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葵から菊へ
幸徳秋水顕彰運動の歴史
2018年04月30日
テーマ:テーマ無し
幸徳秋水を顕彰する会から会報が送付されてきました。
事務局長田中全さんの「幸徳秋水顕彰運動の歴史」が同封されていましたので、著者の田中さんからご了解を頂き転載します。
四万十市サイトから
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幸徳秋水顕彰運動の歴史
現在の名称の幸徳秋水を顕彰する会が結成されたのは二〇〇〇年三月。しかし、その前史は長く、かつ深い。
1.前史一 秋水墓前祭
一九一一年、大逆事件で処刑された幸徳秋水は、長く「極悪人」「国賊」「逆徒」として社会から抹殺されてきたが、日本敗戦後は一転革命児としてヒーローとなった。
玉音放送からわずか四カ月後、一九四五年十二月末から翌一月初めにかけて、大相撲横綱双葉山一行が高知県内九カ所で「戦災者援護海外同胞救済義捐興行」を行った。主催は高知県労働組合協議会、後援高知新聞社。
中村では、一月一、二日、「幸徳秋水三十五年忌追善興行」と銘打つほどであった。
こうした雰囲気の中、幸徳家当主富治(秋水義兄駒太郎長男)は、四六年一月二十四日の秋水命日(刑死日)、親類縁者等を集め秋水墓前供養(中村正福寺)を堂々と行った。
のちに秋水研究者となる東大生塩田庄兵衛はこれに参加。歓迎を受け、にぎやかな宴会であったと書き残している。
墓前供養は、五〇年からは「秋水墓前祭」として幡多地区全労働組合協議会(全労協)主催に、さらに中村地区労へと、労働組合の主要な年中行事と位置づけられた。
2.前史二 再審請求支援運動
大逆事件では二十四名死刑判決、うち十二名は無期懲役に。その一人、室戸生まれの坂本清馬は入獄二十四年間を経て、師秋水を慕って中村に戦中移り住んでいた。
六〇年墓前祭は「幸徳秋水五十年記念祭」として、森山正中村市長(初代)を会長、坂本清馬を事務局長とする実行委員会を組織して行われた。記念講演会はタカクラテル、岩佐作太郎、神崎清、塩田庄兵衛。会場の中央劇場は人であふれた。
無実を叫び続けてきた清馬はこの年、唯一人の事件生き残りとして、岡山の森近運平妹栄子とともに、再審請求に立ち上がる。
日米安保条約改定反対運動のうねりの中、東京では裁判を支援する組織「大逆事件の真実をあきらかにする会」が結成され、弁護士のほか多くの文化人(高知県出身田宮虎彦、田岡典夫、上林暁も)、社会運動家などが集まった。会長はおかず、実質的な代表の事務局長には参議院議員坂本昭(のち高知市長)が就いた。
再審請求は六五年、証拠不十分として東京高裁が棄却、最高裁への特別抗告も退けられたが、事件の風化を防ぎ、真相が広く知られ、いまなお解明が深められている引き金になったことの意義は大きかった。
「あきらかにする会」はいまも存続、毎年機関誌も発行(最新五十七号)。現事務局長(四代目)山泉進明治大学教授は中村出身で当顕彰会とは常に連携している。
七一年、刑死六十年墓前祭。秋水遺墨遺品展示。記念講演、大河内一男、神近市子。
七五年、坂本清馬没(九十二歳)
八一年、刑死七十年墓前祭。記念講演、塩田庄兵衛、大原慧。
八二年、幸徳家先祖墓(享保年間以前)を大阪市竹林寺から移転。
八三年、秋水絶筆石碑建立。
九一年、刑死八十年墓前祭。記念講演、山泉進、伊藤和則。
高知市立自由民権記念館が九〇年開館後は、同友の会からの墓前祭への参加・交流が続いている。
3.前史三 幸徳秋水研究会
九六年二月、それまでの労働組合による年一回墓前祭中心の取り組みから、日常的な学習により秋水の正しい理解者を増やしていこうと幸徳秋水研究会を立ち上げた。最初二カ月ごと、現在は毎月、いろんなテーマで勉強会を続けている。
九七年、秋水妻師岡千代子が書いた「風々雨々」復刻版を出版(序文瀬戸内寂聴、改題山泉進)。九八年、初期社会主義研究会メンバー十六名を迎え合同勉強会。同年から機関誌「会報秋水」発行。
また、市に対して、毎年夏開かれる市民大学では秋水関連テーマを優先して設定するように申し入れ、以後多数の講演が実現している。
4.幸徳秋水を顕彰する会結成
二〇〇〇年三月、研究会を、さらに多くの市民が参加しやすい組織に拡大しようと幸徳秋水を顕彰する会を結成(初代会長森岡邦廣、同事務局長北澤保)。以後、研究会は顕彰会内の一部門として位置付けた。新たに機関誌「秋水通信」を発行、今にいたっている(十六年より「会報秋水」と合併し年二回発行、最新二十三号)。
顕彰会は結成直後から、市内二十六団体(区長会、婦人会、老人クラブ、商工会議所など)に呼びかけ中村市議会に要望。議会はこれを受け二十世紀最後にあたる同年十二月、全会一致で「幸徳秋水を顕彰する決議」を採択した。
決議は翌年、和歌山県新宮市議会に、さらに本宮町議会にも波及し、全国運動のエポックとなった。
〇一年、刑死九十年墓前祭。座談会、山泉進、日南田静真。瀬戸内寂聴講演(三月)、「人間秋水とゆかりの人々展示」(十一〜十二月)
〇三年、映画「住井すゑ百歳の人間宣言」上映、平民社百年記念講演会中村大会。
〇四年、会ホームページ開設。
〇五年、高知県知事(橋本大二郎)から「あったか観光マインド優秀団体賞」受ける。
〇七年、会員執筆「現代に生きる幸徳秋水」(秋水読本)出版。
5.次の百年へ
中村市は〇五年合併で四万十市に。〇九年落成新図書館(庁舎内)に顕彰会の要望通り「秋水資料室」が設けられた。
秋水刑死百年の一一年、市は一年間を通した「幸徳秋水刑死百周年記念事業」を行うことを決定。市長(田中全、現顕彰会事務局長)を会長とする実行委員会(事務局は教育委員会)を立ち上げ、議会にも諮り一千万円の予算をつけた。
先ず、市民啓発のため市広報誌と市ホームページに「秋水百年」コーナーを設け、毎月関係記事を連載したほか、小冊子「自由・平等・博愛 幸徳秋水その生涯」(十四ページ)を八千部作成、市内中学生にも配布。墓地看板などもリニューアルした。
イベントは、墓前祭記念講演会(山泉進、幸徳正夫)、北辰旅団演劇「大逆百年ノ孤独」のほか、シンポジウム(五月、早野透、田中伸尚、鍋島高明、山泉進)、市民大学(八月、鎌田慧)、特別展示、大逆事件サミット(九月)、秋水平和音楽祭(十二月、笠木透と雑花塾参加)。
サミットは大逆事件犠牲者顕彰に取り組んでいる全国八団体が初めて一堂に会し、「人権弾圧のない世界を求めて」とする「中村宣言」を採択した。
以後、第二回豊津(福岡県)、第三回大阪、第四回新宮(予定)と続いている。
十二年には、市長がはじめて新宮を訪問、熊野地方の犠牲者六人の墓を弔った。大逆事件記録映画「百年の谺」も全国に先行上映。
また、秋水以外の県内犠牲者四人も忘れてはならないとの提起から、坂本清馬没四十年の一五年は、初めて秋水・清馬合同墓前祭とし、同じ正福寺の清馬墓にも案内板を設置。合同祭は今後五年毎。
十六年、高知市内にある小松丑治、岡林寅松墓にも自由民権友の会と共同で墓標を設置。(もう一人の奥宮健之墓は東京)
同年、市民向けに秋水史跡めぐりを実施、十七年には幕末維新博に合わせ秋水につながる中村の先人たちを加えた。
この間、秋水最初の妻西村ルイが生んだ、秋水の血を受け継いでいる孫、ひ孫も初めて墓参に迎え、大きな話題となった。
高齢化等によりしばらく会員数は漸減傾向にあったが、最近の活動の広がりの中で、県外を中心に増加に転じ、現在二百四十一名(うち県外八十六名)。現会長宮本博行(四代目)。
かつて坂本清馬は「秋水祭の行事は革命運動である」と言ったように、戦後幡多、中村の平和民主運動の結集軸となり、いくたびも革新市政を生み出してきたバックボーンになったのが秋水顕彰運動であった。中村地区労は今も同じ組織形態を維持し、統一メーデーをおこなっている。
戦前回帰の風潮濃い昨今、顕彰会は安保法案、共謀罪に反対するアピールを発した。
顕彰会は秋水が唱えた、自由・平等・博愛・平和の旗を、これからも高く掲げ続けていく。(終)
「土佐史談」267号 2018年3月
原題 「グループ紹介 幸徳秋水を顕彰する会」
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