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墓仕舞い 

2019年07月13日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

盂蘭盆会を前に、菩提寺から「護寺会便り」が届いた。
お寺の後援会報みたいなものだ。
その末尾に「新規墓地受付中」の囲み文字があった。
一般の新聞なら、広告の扱いになるであろう。

そう言えば、春の彼岸前の便りにもあった。
その前の秋彼岸のそれにもあった。
宣伝にこれ努めている感がある。
今昔の感を禁じ得ない。

昔、墓地は売り手市場であった。
母が死んだ時、私達遺族は、墓地をどうするかで、大いに悩んだ。
東京の郊外へと車を走らせ、民間の霊園墓地を見て回った。
帯に短し襷に長しであって、容易に決められない。
また近場へと戻り、親戚の伝手を頼り、今の菩提寺に掛け合った。
先代の住職に対し、父と私、雁首を並べ、頼み込んだものだ。

「いいでしょう」
やっと承諾してくれて、晴れて我が家は、墓を持つことが出来た。
車なら、十五分ほどの近場である。
その後、足繁く墓参に通うことになり、その度に、
私達の選択の、正しかったことを実感した。
墓地は近いほどいい。
遠くの安い墓地より、少々高くても、近くの墓地がいい。
ついでに言えば、住宅もまた同じだ。
買えるなら、少々高くても、交通便利な方がいい。

その利便性に富んだ墓にも、気がかりが一つある。
私達夫婦には男の子がいない。
娘二人は、他家に嫁いでいる。
私達が死んだ後、墓はどうなるだろう……
ということになると、容易に答が出ない。
娘らに、過度の負担をかけたくはない。
「無縁墓になったらなったで、いいさ。どのようにでも対処していい」
こう言い残そうと思っている。

昨今「墓仕舞い」なるものが、増えていると聞く。
よくわかる。
この少子化の時代だ。
家だって承継するのが難しい。
況や、墓においておや……ということになる。

 * * *

知人A夫婦には、子供が居なかった。
旦那が死に、奥さんが後事を託された。
旦那は二男であることもあり、墓はなかった。
夫婦は相談し、生前に、ある手続きをしておいた。
東京都立霊園の「樹木葬」というのに申込み、
抽選の末に当選し、その権利を得ていた。

葬儀も簡素に行った。
血縁者と友人、十人足らずが火葬場に集まり、荼毘に付した。
僧侶も呼ばない。
従って読経もない。
これ以上はないであろう、簡素な野辺送りであった。
昨今これを「直葬」と言い、世に少なくないらしい。

四十九日の忌明けを待ち、霊園に遺骨を持参した。
係員が受け取り、後日埋葬しますと言った。
いわゆる合葬である。

墓石もない。卒塔婆もない。
献花台、献香台はあるけれど、共用だ。
考えてみれば、一軒家に対する、マンションのようなもので、
合理的ではある。
肩身が狭い……なんてことはないだろう。
私はお骨に対し、そりゃ哀惜はあるものの、
所詮は故人の遺物だと思っている。

 * * *

樹林葬、樹木葬、そして海への散骨が増えていると聞く。
考えてみれば、墓に拘ることもない。
私もいっそ、その手でやってもらいたい。
遺灰にして、土に還る。
骨壺に納められ、暗黒のカロート(石室)に鎮座するより、
よほどいい。

妻に言ったら、私もそれでいいと言う。
偕老同穴にならないが、それで良いかと聞いたら、
死後くらい、自由にさせて下さいと答えた。
我がまま亭主に仕えるのは、現世で十分です。
と言いたいようだ。

話は決まったが、ネックになるのは、今ある墓だ。
父母の遺骨が入っている。
これを永代供養の合同墳墓に移し、今の墓地を寺に返す。
つまり、墓仕舞を考えないでもない。
しかし、それをお寺に言い出す勇気がない。
「もう、縁を切ります」と言い出すようなものだ。
私には、出来ない。

墓地の管理費などを滞納のまま、督促にも応じないでいると、
一定の猶予期間を経て、墓は強制的に収用されるらしい。
その場合、遺骨はどうなるか。
永代供養の集合墓に、まとめて収納されるらしい。
なんだ……墓仕舞いと同じではないか。
自力でやるか、他力でやるか……の違いではないか。
私はにわかに気が楽になった。
いざとなれば、なるようになる。
無間地獄をさまようことは、どうやらないようだ。

 * * *

「墓地の売れ行きが、はかばかしくない」
その訳がわかった。
現に、墓を持っている檀徒だって、将来を案じている。
新規に買う者が、二の足を踏むのも無理はない。

ついでに言えば、葬式だった同じこと。
華美な祭壇を、何段にも重ね・……なんてことに、
果たして意味があるのか。
人々が疑いを持ち始めている。
家族だけが集まり、心を込めて葬送すれば、
それでいいじゃないか。
と考える者が増えているからだろう、
何処の葬儀社の店頭にも「家族葬」のポスターが見える。
昔、葬式は、結婚式と共に、家の格式を誇示する場でもあった。
そんなものに拘る方がおかしい。
と気付く者が増えたのではあるまいか。

もしかすると、お寺受難の時代が始まるかもしれない。
墓は要らない、読経も無用と、割り切る者が増えたら……
お寺だって、霞を食って生きているわけではない。
新たな収入源を、模索しなければなるまい。

実を言えば、私はお寺が好きだ。
墓地も好きだ。
俗界とは少し違う空気が、そこにある。
それを活かす手はないものか……
檀家を辞めることを「離檀」というらしい。
私は、離壇を考えつつ、お寺の先行きをも案じている。
まことに、煩悩の絶えることがない。



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覚書

パトラッシュさん

彩々さん、
何処も同じ、悩みは尽きませんね。
そうです、全て滞りなく……なんてことは、不可能です。
少々の困難は、背負って頂きましょう。
濡れ手で粟のように、財産をもらえるのですから。(笑)
私はそれでも「覚書」を作っております。預金保険株など、まごつかないように、一覧にしてあります。
せめてもの、子供孝行です。(笑)

2019/07/15 13:16:08

>まことに、煩悩の絶えることがない。

彩々さん

本当に長く生きていると、この煩悩とやらが
増える一方です。

「物事の決まり」が多種多様になり、スッキリ
解決するなんて、あり得ない気がします。

それでも、‘生きている間にちゃんと
解るように決めておいてよ!’と、ずーっと
前から言われています。
二世帯の家屋の問題も有り、なかなか答えが
出せないままです。

取り合えず、不動産会社が主催する「終活セミナー」にでも行って、情報収集から初めてみようかと思っているところです。

2019/07/15 09:41:04

後は野となれ

パトラッシュさん

みさきさん、
太平洋漂流というのは、楽しいですね。
魚の餌になり……
(ならないか?……)

私はもう、死後の安住は求めないことにします。
どうなってもいいさ……
無責任のようですが、この世には、自分の力の及ばないところもあると、こう割り切っております。

2019/07/14 06:40:36

私も悩んでいます。

みさきさん

今、まさに、そういう事で悩んでいます。
私自身は、太平洋を漂うのも良いと思っておりますが、
両親は、檀家寺の、親戚筋と一緒の○○家の墓、という所におります。今までは、親戚筋の誰かが世話役でいてくれましたが、私の同世代は女の子ばかり、皆 姓は○○ではなくなっています。子供達に負担を残したくないので、悩んでいます。

2019/07/14 01:17:34

いずこも同じ

パトラッシュさん

oomotoさん
悩みはありますね。
しかし、悩んでも仕方ない……とも言えます。
所詮、なるようにしか、なりませんから。
永代供養は、今後急速に増えるのではないでしょうか。

2019/07/13 17:01:12

意の如くならず

パトラッシュさん

喜美さん、
校長先生まで務めた方でも、死後のことは、思うように行きませんね。
墓があるのに、無縁墓ですか……
これから、こういう例が多くなるかもしれませんね。
そこへ行くと、喜美さんのところは、息子さん、お孫さんが健在ですから、そういう悩みはないですね。お幸せです。

2019/07/13 16:58:37

墓仕舞

さん

地方では長年手入れなし放置墓石を多く見られる様になりました。
私共には遠方に嫁がせた娘1人で「永代供養」が最善策かと思っています。

2019/07/13 14:40:08

無縁仏

喜美さん

ご近所の昔校長先生した方がパトさんと同じ色々考えて私に話して下さいました 海に流すのも直ぐは自分だけの船で掛かり過ぎ(大勢になるまで待つそうです)お墓あるのに其のお金で
其処の無縁仏に入ることにしたそうです その方は娘一人で結婚しています

2019/07/13 13:25:38

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