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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(56) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(56)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/19 17:46:39

+++バツイチの理由も判る筈だよ。ただ、その事務
員が社長のイロという事もあり得るから、そんな可能
性にも注意せよ!」

56.ビギンズ教授

 女が作戦の遂行に不安がると、励ましてやった:
「何も心配することはない。君は美人だし魅力的な女
なんだよ。芝居やダンスをする時と同じように胸を張
って、社内で生き生きと当たり前に振舞えばいいん
だ」
ただ、女へ釘を刺した:
「笑う時は、余り大口を開けないように」
 そんな注意をした途端に、女は耳まで裂ける大口を
開けてケタケタと笑ったから、こっちが肝を冷やし
た。女は「お父さん」の前で、何時も無防備なのだ。

 中年の女事務員は、結局社長のイロではなかった
から、安心した。一ヶ月もしてから、事務員を通して
重要な情報を得た:バツイチ社長の離婚の原因が判っ
たのである。奥さんの浮気であった。子供は居ないら
しい。

 この報告を聞いた時、普段女から逐一聞いていた社
長の正直な性格や他の情報と照らして、「真面目すぎ
るほど真面目」な男らしい、「だから若い奥さんに逃
げられた」と私は推測した。こういう男は、攻略し
易い。正攻法で行けるからだ。

 当初は「自分のソックリさん」を見付ける為だけの
協力であったが、やがてまるで私自身が社長と結婚す
るみたいな気持になった。女以上に熱が入り、次々メ
ールで指示を出した:新人だとしてもダンマリの無口
はいけない、周りへ快活な人柄の印象を与える為に
も、ある程度自分から意識して仕掛ける「おしゃべ
り」が大切だ、と諭した。

 と言うのも、女は私に対しては気の置けない親密さ
を示しておしゃべりなくせに、相手によって案外人見
知りする処があると私は睨んでいた。同性の友人が少
ないらしいのも、そんな性格の為だ。
 そこを心配したから、社内で同僚と交わすべきおし
ゃべりの内容や話題も、作ってやって提供した。この
辺りは自分のセールスマン時代の体験を活用した。

 新聞を毎日丹念に読むように教え、日々の話題を頭
に入れさせて、社内のおしゃべりの話題に活用するよ
うに勧めた。女は新聞を購読していなかったから、全
国紙を一紙取りなさいと叱ったのである。いずれ社長
とデートとなった時に、互角とまで行かなくても、話
が世間知らずで見当外れにならないように、下準備さ
せる必要がある。

 中年の社長ともなれば、自分の伴侶を選ぶのに、少
しくらい美貌であってもパア助を選ばないものだから
と教えた。社長を確実に落札する為に徹底した作戦が
必要と考え、私は遠慮なく女へ基礎から指導したので
ある。

 映画マイフェアレデイ(オードリヘプバーン主演)
のビギンズ教授みたいに、「じゃじゃ馬の調教」に取
り掛かったようなもの。形だけでもそのように振る舞
っていると、人はやがてそのような人間へ変化して
行く。凝り性な私は、何にでも一所懸命になるクセが
あった。
 女は根が賢かったから「父親」の熱意を信用して心
強く思い、アドバイスに忠実に従ったのである。

(比呂よし)

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