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戦場で死傷する兵隊の生々しい描写<しんぶん赤旗連載小説>「遠き旅路」 

2018年02月21日 外部ブログ記事
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昨日は、戦傷病者史料館「しょうけい館」春の企画展「目となり 手となり 足となり」をアップしました。
しんぶん赤旗連載の小説能島龍三作・挿絵 ヤスコ「遠き旅路」は、戦場で目を、足を負傷する生々しい情景が描写されています。
20日分だけ転載します。
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遠き旅路

能島 龍三
え  ヤスコ

第五章 生と死の間に(4)ー49ー

 そういう敵兵の死体の幾つかは、装甲車にひかれて
無残につぶれている。見れば戦車と同じような履帯を
もつ装甲車が、何両か城内に入って来ている。
 血生臭いにおいと、死体が焼かれるにおい、それに
排泄物のにおいが辺りに漂っている。包帯所、とはい
っても破壊された民家の上に天幕を掛けただけの場所
だが、中では白い前掛けを血まみれにした軍医や衛生
兵が、負傷兵の手当をしていた。
 そこに入りきらない負傷兵は、外の道端にアンベラ
を敷いて寝かされていた。誠三郎は、小笠原を衛生兵
に託して来た女川と一緒に、生き残りの分隊員を探し
始めた。すると、包帯所の周りの通路の一角に、誠三
郎の分隊の兵四人が座っているのが見えた。
 四人のうちの一人は山崎という二年兵で、砲撃で両
目をやられており、顔の上部に分厚く包帯を巻いてい
た。聞いてみれば、やられたのはやはり、誠三郎が吹
き飛ばされたのと同じ時だったらしい。あの一発の砲
弾の炸裂が、誠三郎の分隊に致命的損害を与えたもの
のようだった。
 山崎は割と元気に話ができたが、視力が戻るかどう
かをしきりと心配していた。誠三郎は故郷の隻眼の兄
のことを思い出した。兄は、片目が見えないというだ
けで、どれほど辛い思いをし、苦労したことか。山崎
のこれからを思うと胸がふさいだ。
 負傷兵のもう一人は宮本という初年兵だった。左手
の肘から先がなくなっており、傷口は血止めのひもで
固く縛ってあった。声を掛けても目をつぶったままだ
った。宮本は誠三郎と同じ百姓の三男坊だったはず
だ。左手がないと畑の畝が立てられない。誠三郎はそ
んなことを思いながら、黙って宮本の肩に手を置いた。
 三人目は坂口という榴弾砲を扱う二年兵で、太股に
砲弾の破片を受けていたが、もう血も止まっていた。
誠三郎たちと一緒に駐屯地に戻るということだった。
 最後の一人が古参の高坂上等兵だった。右肩から脇
の下に、血が固まってどす黒くなった巻脚絆らしき布
を巻いている。初年兵時代、誠三郎は高坂に軍隊生活
の基礎を厳しくたたき込まれた。後に若い誠三郎が分
隊長になると、表だっては何もしないが、大事な時に
陰で重要な指示をくれた。その高坂の重傷を負った姿
は、誠三郎の胸に分隊の今後への不安をかき立てた。
「高坂さんがしばらくでもいなくなるのは、分隊には
ものすごく痛いですよ」
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