あなたの好きな時代劇スターは!?色褪せないスターを作品とともにご紹介
掲載日:2021年11月25日

あなたの好きな時代劇スターは!?色褪せないスターを作品とともにご紹介

時代劇がお好きな方は大きく3つのタイプがあるような気がします。1にお気に入りの時代劇スターがいる。2に殺陣が好き。3に歴史ものが好き!今回は皆さんと1についてのお話をしたいと思います。

「お気に入りの時代劇スターから観る」と言った場合、皆さんどなたの顔が浮かびますか?
きっとご贔屓は譲れないと思います。また別の機会に皆さんのご贔屓はぜひうかがいたいと思いますが、今回は独断でこの3人を!

美しくも儚い美剣士市川雷蔵さん

ときにニヒルな美剣士、ときに薄命な若者、ときに人情にあついやくざな男、ときに軽薄なぼんぼんと、美しくも幅広い役どころを演じた市川雷蔵。その所作や立ち姿、容貌の美しさは多くの女性を魅了しました。亡くなったのは人気絶頂であった37歳。雷蔵さんの死を受け入れられなかったファンは、没後5年目にファンクラブ朗雷会(市川雷蔵を偲ぶ会)を結成。その会員数は海外の方を含め、500人を超えたそう。凄まじい人気です。

その顔はデビュー作の『花の白虎隊』(1954)から美しいと評判を呼び、『眠狂四郎』、『濡れ髪』、『忍びの者』シリーズの頃は有無を言わさぬ人気を誇っていました。薄命な青年を清冽に演じた『薄桜記』(1959)、『斬る』(1962)、『剣』(1964)では凄まじい色気を見せ、「知らざあ言って聞かせやしょう」の『弁天小僧』(1958)では女装姿も披露。

『ぼんち』(1960)、『破壊』(1962)でも仕事をした市川崑監督との『炎上』(1958)、増村保造監督『花岡青洲の妻』(1967)では主演男優賞を受賞しており、美しさと演技力の両方を備えていたわけです。

実は雷蔵さん、コメディも得意!悪事を働く偽の清水次郎長一家と対決する『てんやわんや次郎長道中』(1963)では、困り顔やずっこけしぐさも観ることができます。
 

■衛星劇場 映画『てんやわんや次郎長道中』詳細ページ

美しくも儚い美剣士市川雷蔵さん

演技力で圧倒するのもスカッとさせてくれるのも中村錦之助さん

市川雷蔵さんは、生まれてすぐ関西の歌舞伎俳優、市川九団次の養子となり、15歳で初舞台を踏んでいます。当時、歌舞伎の世界から映画俳優になる方も多く、中村錦之助さんもそんな一人です。

そんな中村錦之助さんは、歌舞伎俳優時代に市川雷蔵さんと同じ舞台を踏んだ親友同士。雷蔵さんが映画俳優になった同じ年に、美空ひばりさんの相手役として『ひよどり草子』(1954)で映画デビューします。

これが少年を中心に評判を呼び、『笛吹童子』、『里見八犬伝』、『新諸国物語 紅孔雀』などのシリーズに主演。東映所属のトップ・スターへと駆け上がります。続く『一心太助』シリーズも大ヒット。錦之助さんの胸をすく活躍は少年少女の心を躍らせました。

1961年にスタートした『宮本武蔵』の5部作も錦之助さんの代表作のひとつ。同年は伊藤大輔監督『反逆児』(1961)で演じた、父である家康に切腹を命じられる悲運の子、信康役でも絶賛されました。

1963年の今井正監督『武士道残酷物語』で戦国時代から近代に至るまでの飯倉家7代の無残な歴史を1人7役で演じ、ブルーリボン賞主演男優賞を受賞しました。もちろんその後も『柳生一族の陰謀』(1978)、『赤穂城断絶』(1978)、『徳川一族の崩壊』(1980)と大作時代劇に主演しています。

それぞれ好きな作品があると思いますが、私はどれかひとつと問われたら、粋でいなせな『一心太助』シリーズを挙げると思います。錦之助さんにはスカッとさせてもらいたい気分があるのでしょうね。

美しき正義漢!大川橋蔵さん

1931年生まれの市川雷蔵さん、32年生まれの中村錦之助さんより少し早い29年生まれの大川橋蔵さん。生後間もなく歌舞伎俳優の家の養子となり、初舞台を踏むところまでは雷蔵さんと同じような人生を辿ります。異なるのは、橋蔵さんは26歳まで歌舞伎俳優を続けたこと。そのため、デビューした当初は、映画の演技になれない時期もあったのだそうです。

でも翌年には『若さま侍捕物帖』シリーズ、続いて『新吾十番勝負』シリーズをヒットさせ、将軍の落とし胤である美剣士、葵新吾は早くも当たり役となりました。

最後の『新吾番外勝負』(1964)が公開された翌年、テレビドラマデビューを果たした橋蔵さんは、一番の当たり役を手にします。そう、「銭形平次」シリーズです。「銭形平次」は、1966年にスタートして18年間続く長寿番組となりました。

投げ銭に十手で、悪事とあっては侍ともわたりあう正義感の持ち主。舟木一夫の歌うオープニングタイトルとともに絶大な人気を誇りました。

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現代に近づくにつれ、勧善懲悪、スカッと留飲を下げる作品は少なく、リアリティを追求した時代劇が増えていきます。もちろんリアリティを追求した作品の中にも素晴らしい作品がたくさんあるわけですが、スターで観るとしたら、私は彼ら3人が活躍された50年代半ばから60年代半ばが掛け値なしに時代劇の“面白かった”時代だと感じるのです。

皆さんはいかがですか? 好きな時代劇スターの話、しませんか?

関口裕子 プロフィール

「キネマ旬報」、エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長を経て、フリーランスに。執筆、編集、コンサルタントとして活動中。趣味は、歴史散歩。

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