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『自衛隊は市街戦を戦えるか』 <旧>読書日記1380 

2023年05月18日 ナビトモブログ記事
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二見龍『自衛隊は市街戦を戦えるか』新潮新書

著者は1957年(昭和32年)生まれで、防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊で東部方面混成団長などを歴任、陸将補で退官。現在は防災官を経て、一般企業で危機管理を行う傍ら執筆活動を続ける。

地上での戦いと言えば、何も無い原野で戦車や装甲車が走り回り、大砲が遠くの目標に大量の多摩を打ち込むという様なイメージがあるけれど、著者は現代では地上戦のあり方が変化していると書く。それはハイブリッド戦争であり、正規、非正規軍の他、サイバー戦や情報戦を組み合わせる戦い方に変化しており、旧来のように情報と火力の優越によって敵を撃破するというもので、これは多くの兵士を消耗し、住民に被害が生じるような戦い方でもあって、現代は特に兵士の消耗を許容出来なくなっていると言う。

著者はその様なハイブリッドな戦い方として、2014年ウクライナ侵略時のロシア軍の戦い方を示し、戦いの様相の変化を内外に如実に知らしめたと評価している。現代のハイブリッド戦争とは、サイバー攻撃により国家機能を麻痺させ、その間に特殊部隊などによって、政治経済の中枢部、都市部でのインフラ設備などの重要施設を迅速に占領してしまう形態の戦争である。

ということで、著者は2003年に北九州小倉駐屯地に所在する第40普通科連隊の連隊長となって、市街戦能力の向上に努めるようになり、一時は日本各地の連隊が小倉駐屯地での訓練を視察し、40連隊に挑戦しては敗れ、陸上自衛隊全体の市街戦能力を引き上げることに成功した。

【目次より】
はじめに
第1章 今や戦闘は変わった
第2章 民間人を撃つな!
第3章 我々は何も知らなかった
第4章 これでは「戦争ごっこ」
第5章 装備と訓練は世界標準なのか
第6章 40連隊とその後
第7章 「鬼軍曹2・0」を求めて
第8章 国民に愛される自衛隊の先にあるものは
おわりに

この本は「最強の部隊」を追求した元幹部が初めて明かす組織の内情と未来への提言。とされている。が、読者によっては、銃剣突撃で終わる訓練、死んでも4時間後に生き返るという現実離れした想定での訓練への批判から「筆者は特定団体からお金を貰って陸自を中傷するよう依頼されたとしか思えません。」と言う様な感想を持つ人もいたりする。

その読者によれば、これからの主戦場が市街地になるというのも別に根拠のある話では無いとして、著者は「元陸自幹部とは思えない事実誤認と認識不足」と断じているんだが議論が粗雑だなぁ。市街地が戦場にならないという根拠もないと思うんだが・・むしろ、原発(必ず海のそばに立地している)を目標としての局地戦は充分に想定できると思える。
(2020年10月13日読了)



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