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作品名 鈴木家の嘘 評価 評価評価(2)
タイトル 褒貶相半ば
投稿者 パトラッシュ 投稿日 2018/12/09 07:27:26

若い男の、唐突な死から、映画が始まりました。
自死です。
その無惨な姿に、動転した母は、救助を試みたものの、果たせず、
自らも負傷し、失神し、その時の記憶を失ってしまいます。
家族は、真実を知った時の、彼女のショックを思い、嘘をつくことにします。
息子は健在であり、叔父さんの伝手により、アルゼンチンへと渡り、働いているよと。

もちろん、そんな小賢しい嘘が、何時までも通じるわけもなく、
やがてひょんなことから、露見し、家族の間に、困惑と亀裂をもたらします。

私は、この映画を、このSNS(シニアナビ)の広報欄で、知りました。
運営会社が、チケットをプレゼントして下さるとの事です。
結構な話です。
しかし、私は、申込みませんでした。
理由は後段に書きます。

「引き籠り」「うつ病」そして「自死」……
この映画には、今の世に多発する難題が、ずらり並んでいます。
さながら、「生きにくい世の中」を象徴するようにです。
逆に言えば、それらの事象を並べれば、現代を、表せるかもしれません。
少なくとも、表面的には……
と書いたのには、訳があります。
少し作為的だなぁ……と、私が、この映画に感じたからです。
わざとらしい、作っている、という印象を、ぬぐえなかったからです。

私は、この映画を見る前に、これは喜劇かと想像しました。
出演者の中に、岸部一徳、原日出子、岸本加代子などの名を見て、
そのキャラクターから、つい、連想してしまったのです。
まことに、浅はかでありました。
私は「家」及び「嘘」の文字から「家族はつらいよ」のような、
軽妙なコメディを、思い浮かべてしまったのです。
粗忽というよりありません。

とても、シリアスな内容の映画でした。
可哀想に……と心でつぶやく事、頻りでした。
登場人物(主として鈴木家の家族)の悩みが、簡単に解きほぐせるものでは、
なかったからです。

映画半ばにして、私は、見に来たことを、後悔しました。
私の求めていた映画とは、違っていたからです。
じゃあ、お前は、何を求めるんだ? 映画に? と詰問されそうです。

一言で答えるなら、それは「笑い」です。
「笑いあり、涙あり」です。
但し「失笑」は嫌です。
「苦笑」も困ります。
「哄笑」がよろしいです。
大口を開け、伸びやかに笑う、それが私の望むところです。

「うーん……」
私が呻吟している時に出る、ため息です。
便秘ではありません。
こんなものが出る映画は、苦手なのです。

「んなバカな……」と言う場面に、何度か遭遇しました。
「あり得ない」「不自然極まる」という意味です。
説明と描写、その間の引き継ぎが、上手く行っていない。
という印象も受けました。
そもそも観客とは、あなたが思うほど、深い洞察力を、備えた者ばかりではありませんよ、
という事を、脚本家に伝えたくなりました。

「実は……」がありました。
一見、カタブツに見えた父親が、意を決し、ソープランドを訪れるシーンです。
そこには、ある目的があったのです。

意外な事実を知り、観客が意表を突かれる。
それは、作劇手法の一つであり、歌舞伎などでは、頻繁に用いられます。
しかし、この映画の場合、この手が奏功しているとは思えません。
それは、作為が目立つ、つまり、自然でないから……かもしれません。

そこへ行くと、歌舞伎の「実は……」は、簡単です。
悪人に見えたが、それは世間を欺く、仮の姿。
相手のためとはいえ、自らを偽り、敢えて冷酷に、傲然と振る舞っていた。
それが、実は善人だった知れた時の、観客の驚きと安堵。
芝居を見つけている人は、もう、とっくに、その辺の察しはついています。
それでも「実は……」の場面で、つい涙ぐむのです。
この映画の脚本家、もっと芝居を見た方が、よろしいかもしれません。

この映画、作り過ぎ、ひねり過ぎだと思います。
その最大なものが「嘘」です。
善良な市民であるところの、家族らが、死んだ者を、生きていると嘘つき通す。
そんなこと、私には、思いもよらぬことです。

そりゃ、私だって、聖人君子ではありません。
妻に隠れ、紅灯の巷で、遊興に耽ることも、ないとは言いません。
(ソープじゃありませんよ)
しかし、私の嘘は、ばれても、精々三日ほど、妻から、口を利いてもらえない、
そんな程度のものです。
小市民には、所詮、身の丈に合った嘘しか、つけないとしたものです。

私は、この映画に対し、少し、厳しいかもしれません。
欠点ばかり、論ってしまった感があります。
良かったところも、申し上げておきましょう。
全編を通じ、緊迫感がありました。
二時間十数分の上映時間中、私は、一度も欠伸や居眠りをせず、
スクリーンから、目を離しませんでしたから。
この映画、決して駄作ではありません。

要は、観客の好みの問題と思われます。
命の重さと、家族の紐帯を描き、佳作だったとおっしゃる方も、
相当数、居らっしゃるかもしれません。
それほどに、褒貶の分かれる映画だと思います。

私が、チケットのプレゼントに、応募しなかった理由も、実はここにあります。
人からものをもらっておいて、それに難癖を付けたくはありません。
儀礼として、つい、愛想を言う。
その結果、評価が甘くなることも、あるでしょう。
私は、それが嫌で、なるべく自費にて、映画を見に行くようにしています。

その結果、☆☆となりました。
私の映画レビューの中では、異例の低評価になりました。
残念ですが、止むを得ません。
次回からは、宣伝につられず、内容をよく確かめ、それから、
出かけるようにしたいと思います。

そうそう、一つだけ、大いに笑ったところがありました。
霊媒師が、三途の川の、ほとりに立ち、家族に別れを告げる場面です。
もちろん、死んだ息子が、彼に乗り移っている。
という設定です。
しかつめらしい顔をしていた彼が、家族から、細部を尋ねられ、しどろもどろになる。
下手な霊媒師だな……
ここに至り、私はやっと、念願の哄笑を得ました。

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コメント

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シシーマニアさん

加瀬亮、という俳優さんが好きなので、見たいと思いつつ見そびれていました。

でも、やめておこうと思いました。
私も、映画に「笑い」を求める方ですので・・。

シリアスな映画を見るには、体力が要りますよね。
私は、映画は楽しくみたいと思います。

歌舞伎でも、私は笑いが満載されている、「世話物」が好きです。

2018/12/10 07:41:00

パトラッシュさん

シシーさん、
私は、加瀬さんのことは、よく知りません。
この映画に関して言えば、影が薄かったです。
何しろ、冒頭で死んでしまうくらいですから。

敢えて見に行くほどのことは、ないと思います。

「体力」正にそうですね。
身体の楽な方が、よろしいですね。

2018/12/10 13:33:54


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