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民話 貧乏の神 

2014年09月21日 外部ブログ記事
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? 貧乏の神 かたれやまんば第三集 より再話

昔あるところに、たいそう律儀で働きもんの男がいた。
夜明け前から夜更けまで、せっせせっせと稼いで、休むと言うことを知らんような男であったが、どうしたわけか、暮らし向きは一向に良くならないのだった。

そんな男にも世話する人があって、山陰の村から嫁を貰った。
それからは夫婦仲良くせっせと稼いだ。嫁さんは、野良仕事の合間には、家の中をピカピカに磨き上げた。
それでも、カラスや、ウサギや、猪に田畑を荒らされて、楽で無い暮らしであった。
ある年の暮れ「今年ももの実はあまりとれなかったが、二人が達者で稼げることが何より有難いね」と話し合いながら、煤掃きをしておった。

神棚に手を掛けた時、奥の暗がりで何やら妙なものがもそらもそら動くのが見えた。「なんだべ?」と思って思わずはたき落としてしまったところが、囲炉裏のはたに
落とされた、ネズミの干物みてえなものは「いててて」っと腰さすっている。
「おめえ誰だ?」と訊くと、
「おらあか、おらは貧乏の神よ」と言う。
「貧乏の神?おめえ様神様がん?、神様が何してたんだ?」
「この家は居心地悪くなったで、家移りしようと思ってな、出て来たところをおめえにみっかっちまった」
「家移り?おめえ様引っ越しなさるのがん、それはまたなして?」
「話せば長いことながらな。
おらぁがこの家に住み着いたなあ、昨日や今日のこっちゃねえんだ。
先代の、おめえのとっつあまの代からよ。
あの頃は良かったぁ〜 おめえのとっつあまときたら、とびっきりの怠けもんで、おてんとうさまが高く昇ってから起き出してきて、あっちが痛えの、こっちが痒いのと、なーんも働かねえ。朝っぱらから酒かっくらって、夕方はまだ日の落ちねえ頃から、わりい仲間集めて一晩中博打だ。
家のもんがちょっとでも意見しようもんなら、殴る蹴るだもんな。使用人は皆逃げちまうし、作男だっていつきゃあしねえ。
だあれもいなくなった家ん中は、蜘蛛の巣だらけだったいな。
いっぺえ借金こしらえて、日向の田んぼや畑からどんどん人手に渡っちまった。
とっつあまがぽっくり逝った時、おめえに残されたのは、あの草ぼうぼうの山の畑と、日陰の田んぼだけだったいな。だからおらは心配しなかった。あのとっつあまの息子だもん、こげな田畑でやってゆける訳がねえ。そのうちに、家も田畑も捨てて、乞食になるか、首くくるかだな〜と見ていた。ところがいつまで経っても首くくらねえ。そのうち嫁まで来た。この嫁がまた困ったもんで、一日中じっとしていることがねえ。野良仕事の合間には家ん中磨きあげる。ぼろがつぐねて有った納戸なんざぁ、綺麗さっぱり片付けちまって、おらの昼寝するとこが無くなっちまった。
仕方がねえから久しぶりに山の畑に行って見て、たまげたぁ〜
草ぼうぼうだった畑が、綺麗に耕されて、タネまで蒔いてある。おらぁ慌てて、カラス呼ばって来て掘っくらせたが、すぐに撒き直して芽が出た。こんだうさぎっこ呼ばって来て齧らせたが、それでも葉が茂ったので、芋虫集めてこにゃなんねえ。そのうち大根や芋が出来たから、猪ぶくりださにゃあなんねえ。もう忙しいのなんの、とっても追いつかなくて、とうとうこんなに痩せちまった。これじゃあ身が持たねえから、家移りしようと思ってな、そう言うわけだ。それじゃあおらはこれで」っとよろよろしながら、戸口の方へ行きかけた。男は、思わず、
「もうし、まってくんちぇえ、」と、呼び止めちまってから、嫁の顔を見て聞いた。
「なあおめえ、何とする?」すると嫁は、
「気の毒な話よなあ。世の中にゃあ八百万の神様おらって、人に仇ぁなす疫病神さんだって、荒神さんだって、年に一度や二度は、赤まま炊いて祀ってもらえるてえのに、貧乏の神さん祀ったって話おら聞いたことねえぞ。どうせどこへ行ったって嫌われるんであれば、このまま居て貰ったらどうだべ? なあに、せやみとっつあま一人抱えてるとおもやあ、大したことなかっぺ」と言った。
そこで男も「そうよなあ、とっつあまの代から居たとなりゃあ、まんざら他人の気もしねえし、貧乏の神さん、そう言うわけだ、このまま居てくだせえ。おめえ様が兎だ猪だ、ぶくりだしたけりゃあ、ぶくりだしゃあええ。おらたちはおらたちで稼ぐから」と言って、その、ネズミの干物みてえな神さんを両手ですくい上げて、神棚にお上げ申した。それからと言うもの夫婦は、引き止めちまった手前、自分たちの食いもんを少しずつわけて、
「今日は粟のおかゆだ」
「今日は稗飯だ」
「今日は芋の煮っころがしっきりねえけんど」と、粗末な飯ではあったが、毎日お供えした。

それからも、兎や猪に荒らされて楽でなかったが、1年2年と経つうちに様子が変わって来た。
タネ蒔いてもカラスは来ねえ。葉が茂っても、芋虫は一匹もいねえ。芋が出来ても猪は見向きもしねえ。
その年は村じゅうが不作だったが、男の田畑だけは、大豊作だった。
「こげにとれたもんみんな家に運んだでは、おらたち寝るとこ無くなっちまう。こりゃあ、村のみんなに食べてもらわにゃあなんねえな」となって、なんでも採れるたびに、
「今年はおら家では採れ過ぎて食いきれねえ。すまねえが、わらし子だちにでも食わせてくなんしょ」と、村じゅうに配って歩いた。

次の年は村じゅうが豊作だった。
村人たちは去年貰ったものを2倍3倍にして返しに来た。
「去年は困ってる時に助けて貰って有難かった〜、おかげで父っつあまの病気も治ったし、わらしだちは、腹いっぺえ食えたもんで、家の手伝いするようになって、今年はおらえも豊作だ。これは去年のお礼だ」みんながどっさり持って来るので、夫婦は寝るとこも無くなって、蔵建てねば、と話していると、村一番の年寄りがやって来て、
「おめえだち、こげなボロ家に住んで、蔵だけ建ててもしょうがあんめえ。村のみんなが手伝うとゆうてるから、蔵も家も建てたらどうだ」と言う話になった。
村じゅうの人は手分けして、山で木を伐るもの、それを運び出すもの、家を組み立てるもの。力の無い年寄は、土壁の芯にする、コマイを編んだり縄をなったり、村じゅうの力で、家も蔵も立派に建った。

今日は家移りと言う日、男は神棚に向かって言った。
「おら家の守り神の貧乏の神さん。おかげさんで、家も蔵も建ち申した。今日は家移りだ。ついてはおめえ様に一番に家移りしてもらいてえんで、どうぞ出て来てくなんしょ」すると神棚からでっぷり太った福の神さん見てえのが出て来た。
「違う違う違う、おめえ様呼ばったんで無いぞい。うちの守り神さんは、ネズミの干物みてえな貧乏の神さんよ。貧乏の神さん出て来てくなんしょ」すると太った神さんは顔を赤らめて、
「いや〜おめえ方が見間違うのも無理はねえ。おらは、この前までその、ネズミの干物みてえだった貧乏の神よ。いやあれからもな、兎や猪に邪魔させて居たんだが、到底おっつけなくて、諦めた。すると、カラスや兎や猪に「ここは人の畑だ、あっちさ行け」って追っ払うようになっていた。それに、おめえだちが毎日食い物を供えてくれるもんで、こおだに太っちまったんだ。家も蔵も建って目出てえめでてえ、それではこの先も世話になることにするべ」と言ってすたすたと戸口を出て、新しい家の戸口で振り向くとニコッと笑って中へ消えた。

それっきり姿を見せることは無かったが、その家は、代々豊かに暮らしているんだと。おしまい。

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