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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(55) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(55)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/18 10:37:25

+++妻帯者だと判れば、面接の翌日に電話で断る手
筈になっている:
「他の応募先へ、昨日先約の口が決まりましたのでー
ーー、ごめんなさい」

55/67.意志あれば道あり

 意志あれば道あり。人生は努力をする価値があり、
努力があれば運だって協力してくれる。そんな意志を
持った就職活動が実り、四ヵ月目にようやく商業デザ
イナーとして、小さな印刷会社N社への就職に成功し
たのである。
 社員は十二名だったから、確かに手頃なサイズで
ある。

 経営者は女より「八つ年上で、バツイチの独身」だ
った。デザインソフトの専門家で、以前大手企業に勤
務していたが、数年前に独立を果したそうである。
 面接された時の印象を、私へ報告した:
「真面目で親切そうな社長さんよ」
「良く見つけたねえ! 願っても無い条件だ。男のバ
ツイチなんか目方の計りに掛けるべきじゃないよ、そ
こは我慢しなくちゃ。反って「相手の弱み」になる
から、攻め易くて好都合だ」

 相手はバツイチの中年、こっちは「バレエを踊る
(魅力的な)女」という強みがある上、老いたりと言
えども切れ者の参謀付きだから、勝敗の行方は端から
明らかである。心の中で楽勝を信じた:この男を、必
ず落としてやるぞ! 
 こんな事に、私はヘンに熱心になる癖がある。

 メールで経過を確認し合いながら二週間毎にレスト
ランやベッド付きの作戦室で、バツイチ社長攻略の方
法を、女と打ち合わせた。アプローチの初歩こそ大切
である。
 飲み屋じゃあるまいし、幾ら小企業といっても、入
社したての女が「貴方好きよ!」なんて言って、社長
に近づく訳には行かない。他の社員の目もある。
 どうしても社長の側から女へアプローチさせる必要
があり、ここが知恵の絞り処である。

 次のポイントは、社長の離婚の原因を探る事であ
る。酒乱で暴力的であるとか、女を苦しめる異常な
性癖があるとか、であってはならない。子供の有無も
重要。敵を知らなければ、こっちの作戦が立てられ
ない。

 数日毎に女は夜になって、メールでその日の会社の
様子や社長の行動を知らせて来た:
「社員さん達は皆、親切にしてくれるわ。今日、社長
さんは昼から3時間外出したけれど、注文取りらし
い。でも、顔色が冴えないのは何故かしらねーーー。
今日の夕方、私の傍へ寄って来て仕事に慣れて来たか
と訊かれた。毎日の昼食は、外食らしいーーー」

 別の日にはこんな報告も寄越した:
「四十前後だけれど、社内に既婚の女性事務員が一人
居ます。私の方から話し掛けて、彼女とは早速仲良し
になりました」 

 これらのメールへ、手短ではあったが私は一々返信
した:
「社内で最も重要なのは、その中年の女事務員だから
大切に扱うべきだよ。味方に付けたまえ。何時も相手
を立てて、仲良しの関係を維持して行きなさい。お昼
休みにでも彼女から、社長の性格や家庭の事情をそれ
となく聞き出すんだ。きっと、バツイチの理由も判る
筈だよ。ただ、その事務員が社長のイロという事もあ
り得るから、そんな可能性にも注意せよ!」

(比呂よし)

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