに漂流した大黒屋光太夫率いる船乗りたちの波乱万丈の人生を描いたこの新作歌舞伎は、連日大盛況を収めた。
昨年にはシネマ歌舞伎として上映され、再び話題を集めたこの舞台を、主人公・大黒屋光太夫を演じた松本幸四郎さんが振り返ります!
衛星劇場 presents 歌舞伎役者 松本幸四郎さん インタビュー

Q. 三谷幸喜さんの作・演出作品は2度目の主演ですね。

ええ、『決闘!高田馬場』はパルコ劇場で上演したもので、構想から8年ほどかけて実現した新作歌舞伎でした。その時になんとなく次回作の話をしていたのですが、またもや随分と時間がかかってしまいましたね(笑)。
今作のアイデアについては三谷さんからいただいたものです。2人だけでお会いした際に、“歌舞伎座で見せる新作を作りたい”、“みなもと太郎さん原作の漫画『風雲児たち』をもとにした大黒屋光太夫の話を書きたい”というお話しがありまして。私は三谷さんに対して全幅の信頼を置いておりますから、何の不安もなく、“三谷さんがおっしゃるのなら、(その方向性が)正解なんだろう”という思いでした。それに、漂流した男たちの物語ですから、当然ながらどの場面も、船の上かロシアの地になる。それを歌舞伎で作るとなると、“はたしてどうなるんだろう?”という、想像もできない興奮があったのを覚えています。

Q. 大黒屋光太夫は実在の人物です。幸四郎さんにはどう映りましたか?

この役を演じるにあたって、実際に三重県にある大黒屋光太夫記念館を訪れたのですが、館長さんのお話によると、当時は日本人がロシアに漂流するのは珍しくなかったそうです。ただ、日本と交流を持つことを望んでいたロシアは、日本の情報を仕入れようと遭難者を手厚く保護していたため、帰国しようと考える者がいなかった。そうした中で、光太夫たちだけは日本に帰ることを願い続け、途中で仲間を失いながらも、10年という時間をかけて実際に戻ってきた唯一の人物たちでもあるんです。その思いの強さというのは計り知れないものがあるなと感じましたね。
また、光太夫はリーダーシップがあるタイプではなかったそうですが、初めて会う人ともすぐ友達になれるような人物だったともお聞きしました。だからこそ、ロシアでもすぐに環境に馴染むことができたのではないかと思います。
つまり、光太夫は決して英雄ではないものの、諦めない心と豊かな人間性があった。そこは役を作るうえで意識したところですね。

Q. 磯吉を見守る光太夫の姿は、幸四郎さんと染五郎さんの親子の関係と重なって見えました。

染五郎の出演については、三谷さんのほうから名前を挙げてくださったんです。僕としても非常に嬉しかったですし、彼にとっても大きなチャンスだと思いました。
また、今回は八嶋智人さんにも座組に入っていただいたのですが、今作のような直接的に自分の感情を表現できるお芝居は染五郎にとって初めてのことでもありましたから、その意味でも八嶋さんの存在はとても大きかったと思うんです。
稽古場では、終わってからも八嶋さんにアドバイスをいただいたり、時には『お芝居、好き?』と聞かれて、『好きです』と答える姿を見かけることもあって。それに千穐楽で幕が降りた時、僕は気づかなかったのですが、終わってしまうことへの寂しさに泣いていたそうなんですね。
そうした体験は、本当に彼を成長させたと思います。……とはいえ、この経験を活かすも殺すも本人次第ですからね。これからも頑張っていただきたいです。

Q. 最後に、放送をご覧になる方に幸四郎さんが印象的だったシーンを教えていただけますか。

たくさんあるのですが、ひとつは市川猿之助さん演じる庄蔵がロシアに残ることになり、光太夫と別れるシーンです。義太夫さんとの相乗効果も含め、稽古で時間をかけて作っていった感動的な場面でした。
そもそもの話になりますが、この物語は史実をもとにしているので、原作を介さなくても歌舞伎にできたとは思うんですよね。
でも三谷さんは、原作にある“絶望を通り越すと、人は笑うしかない”という要素をこの舞台にも取り入れたかったそうなんです。例えば物語の序盤には、漂流した島の近くに船が現れて、“助かった!”と思った瞬間に目の前で沈没し、庄蔵が『芝居じゃあるまいし!』と嘆く場面があります(笑)。
また、先ほどの別れの場面でも、片岡愛之助さん演じる新蔵が、『庄蔵を置いて自分は帰れない』と勇ましい姿を見せながらも、最後の最後に『やっぱり帰りたい』と泣き喚く。そこには途轍もない悲しさがあるものの、どこか人間の滑稽さも見えて、笑いへとつながっていくんですね。そうした感情の揺れ幅の大きさも、この作品の魅力だなと感じていますね。
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