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作品名 67になっても、たまにはデートしたい(51) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(51)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/14 09:15:49

+++本当の恋をするのに、僕は賛成だよ。だけど
ね、父親みたいな歳の男とではなく、貴女の年齢にも
っと相応しい若い男とすべきだよ」

51.薄氷を踏む思い

 女が知らずに陥っている大都会での生活の孤独と、
寂しい気持ちを私は分析して見せてやった。自分の恋
愛感情について、女自身も薄々怪訝に思っていたか
ら、私に諭されて正しく理解したようである。

 大都会で身の回りに混み合うほど人数だけは沢山な
人が居たが、自分が長年「独りぼっち」であったの
を、女は初めて自覚した。

 けれども、頭で理屈は理解出来ても、私を好きにな
ってしまった感情を、簡単に片付けられる訳ではな
い。私は女へ約束をしてやった:
「今後も今までのように、親しい友達として付き合っ
て行こうよ。貴女の許しを得るまでは、僕は決して勝
手に何処へも逃げて行かないから」
 私を失うのではないかと、女が内心で不安に感じて
いるのが判ったから、安心させてやったのである。

 次の日曜日にも私は辛抱強く話をし、メールでも諭
した。感情の処理に女はそれから暫く悩んだようだっ
たが、次第に落ち着きを取り戻した。擬似的な恋人で
あろうが、それが父親に対するような思慕の情であろ
うが、私がうるさがったり逃げ隠れしないのが判っ
て、女は安堵した風である。女の心を落ち着かせる
のに、これが一番大きかった。

 それから一ヶ月程も経って、少なくとも表面的には
すっかり冷静になった女は、「先生」とこれまで私を
呼んでいた代わりに、「お父さん」と呼ぶように変わ
った。呼び方を変える事によって、恋人から恰も肉親
の父親に対する情へと、意識を切り替える努力をして
いるらしかった。

 実際それ以後、私に対して酷く甘えを見せるように
なり、以前よりも一層親愛の情が増した。悩みや心の
葛藤や、自分の弱さを素直に打ち明けるようになっ
た。どんな場合でも私は決して批判せず女の味方に
立って、男には難しい女心を理解するように努めた。

 そんなある日、正しく自分の父親に対するような口
振りで、女から相談を受けた:
「お父さんーーー」
「うんーーーどうした?」
「私、結婚する事に決めたのよ!」
「えっ!」
えっ!と応えはしたが、内心ギョッ!となった。ひょ
っとしたら結婚を迫られるかもーーー、と心配した
のだ。

「ウソではないわ。ウフフ、本当よ!」
「うむ、誰とーーー?」
 この質問は、気分として薄氷を踏む思いである。
「考えた末に、判ったわ!」
「何が判ったーーー?」
 かすれ声で応えながら、心は恐怖で震えた。角を生
やした自分の配偶者を思い出した。

(比呂よし)

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