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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(57) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(57)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/20 11:40:52

+++凝り性な私は、何にでも一所懸命になるクセが
あった。女は根が賢かったから「父親」の熱意を信用
して心強く思い、アドバイスに忠実に従ったのである。

57.サービス残業

 けれどもこの作戦には、私へ多少迷惑な副作用が伴
った。打ち合わせの時間も要ったから、デートで、女
は食事をしながら以前より長時間私とお喋りをしたが
ったからである。手持ち無沙汰になるどころか、とも
すれば後に続くホテルでの保健体育の授業時間に食い
込む位で、私を大いにやきもきさせた。有効時間が過
ぎて、バイアグラの効き目が帳消しになるーーー。


 話が前後するが、経営者ならではの経験を生かし
て、私は一番大切で実用的な知恵を事前に女へ授けて
いた。特に会社が小さい場合、社長の心を動かす秘法
である:バレエの練習日以外は、わざと「サービス
」残業」するよう命じたのである。

 そうすれば(新人だから)「早く帰りなさい」とき
っと周りから言われる。この時の応え方がポイント:
「早く帰ってもアパートでどうせやる事も無いですし
ーーー、仕事を早く覚えたいですから、今日は残業で
なくて「居残り」です。皆さんがいらっしゃる時間
まで、勉強させて下さい」

 これは直ぐに効き目があった。回りの同僚から、無
論社長からもだが、女が腰掛では無く仕事に熱心で、
真面目な努力家と思われた。努力家を見て感動しない
人は居ない。
 それが証拠に、昼休みに若い独身の男子社員が早速
モーションを掛けて来た:
「そんなのは予定外で、困るのよねえーーー」
 女は迷惑気にそう言いながら、作戦室と呼んでいた
ホテルのベッドで「お父さん」に尻を持ち込んだ:
「どんなタイプの男なんだ?」

 なに、物がしっかりさえしておれば、中年の社長で
なくても、途中で若い男へ乗り換えたって無論悪くは
無いのだ。優れものの男獲得の為に、女は二股を掛け
るくらいの度胸と根性が要る。
 女のお尻をさすりながら話を訊くと、ややおとなし
くネクラな男らしい。軽度の草食系で、ネクラなくせ
に女に声を掛けるなんて不埒なヤツだが、どう見ても
出世しそうにない頼り無いタイプと判った:
「そりゃ、ダメだ!」

 本命以外の雑魚は相手にするなと女に軽挙を戒め、
たとえラーメン一杯でも、昼食も含めて一緒に食事に
出るのを私は禁じた。若い社員と同道しているのを目
にすれば、社長は自分のバツイチと中年という引け目
があるから、腰が引けてしまう。遠慮して、端から女
へ寄り付かなくなる恐れがある。
 そんな状況を自から積極的に作ってはならない、と
女へ戒めたのである。

(比呂よし)

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