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八十代万歳!(旧七十代万歳)
「山んばの にしき」
2015年09月27日
テーマ:テーマ無し
「山んばのにしき」
昔あるところに、ちょうふく山という高い山があった。
夏のカラッと晴れた日でさえも、てっぺんには厚い雲がかぶさっていて、晴れるということがない。おっそろしい山んばが住んでいるというはなしであった。
ある年の秋のことだ。ちょうど十五夜だったので、麓の村ではみんなお月見をしておった。
ところが、空がにわかにかき曇り、風は吹き出す、雨は降りだす、終いには雹までもが音を立てて落ちてきたものだから、みんな家の中に逃げ込み、子供らはおっかさんにしがみついておった。
すると、家々の屋根を、どろどろと踏み鳴らしながら、叫ぶ声がした。
「ちょうふくやまの山んばが、子ども産んだで、餅ついてもってこーい。持って来ねば、人、馬、ともに食い殺すど〜!」誰とも知れぬその暴れ者は、家々の屋根から屋根へ飛び移りながら、叫び続けていたが、やがてその声も聞こえなくなると、空は又カラッと晴れて、元の美しい月夜に戻った。
次の朝、村人たちは早くから戸を開けて、夕べのことを話し合った。
「おっかねかったなぁ〜」
「あの暴れもんは誰だべ?」
「餅持って来ねば、人も馬も食い殺すといっとったなぁ。どうするべ?」
どうするべって言ったって、殺されちゃあかなわない。餅持って行くしかない。
そこで、一軒いくらと米持ち寄って、ぺったらこペったらこともちついた。
それを二つのはんぎりに入れたんだが、さて、これを持って山姥のところへとどけにいくものがおらん。何しろそんな恐ろしい山に登ったことのあるものなんか一人もいないからだ。
みんなが困っていると、誰かが、
「だだ八とねぎそべの二人に行かせべえ。あいつらいつも怖いものは無いって威張ってるもの」と言った。すると村中のもんが「そうだそうだ、だだ八とねぎそべに行かせべえ。こんな時こそ村の役に立ってもらうべえ」とたちまち話がまとまってしまった。
だだはちとねぎそべというこの妙な名前の二人の若者は、村一番の暴れ者で、いつも威張っていたためにえらい事になったと思ったものの、断る事もできない。
「だどもおら、道知らねえし・・・」
「んだ、道案内居ねばなあ」 と言うもんで、今度は誰が道案内に立つかで話し合った。
けれども、道を知っている者がいるわけも無い。
すると、みんなから「あかざばんば」と呼ばれている、えらく年取った婆さまが、
「だば、おらが案内すべぇ。なあに、行こうと思やあ、道なんざなんぼでもあるもんだ」と言った。
そこであかざばんばを先頭にだだ八とねぎそべが、もちを担いでちょうふく山へ向かった。
しばらーく歩いて行くと、みんなの家が豆粒のように見えて、どんどん心細くなってきた。そこへ生臭いような変な風がごお〜っと吹いてきた。だだ八もねぎそべも、
「おらもう!」
「ダメだ〜っ」とあかざばんばにしがみついた。ばんばは、
「なんのなんの、なんとも無いと思やあ なんともないもんだ。さあさあ、行くべいくべ」と力ぁ付けて、又登りだした。
またしばらく行くと、今度はさっきの何倍ものつよいかぜが、ごうごうと吹いてきた。
からだのちいちゃなあかざばんばは、吹っ飛ばされちゃあかなわんと、木の根っこにしがみついておった。
風をやり過ごして、ふりむくと、だだ八も、ねぎそべも、姿が無い。餅の入ったはんぎりが二つ重ねてじゃんと置いてあるだけだった。
あかざばんばはがっかりして、へたへたと座り込んだ。
「どうすべぇ。おらまでここから逃げて帰っちまったんでは、村の衆が食い殺されちまうかもしれねぇ。それじゃあ申し訳がたたねぇ。 んだ!おら一人が食われりゃぁ済むこんだ」と腹をくくると又登りだした。
けど、年寄りの足だ、ちーっと登っては休み、ちーっと登っては休みして、てっぺんが見えてきた時にはもう、日暮れも迫っておった。
てっぺんの少し下に、戸口にむしろを下げた小屋があって、その前で大きな赤ん坊が、自分の頭ほどもある石で遊んでいた。
あかざばんばはあれが山んばの家だなと思ったので声をかけた。
「ごめんくだせぇ、麓の村から 餅持ってきたっす」
すると、むしろをかき上げて、山んばが顔をだした。
「おうおう、ようきたようきた。 いや、ゆんべな、この子を産んで、急に餅が食いたくなったもんで、この子をつかいにだしたんだが、村の衆に迷惑かけなかったかと、気にしてたとこだ」
これには、あかざばんばが呆れかえっちまった。
「ひえ!ゆんべ、使いに来たのはこの子なんで?」
「山んばの子だもん、生まれりゃあすぐ飛び歩く。・・・んで、餅はどうした?」
「へえ、その餅だが・・・あんまり重てえんで 途中さ置いてきた」
「ほうかほうか、がら、がらお前行って取ってこう」
赤ん坊の名前は「がら」と言うらしい。がらは立ち上がると、ものすごい勢いで走って行ったが、すぐに半切り二つ抱えて帰ってきた。
「おう、戻ったか、こんだぁ熊獲ってこう。熊の澄まし汁こさえて、ばんばにもやるだ」
がらは又走って行ったが、じきに熊ぶら下げて戻ってきた。
さあそれからはガンガン火を焚いて、熊の澄まし汁作って餅をどっさり入れた。
あかざばんばもどっさり食べた。
「えらいご馳走になったことぉ、そんではおらこれで帰らしてもらいますけえ」と言うと、
「まあ、そんなに急ぐこたぁあるめぇ、ここにゃあ手伝いもいねえことだし、二十一日ほど手伝っていってくれやぁ」と言われて、おかざばんばは仕方なくあきらめた。
それからというもの、水を汲んだり、山んばの足を揉んだりして、今日は喰われるか、明日は喰われるかと、ビクビクしながら、二十一日が過ぎた。そこで恐る恐る
「あのぉ、家のもんが心配してるで、帰りたいども」と言った。
「おうおう、世話になったな。家の都合もあろうから帰ってくれ」と言って奥から反物を出してきた。
「礼にするものもなにもねえが、錦を一反やるべ。これはな、山んばの錦で、どんなに使っても、少し残しておけば、次の日にゃあまた一反に戻っている不思議な錦なんだ。村の衆にゃあ何もねえが、この先風邪一つ引かねえように、楽に暮らせるように、こっちから、気い付けておくで。がら、がら、ばんば負ぶって送ってってやれ」あかざばんばは慌てて、
「負ぶさるなんてとんでもねえ。歩いてかえりますけえ」といったが、
がらはひょいとばんばを背中に乗せて、
「目つぶってれ!」と言った。
耳のはたを風邪がびゅうびゅう吹き抜けるとおもったが、ひょいと降ろされたところはもうあかざばんばの家の前であった。
がら、がら、上がって休んで行けや」と声をかけたが、がらはもう辺りには居なかった。
ばんばが家に入ろうとすると、大勢の声で「なんまいだ〜なんまいだ〜と、お経を読む声がした。葬式をしているらしい。あかざばんばはびっくりして、
「誰か死んだのかやぇ!」と飛び込んで行った。集まっていた村の衆は、
「ひえ! 幽霊だ幽霊が葬式に戻ってきた。とひっくり返るやら、目を回すやら、えらい騒ぎになった。
「幽霊なものか。あかざばんばがいまもどったぞ」
「ほんにあかざばんば生きて居たんだかぁ」村人たちは涙を流して喜んだ。
「さあさあ、山んばの錦を分けてやるけえ」と、あかざばんばは錦を切っては分け切っては分けて、自分の手元には少ししか残さなかった。それでも次の日には元の一反に戻っていた。
村人たちは、もらった錦を袋に縫ったり、ちゃんちゃんこにしたりして、家宝にした。
それからというもの、誰一人風邪もひかず、安楽に暮らしたということだ。
何年たっても、いつでもすぐ語れるお話が幾つかあります。秋になると語りたくなるのがこのお話です。とにかく好きなお話なのです。
今度のカメラは凄いです。
同じタイプの前のカメラは、オートのまま月を撮ると、暗い街が昼のようになり、月は太陽に見えてしまうので、いちいち露出を変えなければなりませんでしたが、新しいのは、何もしないで月が撮れました。とっても嬉しいです。
明日は月の出を忘れずに撮りたいです。
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