読書日記

『語学の天才まで1億光年』 読書日記206 

2023年05月31日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

高野秀行『語学の天才まで1億光年』(図書館)

私が著者の名前を知ったのは探検家の角幡唯介の著作を通してである。早稲田大学探検部時代に角幡唯介の先輩として活躍していたそうだ。探検家として「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」をポリシーとしているとかか・・著作を見ると、『幻の幻獣・ムベンベを追え』『謎の独立国家ソマリランド』 『ワセダ三畳青春記 』 『アヘン王国潜入記』など30冊を越えている。

そうした中で少し系統が違い、さらに書評が多かったのが昨年出た本書である。図書館で予約した時はNo22で、ああ、これは1年待ちだなと思っていたら案に相違しておよそ半年で借り出せたのは蔵書が2冊に増えたからであろう(現在も私のあとに22人の予約がある)。

さて、広告文によると内容は

語学は魔法の剣!
学んだ言語は25以上!の辺境ノンフィクション作家による、超ド級・語学青春記。
自身の「言語体験」に基づき、「言語」を深く楽しく考察。自動翻訳時代の語学の意味を問う。
さらにネイティヴに習う、テキストを自作するなどユニークな学習法も披露。語学上達のためのヒントが満載。
そしてコンゴの怪獣やアマゾンの幻覚剤探し、アヘン栽培体験などの仰天エピソードにおける語学についても語られる。『幻獣ムベンベを追え』から『アヘン王国潜入記』まで、高野作品の舞台裏も次々と登場。

インドで身ぐるみはがされたせいで、英語が上達、暗黒舞踏家のフランス人女性に生きたフランス語を学び、コンゴでリンガラ語を話してウケまくる。
コンゴでの「語学ビッグバン」体験により、語学の面白さに目覚め、以後、現地を訪れる際に必ずその言語を学ぶ言語オタクと化した著者。
辺境の言語で辞書もテキストもない場合は、ネイティヴを探して学び、文法の法則は自分で見つける。
現地で適当に振り回すと、開かずの扉が開くこともある語学は「魔法の剣」だという著者。地域や人々を深く知る上で、語学がいかに有効な手段であるかも綴られる。
著者自作の地図や図版を多数掲載。各国、民族の言語観や、言語同士の相関をわかりやすく解説。知的好奇心が満たされるとともに、破天荒で自由な著者の青春記を堪能できる一冊。
言語愛あふれるエピローグも感動的。

【目次より抜粋】
第一章 語学ビッグバン前夜(インド篇 英語)
第二章 怪獣探検と語学ビッグバン(アフリカ篇 フランス語・リンガラ語・ボミタバ語)
第三章 ロマンス諸語との闘い(ヨーロッパ・南米篇 イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語)
第四章 ゴールデン・トライアングルの多言語世界(東南アジア篇 タイ語・ビルマ語・シャン語)
第五章 世界で最も不思議な「国」の言語(中国・ワ州篇 中国語・ビルマ語・ワ語)

著者は基本的に、「語学はコミュニケーションの道具であり、対話が出来れば良い。(探検などの)目的を果たして使わなくなるとすぐに忘れてしまう」という考え方であり、この本を予約した時とほぼ同時に買って読んだ『20ヵ国語ペラペラ』(1969年出版)の著者である種田輝豊氏とはまったく異なる態度である(この方は習得した言葉を保持したまま次の言語にとりかかり、相互の通訳としての語学力を維持していたがそのほとんどは印欧語族であった)。

従って、著者の学ぶ言葉は「少数民族≒同じ言葉を話す集団」のものが必然的に多くなり話者が数十万人いれば大きな方の言語である(言語の大小はその言葉の話者の数による)。しかも、用が済んだら対象地域を離れ、また使うことはまず無いので忘れる。正統的な言語学者としての探求では無い為に専門家から見れば物足りないものであろう。

もちろん著者はそのことを自覚し、自分は語学の天才などでは無いという意味を込めての「語学の天才まで1億光年」という題名なのである。

ちなみに「光年」というのは距離の単位として2番目に大きい単位であり、光が1年間かかって到達する距離のことでおよそ9兆4600億kmとなる。
(2023年5月18日読了)

※将棋の棋士に同姓同名の人がおり、検索すると著書などに2人のものが入り交じるので注意が必要である。なお、著者に棋士宛の原稿料が入金されて返金したことがあるそうだ。



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